テスラの時価総額、自動車業界首位のトヨタに迫る勢い 「中国がなければ、今日のテスラはなかった」

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米テスラ時価総額、自動車メーカー世界一のトヨタに迫る勢い 「中国がなければ、今日のテスラはなかった」

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米電気自動車(EV)大手テスラのCEO、イーロン・マスク氏は中国市場に溶け込むために苦心を重ねてきたといえる。

テスラは昨年末に、ショート動画配信アプリ「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」に広告を出したのに続き、今年に入ってからも中国に研究開発(R&D)・デザインセンターを開設する計画や「中国風」テスラを生産する計画を発表した。

写真:テスラのウェイボー公式アカウントより

つい先ごろも中国版ツイッター「微博(Weibo、ウェイボー)」上で、OTA(Over the Air)技術アップデート後は、麻雀やトランプなどのゲームのほか、動画共有サイト「優酷(Youku)」や「ビリビリ(bilibili)」の画面にテロップを入れる機能などが車内で利用できるようになると発表した。また、アリババ傘下のECモール「天猫(Tmall)」にショップを開設し、自動車部品の販売を始めることも明らかにした。1月30日には、新型コロナウイルス対策のために500万元(約8000万円)を寄付するほか、中国国内のテスラオーナーが無料で充電ステーションを利用できるようにするために同額の費用を拠出すると発表した。

テスラの中国の消費者のために「中国モデル」を構築するというこうしたやり方は、非常に賢いビジネス手法でもあり、深い思惑も感じられる。

テスラは着実にローカライズを進めており、中国市場もこれに対し友好的な姿勢を示している。2019年下半期は2四半期連続で黒字となったうえ、中国市場で好材料が相次いだのもあり、テスラ株は上がり続けた。株価は一時、過去最高値となる968.99ドル(約10万5700円)を付け、時価総額は1600億ドル(約17兆5800億円)と独フォルクスワーゲン(VW)を上回り、首位のトヨタ自動車の約1937億ドル(約21兆2800億円)に迫る規模となった。株価の高騰によりマスク氏の個人資産は昨年1年間で135億ドル(約1兆4800億円)増え、増加幅は世界の富豪の中でも最大となった。

イーロン・マスク氏の描く「中国の夢」

今から10年前に米アップルが中国に進出したように、テスラも完全に中国市場に照準を合わせているうえ、アップルよりも急進的だ。

テスラは2013年に中国市場に進出したが、それ以前から中国の法律や政策を専門に研究する部署を設置して対応してきた。中国市場に馴染めないアマゾンやUber、Oracleなどの米巨大企業と比べ、入念に調査・研究を重ねてきたテスラは「中国でのやり方」を熟知している。

マーケティング活動に一銭もかけないことで知られるマスク氏も、中国市場では消費者の歓心を買うために、その考えを改めたようだ。

2019年以降、テスラは頻繁に自動車関連のメディアやオーナーらを招いて試乗イベントを開催しており、同社幹部もメディアと親しくするなど、米国とは異なる姿勢をとっている。このほか、ショート動画アプリ「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」や快手など、若年層に人気のあるSNSプラットフォーム上に公式アカウントを開設したり、テンセントの音楽配信サービス「QQ音楽(QQ Music)」やバイドゥマップ(百度地図)と提携したりするなど、自動運転の実現に向けて着々と布石を打っている。

提供元:テスラ公式サイト

それでもマスク氏からすると、まだまだ十分ではないようだ。火星移住を目論むこの夢想家がめざすのは、真の「中国テスラ」を造ることだ。

同氏はこれまでに、中国を最も重要なEV市場だと位置づけた上で、「中国色を強めて、見た目を完全に中国風の自動車にし、中国で最初に発売する可能性も排除しない」と発言したことがある。

将来的にグローバル本社を中国に置き、中国人のCEOを採用することまで考えているという。昨年8月に開かれた世界人工知能大会(WAIC 2019)でも中国をべた褒めし、「中国こそが未来だ。そしてその未来は人に感動を与えるだろう」と発言した。

映画「アイアンマン」の主人公のモデルにもなったマスク氏。中国市場重視の姿勢が言動や表情の端々に表れてしまうこのシリコンバレーの住人は、中国の消費者にその存在感をアピールすることをこれまで一度たりとも諦めたことはなかった。

2014年にテスラは中国での独資工場建設計画の申請が却下されたが、その後、マスク氏は中央電視台の番組に出演し、自身の起業の経歴を言葉巧みに語るなどしてファンの心をつかみ、スタートアップ界のカリスマ的存在となった。また、それから数年の間に同氏は頻繁に中国を訪れている。

2018年7月、市場開放が進む中、マスク氏の中国工場建設の夢はついに転機を迎えた。テスラと上海市政府が契約を締結した後、マスク氏が蒸し鶏で有名なファストフードチェーン「振鼎鶏(zhending chicken)」で食事をしている写真がSNS上に出回った。2019年1月7日、上海工場の起工式に出席した後には、新恋人を連れて北京の火鍋店で祝賀会を開いた。

納車記念イベントでダンスを披露するマスク氏

写真:テスラのウェイボー公式アカウント

2020年1月7日、マスク氏は中国版テスラのオーナー向け納車イベントで興奮してダンスを披露し、「中国がなければ、今日のテスラはなかった」と謝意を示した。その1週間後、テスラは中国にEVの研究開発(R&D)センターを新設すると発表。中国でカーデザイナーを募集し、独自の「中国風テスラ」を生産する計画も明らかにした。

「メイド・イン・チャイナ」から「デザインド・イン・チャイナ」に移行する考えだ。こうして「中国風テスラ」の希望に満ちあふれた「中国化」への長い旅路が始まった。

作者:「未来汽車日報」(Wechat ID:auto-time) 秦章勇

(翻訳・北村光)

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