関節1つの交換で70万円!中国で人型ロボット普及の陰に「修理難民」問題
中国ではいま、人型ロボット(ヒューマノイド)がショールーム展示やイベントパフォーマンスの段階を越え、家庭や実用シーンへと急速に広がり始めている。一方で普及の陰で、「買った後に維持できるのか」という現実的な課題も浮かび上がってきた。
約20万元(約460万円)で人型ロボットを購入したZさんは、このたび製品の修理代として3万元(約70万円)を請求され、その高さに驚いたという。内訳は部品代が2万8000元(約64万円)、作業費と調整料が2000元(約5万円)だった。
ロボットは敷居につまずいて転倒して以来、歩行時に不安定な揺れが生じるようになった。修理に出したところ、股関節のハーモニックドライブに肉眼では確認できない微小な歪みが見つかり、関節モジュールを丸ごと交換する必要があった。特に負担が大きかったのは部品代ではなく、その後に必要となる精度補正とアルゴリズム調整で、復旧までに約7日も要した。
3万元あれば国では小型電気自動車(EV)のエントリーモデルを購入できるが、ロボットの世界では関節ひとつしか交換できない。
高額な修理代が普及の壁に
人型ロボットの維持・修理のコストが極めて高く、修理できる技術者もごくわずかしかいないのだ。市場に出回っているロボットの保証期間は多くが1年程度。保証の対象外だったり、期間を過ぎたりすると費用はさらに高くなる。
ロボット外装やバッテリーセルなど基本部品の交換であっても、作業費が1時間当たり200元~500元(約4600円~1万2000円)程度上乗せされ、支払いはともすれば合計で1万元(約20万円)近くになることも珍しくない。
膝関節や足裏は特に摩耗が早く、バッテリー寿命も一般的に約2年とされる。下肢モジュールを丸ごと交換する場合は数万~数十万元(数十万~数百万円)に達する可能性があり、バッテリー交換でも約4000元(約9万円)が必要になる。ロボットハンドを1つ交換するだけでも1万~8万元(約20万~280万円)に及ぶ。しかも、こうした大がかりな修理には通常1、2カ月を要する。

中国の代表的ロボットメーカー・宇樹科技(Unitree Robotics)のロボットを購入したある消費者の場合、ロボットが転倒して頭部が変形、ブラケットの交換だけで1800元(約4万円)かかったうえ、修理まで1週間待たされたという。
業界関係者によると、修理費が購入価格の6割を超える場合、個人ユーザーの約7割が修理を断念する。さらに重要なチップの破損や生産終了モデルでは部品供給ができず、そのまま廃棄されるケースも少なくない。
「買えるが維持できない」という現実
人型ロボットはスマートフォンなどと異なり、物理的な摩耗が避けられない機械製品だ。消費者向けモデルの場合、年間維持費は一般的に本体価格の10~30%に達するとされる。単純計算では3年間の維持費で新しいロボットをもう1台購入できる水準になる。
高機能の商用ロボットは1台60万元(約1400万円)程度で購入できるが、使用頻度の高いロボットハンドを毎年交換すれば10万~20万元(約230万~460万円)かかる。
高価な足を保護するため、布製の靴をはかせて摩耗を防ごうとするユーザーも多い。主流の人型ロボットは寿命が3年から5年とされ、通常の使用状況ならロボットの一生で3回から8回のメンテナンスが必要だ。商用として使用頻度や負荷が高い場合、メンテナンスの頻度は倍になる。
不足する「ロボット専門医」
現在、人型ロボットのメンテナンス体制には大きな課題が残されている。修理センターの整備が進んでおらず、技術標準も未成熟で、部品供給を含むサプライチェーンも十分に開かれていない。
一方で、ロボットのメンテナンス市場に参入するハードルは極めて高い。機械の分解・組立から精密な校正、アルゴリズム調整に至るまで、広範なスキルが求められる。家電の修理とは全く異なる、複合型の高度な技術分野だ。
また、人型ロボットは産業用ロボットとは異なり、メーカー独自のアーキテクチャを採用していることが多い。部品や調整用ツール、技術マニュアルなどは外部に公開されておらず、第三者の介入は極めて難しい。
さらに、ロボットメンテナンス技術者の多くがドローンや産業用ロボット分野から転身してきた人材だ。費用が約3万元(約70万円)、期間1カ月の養成コースなどもあるが、爆発的に拡大する需要にはとても追いつかない。
「ロボット修理店」が街角に並ぶ日は来るのか
テクノロジー思想家のケヴィン・ケリー氏は、ロボット産業の次の成長領域としてアフターマーケットの拡大を指摘している。
現在の中国では、一部の大手メーカーが都市部限定で出張修理サービスを提供しているにとどまり、多くのロボットは依然として工場送りの対応が中心だ。しかし普及が進めば、自動車産業と同様に地域密着型の修理ネットワークが形成される可能性がある。
かつて中国では、自動車の普及とともにディーラーや整備拠点が全国へ急速に広がった。人型ロボットも同じ道をたどるなら、「ロボットは買うもの」から「維持しながら使い続けるインフラ機器」へと位置付けが変わる。そのとき初めて、人型ロボットは本当の意味で日常社会の一部になるのかもしれない。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)