8億7000万件のコロナ救援物資が中国へ 各社の努力で無償輸送や税関手続の簡易化も

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新型肺炎の発生以降、海外の中華系住民や各種団体、さらには中国国内企業や政府が関連物資を大量に調達しているため、海外の保管倉庫や商品棚から医療物資が消えている。また、こうした物資を最短で中国国内に輸送する試みが続いている。

中国の輸出入監督機関である税関総署は2月12日、2020年1月24日~2月11日に全国の税関で8億7000万件、商品価値にして28億4000万元分(約450億円)の感染症対策物資の通関検査を実施したとデータを発表した。そのうち、マスク7億3000万枚、防護服741万枚、ゴーグル154万個、消毒用品153万件、薬品222万件、医療器具134万個に上った。

これほど短期間に、こうした膨大な物資がどのような方法で中国国内に運ばれたのだろうか。

第一に「ベリー便」と呼ばれる旅客機の貨物室の利用が、今回の肺炎発生初期の主な輸送方法となった。国内の航空会社は救援物資をめぐる特例措置を次々と開始しており、海南航空は救援物資の航空貨物輸送費を無償化すると発表。この動きに南方航空、中国国際航空、中国東方航空も次々と続き、カタール航空も2月5日に同様の措置に踏み切った。

だが、日増しに減便する国際旅客機の輸送力では、明らかに大量の物資に対応しきれなくなっている。チャーター機は選択肢の一つであるとはいえ、費用が高額だ。関係者によれば、チャーター機1機につき、欧州ー中国間では約250万元(約3900万円)、また米国ー中国間では380万元(約5900万円)の費用が発生するという。

さらに、世界各国から送られる物資を散発的な航空便のみで輸送するのは困難であり、さらにはこうした膨大な物資の引受、輸送、配送をいずれかの宅配物流企業が実施するのも極めて難しい。

1月23日に武漢市の封鎖措置が講じられたため、医療・防護物資の消耗スピードは予想を上回っている。アリババ傘下の物流企業「菜鳥(Cainiao)」の幹部は1月25日早朝の会議で、自社の輸送ネットワークの強みを生かし、中国国内外の救援物資を無償輸送することを決定した。

菜鳥は手始めに業務への参加を希望する宅配物流パートナー企業への連絡を行ったところ、「中通快逓(ZTO Express)」「德邦物流(DEPPON LOGISTICS)」、香港の「Air-City(航都国際集団)」、デンマークの海運企業「A.P. モラー・マースク」および「逓四方速逓(4PX EXPRESS)」など中国国内外の物流企業13社が2時間以内に参加を表明、参加企業は最終的に30社まで増加した。菜鳥はさらに義援金ホットラインを開設し、同社のグローバルチームが物資の通関任務を請け負い、宅配物流企業による物資の調整、輸送リソースとの連携、監督管理部門との折衝などに協力した。

「一部の重点区域では、混載方式によるチャーター便によって逼迫する航空リソースの問題を解決できるほか、コストを適度に引き下げることも可能だ」と菜鳥は述べた。同社は2月15日の時点で、1万6000件の義援金ホットラインへの電話を受け、3000万件超の物資を輸送した。

問題は次から次へと噴出し、フライト運休をめぐる問題も生じている。直行便の本数は減る一方のため、マスクの輸送に大変な手間がかかっているのだ。これに関し、ドバイやシンガポールを集配地点とし、中国に再輸送する方法が対策案として提示された。遠回りな方法とはいえ、物資が届くことには違いない。

とはいえ国外から中国国内に到着したマスクは、さらに通関の問題に直面することになる。一般貿易での輸入ではマスクに19%の税金が課される。寄付物資であることを証明するには、大量の書類や証明書などの手続きが必要となる。だが幸いなことに、税関総署は1月26日、寄付物資の輸入について簡易措置を設け、免税手続を加速させると発表した。

現在、インド、アラブ首長国連邦、韓国、イギリス、タイ、シンガポールなど多くの国で、程度は違えど物資コントロールに関する通達が出されている。防護服または物資などを大量に調達することはすでに不可能な状態だ。

武漢赤十字協会が公表した情報によれば、2月12日の時点で同協会が配布したマスクは合計206万860枚だが、これは同協会が受領したマスクの12%にすぎない。また配布されたマスクのうち病院への配布はわずか20%で、医療機関以外への配布が80%を占めており、多くの人々がこの点に関して懸念を示している。

これほどまでに大量のマスクが中国に届いた後、最も必要とする人々にいかに速やかに届けられるかも難題だ。

中国国内のマスク生産企業が全面的に稼働を開始しつつあるのは朗報といえる。2月11日の時点で、全国のマスク加工工場の稼働再開率は76%、設備稼働率は94%、N95医療用マスクの設備稼働率は128%に達している。また企業の工商登記情報を扱う「天眼査(Tianyancha)」によると、直近で3000社の企業の経営範囲に「マスク、防護服」などの業務が追加されており、そのうち700社はテック企業となっている。
(翻訳・神部明果)

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