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米国の自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)がタイからの撤退を表明してまもなく、「長城汽車(Great Wall Motor)」がGMのタイ工場の買収を公表した。さらに、長城汽車は2月初頭にインド市場進出の計画を発表した。同社は、半年前にロシアにも進出している。
海外での動きが活発なのは長城汽車だけではない。「江淮汽車(JAC Motors)」は欧州市場への進出を公表しており、「奇瑞汽車(Chery Automobile)」は米国の「HAAH」社との合弁により新規ブランド「VANTAS」を立ち上げ、米国市場進出を公表している。
中国本土の自動車メーカーは難局のなかでこうした戦略を取っているが、海外進出は彼らにとって良薬になるのだろうか。
海外市場の魅力
中国が本格的に自動車の輸出を開始したのは21世紀に入ってからであり、2012年にようやく年間輸出台数100万台を超えたが、同年の国内の自動車生産販売台数1900万台と比べれば極わずかだった。
海外に進出しグローバルな競争に参加することは自動車メーカーにとっての試金石であり、各国の自動車産業が辿ってきた道のりでもある。しかし、中国に限って言えば、まだグローバル競争や産業全体の発展を促進するためという段階には来ていない。中国の自動車メーカーが海外進出するのは、国内の自動車販売が低迷しているためだ。
在庫消化と生産過剰に対処するため、そして「一帯一路」の国家戦略を背景に、中国の自動車メーカーは海外に積極的に進出するようになり、ある程度の成果を収めた。その上、世界的な大手自動車メーカーは電気自動車により多くの予算を投下するため、全世界に展開している事業の一部を縮小する流れにある。彼らが切り捨てた工場を、中国の自動車メーカーが買っているのである。
簡単には稼げない海外市場
輸出を開始してから十数年、中国の自動車メーカーは当初の完成車輸出から現地で組み立てるノックダウン方式に転換した。現地の方が人件費が安く、物流費、関税なども節約できるためだ。
しかし、海外で稼ぐのは簡単ではない。完全な現地生産を実現できない限り、どうしても為替リスクや地政学リスクがつきまとうからだ。
輸出先を見ると、中国の自動車メーカーは主に南米、中東、東南アジアといった自動車製造能力が弱く、参入ハードルが低い国に輸出している。商務部のデータによると、2018年に中国から米国、豪州、英国など先進国に輸出された車は12万台で、比率は12%しかない。
中国国内の人件費と材料費が上がり続けているため、完成車を輸出する上での価格的優位性は薄れている。その上、中国の自動車メーカーの輸出先は分散しており、スケールメリットがないため海外販売の利益率は低く、1%以下や赤字の企業もあるという。
海外で提携を模索する流れになるか
中国の自動車メーカーの海外での成長を阻む要因はほかにもある。多くのメーカーは海外では代理販売の形をとっており、現地への影響力に限界がある。そのことにより供給のサイクルが長く、アフターサービスや宣伝も不十分となっている。製品そのものでは、欧米、日本のメーカーと比べ開発力と品質で劣るため、海外での第一印象が薄く、その後の影響力拡大も困難である。
ブランディングにはよい製品と運営力の向上が不可欠だが、どうしても時間がかかる。そのため、中国の自動車メーカーは現地企業と提携するほかに、メーカー同士の提携も検討すべきだ。世界的な大手メーカーの多くは、海外において互いに委託生産をしあうことで、生産のキャパシティを十分に生かし、ひいては技術、サプライチェーン、販売チャネルでも提携を行うようになっている。そうすることで、互いに開発費と販管費を節約することができるのである。
完成車輸出から技術・資本提携に転換したが、中国の自動車メーカーが海外進出するにはまだ時間がかかる。海外での開発、工場建設のために行った投資が長期に渡り重荷となる可能性もある。しかし、長城汽車会長の魏建軍氏がかつて語ったように、各社とも次のように考えている。「中国の自動車メーカーは海外進出すればまだ十分生き残れるが、国内にとどまるだけではいずれ死ぬ」のである。
(翻訳:小六)
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