自然環境データを見える化 遠隔監視システムで自然の経済的機能を回復

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自然環境データを見える化 遠隔監視システムで自然の経済的機能を回復

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環境修復とは大自然の自己修復力を利用し、適切な人工的措置を補助的に用いて、生態系が本来持っている環境機能と開発利用などの経済的機能を回復させることを指す。中国では環境修復市場の規模は2017年に2993億元(約4兆8000億円)にまで拡大、2018年には3500億元(約5兆6000億円)になったとみられている。

ただし業界には課題も存在する。第一に、プロジェクトの建設と運営という全体的なプロセスの改善。同一の組織がさまざまな環境事業を別々に行っており、運営のことを考慮していない。第二に、データのモニタリングと可視化の必要性。取り組みの成果は主に機関による単発的な評価の中で示され、データ同士が孤立している。第三に、全面調査にかかる時間の短縮。人手による現地でのサンプル採取と検査という従来の調査方法は1~2年もの時間を要する。

こうした問題を商機と捉え、「億利生態大数据(Elion Ecological big data)」は2017年に設立された。環境関連のデータサービス企業として、IoT(モノのインターネット)やビッグデータ、人工知能(AI)などの高度技術を用い、環境整備に関するポリシー策定コンサルティング、IoTによる管理、AIによる意思決定支援などを展開する。

同社は環境に特化した監視プラットフォーム「億利生態天眼」を世界で初めて立ち上げた。「山、水、林、湖、田畑、草地、砂漠、観光」といった環境に関する全領域をカバーし、顧客の要望に応じて「リアルタイムモニタリング、環境分析、予測・警報、意思決定支援、緊急対応時の指揮、観光に関する指導」など多岐にわたるソリューションを提供。環境整備の際に行われる全面調査の所要時間を1回につき1~2年から3~6カ月に短縮している。

IoT+クラウドコンピューティング+ビッグデータ+地理情報システム+AI+「空天地」一体化監視システム

具体的に言うと、億利生態大数据はネットワークに接続されたセンサーから送られる土壌、大気、水など自然環境の構成要素のデータをベースに、衛星データやドローン(小型無人機)で収集したデータ、資源情報データベースなどのデータを組み合わせ、ビッグデータやAIなどを駆使してデータマイニング、データモデリング、データ分析を行う。このうち、ハードウエアの調達や設置、データ収集などの作業は提携企業に任せ、同社は主にデータ統合や分析を担う。同社の鄭利軍総経理によると、将来的には一部のハードウエア企業を買収し、利益率を引き上げることも検討していくという。

同社の背後には親会社の「億利集団(Elion)」が控える。億利集団は環境修復分野で30年の歴史があり、長期にわたって環境修復とクリーンエネルギー産業の融合的発展に注力してきた。国連環境計画(UNEP)によると、同集団が30年間で創出した環境資産の価値は5000億元(約8兆円)を超えるという。

鄭氏は環境分野の情報化市場において、環境分野に参入したテック企業と、情報化事業に舵を切った環境関連企業の2タイプの企業が今後競争を繰り広げるとみている。このうち、前者には現時点で「技術は理解していても、環境のことは分からない」という問題があると指摘。「億利集団は30年間にわたり腰を据えて環境対策に取り組んできた。関連技術や知識の分厚い蓄積があり、すぐに追い抜かれることはないだろう」との見方を示した。さらに、後者にとっては、ここ数年はデータ事業を開拓する上で決して良い時期ではなかったとした。

億利生態大数据は2020年の売上高を5000万元(約8億円)と見込む。同社が提供するソリューションサービスの一般的な客単価は数百万元(数千万円)前後で、モニタリングの精度や頻度、通信基地局の設置やその他サービスの要望に応じて上下する。プロジェクトの運営、データモニタリングに関しても年単位で費用を徴収しており、すでに損益分岐点に達している。

中国の大手産業情報サイト「中国産業情報網(www.chyxx.com)」によると、中国の環境モニタリング業界の市場規模は20年に900億元(約1兆4400億円)を突破、直近5年の年平均成長率は約20%となる見通しだ。同市場の急速な成長は環境関連データ業界全体のさらなる成長を促すとみられ、生態系・環境関連の情報化市場の規模は20年に1000億元(約1兆6000億円)を超えると予想される。
(翻訳・池田晃子)

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