中国新興EVメーカー、「黒船」テスラの攻勢を阻止するのはどの企業か

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新エネルギー自動車業界では2019年、財政補助金の7割が削減されたり、排ガス出基準が「国5」から「国6」へ厳格化されたりするなど、「ブラックスワン」とも言える出来事が数多く起こった。2020年に入って政策、業界ともに落ち着くかにみえた矢先に新型コロナウイルスが発生し、業界にとっての不確定要素の一つとなった。

新興メーカー間の格差は昨年時点にすでに大きく広がっていたが、今年に入ってマイナス要素の影響が重なったことで、業界全体の再編が加速することは明らかだ。

テスラ:中国国内でコスト削減 海外市場で事業拡大

テスラの中国工場は年間15万台の生産能力という規模を誇っているが、中国全土で猛威を振るう新型コロナウイルスはテスラの株価には影を落としていないようにみえる。同社の株価は887ドル(約9万円)の高値圏で推移しており、時価総額はトヨタに次いで世界2位となっているが、この状況は量産型EV「Model 3」の成功によるところが大きいことは間違いない。

2019年は同社にとってModel3が試される一年であった。創業以来16年間にわたって積み上げてきたブランドにもかかわらず、手の届きやすい価格で発売し、そのソフト開発と直営店サービスに対する投入を引き下げたことで、第3、第4四半期と2期連続で黒字を達成した。

昨年4月22日の投資家向け説明会「自動運転車投資家デー」は、テスラのスマート化戦略にとって重要なターニングポイントとなった。この日、テスラは自社開発に2年あまりの時間を費やした完全自動運転「FSD(Full Self Driving)」チップを発表した。これは、同社がインテル傘下のイスラエル企業「モービルアイ(Mobileye)」との提携を解消した後、盟友であった「エヌビディア(NVIDIA)」との提携も解消し、自動運転のソフト・ハードウエアの開発を自社で行ってきたことを意味する。

同社は2018年末に、NoA(Navigate on Autopilot)を更新し、オートパイロット機能を車両に搭載したことで、2019年には自動運転レベル3を達成した。

同年第3四半期には、駐車場に停めた車をスマホのアプリで自分が指定する場所まで自動運転で呼び寄せる「スマート・サモン(Smart Summon)」機能を追加した。このほか、同社のAPシステムは、段階的に信号機や道路上のコーン感知などのセンサー分野へも拡張している。

同社はこの技術の進展により実質的な成果を得ている。2019年第3四半期、APとFSD機能により5億ドル(約530億円)の繰延収益があり、同四半期は1億4300万ドル(約150億円)の純利益を上げている。

2020年も引き続きテスラがすべきことは世界規模で商品を供給することだ。北米市場において、同社のModel3の販売台数はすでにドイツの高級車ブランド3強(ベンツ、BMW、アウディ)の同ランク車種の合計販売台数を超えている。テスラは現在、欧州と中国市場でこの業績を再現しているところだ。また、ドイツベルリン郊外で、4091万ユーロ(約48億6000万円)という巨額を投じ300ヘクタールの土地を購入、世界的な自動車産業の中心地に乗り込む構えだ。

創業者でCEOのイーロン・マスク氏が設定した2020年納車目標は50万台で、そのうち中国工場では15万台を生産する計画だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、この目標の実現はかなり難しくなっている。また、テスラにとっては部品の国産化によるコスト削減が急務となった。2月3日、EV用リチウムイオン電池大手「寧徳時代(CATL)」はこのほど、テスラ向けに電池の供給を行うと発表した。テスラにとってコスト面で比重が最大となる電池の分野で中国サプライヤーと手を組んだことを意味する。

一方、中国工業情報化部の開示資料からみると、テスラの国産車種が寧徳時代の電池を使用するのは2021年までとなっている。注意すべきは、寧徳時代の供給コストはテスラの既存のサプライヤーであるパナソニックよりも優れているというわけでもないことだ。テスラと寧徳が提携することで、価格の上でのせめぎ合いが起こることは間違いない。、しかし、他のスタートアップメーカーにから見ると、テスラの独走を遅らせるという意味で一息付ける状況になっているとも言える。

蔚来汽車:2019年は存亡の岐路、2020年はビジネスモデルの成否が試される年

新興EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」は新型コロナウイルスの発生によって、急速に資金繰りが悪化している。

