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今年1月、自律走行配膳ロボット開発メーカー「Bear Robotics(ベア・ロボティクス)」がシリーズAで3200万ドル(約35億円)を調達した。リードインベスターはソフトバンク、コ・インベスターは「LINE Ventures Corporation」、韓国のロッテグループ、「DSC Investment」、「Smilegate」、および米「Vela Partners」。資金は第2世代ロボット「Penny2」の量産、販売、サービスネットワークの拡張、次世代ロボットの研究開発に充てられる。2017年にはエンジェルラウンドで、2018年にはシードラウンドで合計380万ドル(約4億2000万円)を調達した。
Bear Roboticsは2017年に米国シリコンバレーのレッドウッドシティで設立された。同社は米国、韓国、日本にあるレストラン、カジノ、養護施設向けに配膳ロボットのソフト・ハードウェアを提供している。韓国ソウルに支店があり、日本と中国にも支店開設を検討中である。
Bear Roboticsの創業者は、元グーグルエンジニアのJohn Ha氏と李方為氏だ。CEOのJohn Ha氏はグーグル在職中にレストランを経営しており、配膳の大変さを痛感している。CTO(最高技術責任者)の李方為氏は、グーグルの社内スタートアップインキュベーター「Area 120」の共同創業者でもあり、大規模データを効率的に分散処理するプログラミングモデル「MapReduce」や機械学習用ソフトウェアライブラリ「TensorFlow」などのプロジェクトで中心メンバーを務めるなど、システムアーキテクチャ開発に長年携わってきた。
李方為氏は先進国の飲食業、特にファストカジュアル(ファストフードとファミリーレストランの中間にあたる業態)が現在直面している最大の問題点は、人材確保の難しさと人件費の高騰だと指摘。多くの有名企業が従業員の数を減らさざるを得なくなったことで、サービス品質は著しく低下し、従業員のさらなる流出をも加速させている。スタッフを反復作業の多い激務から解放し、よりリラックスして効率良くサービスを提供してもらうことがBear Roboticsの目標だ。その理念は「人へのサービス」であって「人に取って代わる」ことではない。未来のレストランを冷ややかなロボットだけにするのではなく、むしろ人とロボットが一緒に働き、より良いカスタマーエクスペリエンスを提供することを目指しているのだ。
2017年末から、Bear Roboticsは第一世代ロボット「Penny 1」をさまざまなシーンでテストし、小規模に展開した。第2世代ロボット「Penny 2」は基板とサスペンションの路面に対する適応性が向上し、3層設計で一度の配膳量も増えてている。取り外し交換が可能なパーツにより、さまざまなシーンでフレキシブルに活用できる。2019年に、Pennyは全米レストラン協会のキッチンイノベーション賞を受賞した。
現在、中国では「擎朗智能科技(KEENON Robotics)」などの多くのスタートアップが自律走行配膳ロボットを研究開発しており、中国火鍋チェーン大手「海底撈火鍋」などのレストランで実用化されている。李方為氏は中国市場での同社の強みについて、Pennyの形状とデザインはほとんどのレストランで使用でき、狭い通路や不規則なレイアウト、段差のある床などにも適応できる点を挙げる。レストランのデザインはそのままに、自己位置推定と環境地図作成を同時に実行するSLAM技術により位置を正確に把握、マルチカメラとアルゴリズムを組み合わせて死角ゼロで障害物を回避できる。組立と配置は30分で完了、24時間365日のクラウドモニタリングとメンテナンスも付帯する。今年のコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)では、参加者であふれかえる会場を自動で走行できた唯一の屋内ロボットとなった。
Bear Roboticsの主な収入源は、ユーザーが支払う毎月のロボットレンタル料だ。李方為氏によれば、現在さまざまな業界の大手企業と深い協力関係にあり、約100台のプロトタイプを現場に投入しているほか、予約注文は1万台以上で、2020年中には量産化できるという。
黒字化について李方為氏は「我々は急速な成長を戦略としており、現時点ではより良い製品作りのため研究開発への多額の投資が必要だ」と述べた。また米国、韓国、日本にはみな巨大な飲食サービス市場があり、人件費も似通っているという。これら3カ国におけるPennyの市場規模は100億ドル(約1兆1000億円)に達し、世界の市場規模は500億ドル(約5兆5000億円)に達すると同社は見積もっている。(翻訳・永野倫子)
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