過剰な資金投入がその理由だ。同社は販売ルートとサービス網を2年足らずで中国全土に行き渡らせたが、これは既存の自動車メーカーが10年かけてやってきたことだ。蔚来は、アメリカにも支店を置いているが、同社のグローバル展開は巨額の資金を費やしただけなく、米中両国に跨がることによる地理的・文化的制約から、提携する上での効率の問題も発生している。

蔚来の幹部らは36Krの取材に対し、2019年の危機のほとんどは、これまでの資金調達が順調過ぎたことによる秩序なき急成長が原因であり、この危機は、蔚来の会社組織の再編の機会ともなり、中核的戦略に集中できるよい機会でもあったと話している。

2019年は、販売ルート戦略を同社が重点的に調整した一年であった。蔚来は、資金が多くかかり開拓スピードも遅い大型展示場「NIO House」の開設をいったん中止し、開拓が早くかつ資金投入が少ない方へ方向転換し、販売接点となる小型展示場「NIO Space」を短時間に増やしていった。

同社は2019年、9900人超から7000人余りにまで人員削減を行った。コロナウイルスがもたらした資金調達の圧力により、さらに海外チームのさらなる縮小や、都市部企業の合併吸収など、業務調整の措置をとらざるを得なくなるかも知れない。

同社創業者の李斌氏も1月3日の内部通達で「2020年、当社は高効率モデルに入る。低コスト、高効率の優れた研究開発、卓越したサービスが2020年からの運営と管理面での主要な考え方だ」としている。

スマートテクノロジーでブランドサポートを行うテスラの戦略とは異なり、サービスシステムで支えられているというのが、蔚来独特の強みだ。

このほかに、新型コロナウイルスの感染拡大という状況下において、いかにして販売増を狙うか、さらには現行の業績を維持していくかが、2020年の蔚来の重要な課題だ。昨年のブランドイベント「NIO Day」に、蔚来はクーペスタイルの新型電気SUV「EC6」を発表。これはテスラの「ModelY」に対抗するものだ。しかしこの車種のメインターゲットは細分化された中低所得者層で、どちらかというと若年層向けのクーペモデルでは、薄利多売という重責は担えない。36Krが蔚来の内部関係者から得た情報では、海外進出と外部市場の開拓についてはすでに、蔚来の経営陣の議題には上っており、新規進出する国には「緑の都」と呼ばれるノルウェーが含まれているという。

小鵬汽車:自動運転の実施を加速

新型コロナウイルスの感染拡大の圧力の他に、蔚来が直面している問題として、「小鵬汽車(Xpeng Motors)」が資金調達したことなどが上げられる。小鵬汽車の経営者に近い投資関係者は、小鵬汽車の手元資金は2020年末までは問題ないとの認識を示した。

しかし、2020年は、小鵬汽車の発展にとっては極めて重要な年である。

小鵬汽車は2016年のテスラ同様、Mobileyeとの提携を解消し、自社のセンサーチームを構築し、自社開発の自動運転を徹底する狙いだ。

現在、小鵬汽車はすでに、シリコンバレーの100人を超えるアルゴリズム開発チームを含む370人体制の自動運転ソフトウエアチームを立ち上げている。このほかにハードウエア関連チームもある。「弊社の自社開発への投入は大きく、ソフトウエア開発に向け、ディスプレー、電子電気関係のフレームワーク、ビルトイン、バスラインからボードまで、すべてに携わっており、完成車のOTAの必要性からハードウエアの設計にも参与している」と話すのは同社創業者の何小鵬氏だ。

スマートテクノロジーを支柱とし、小鵬はこれまでの20万元(約300万円)以下の市場価格帯からの脱却を始めており、クーペ型モデル小鵬P7をあえて30万元(約450万円)前後の価格帯へ引き上げている。これもまた、同社がテスラのModel3のライバルとなる一因となっている。

小鵬クーペ型モデルP7 写真は公式サイトより

テスラに追随したやり方のメリットは、テスラのモデルがある程度すでに認知されていることだ。しかしデメリットは、テスラと違いを際立たせる必要があることだ。したがって、2020年、小鵬汽車の重点はLevel 3の自動運転を実現することであり、そのことにより、中国国内の道路事情に精通するための優位性をどこよりも先に得ることができる。

新興自動車メーカーにとって2020年は、新型コロナウイルスとテスラの猛攻の中で、2019年以上に、競争が激しく、直接的に淘汰される1年となる。

(翻訳:lumu)

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