新型コロナで急成長のオンライン診療 無視できない課題も

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新型コロナウイルス感染症流行により、オンライン診療プラットフォームが資本市場の注目を集めている。

海外メディアの報道によると、オンライン診療プラットフォームの「微医(Wedoctor)」が香港での上場を目指しているという。上場により10億ドル(約1100億円)の調達を考えており、目標評価額は100億ドル(約1兆1000億円)だ。微医は2010年に設立され、これまで7回の資金調達を行っている。7回目はシリーズPre-IPOで、調達後の企業評価額は55億ドル(約6000億円)だった。

オンライン診療は現在の異常事態のなかでニーズが急増し、爆発的な成長を迎えると見られている。しかし、ビジネスモデルと医師の参加意欲をどのように高めるのかが課題だ。

変化する診療の仕方

オンライン診療サービスが始まってから10年が過ぎたが、これまでなかなか普及が進んでいない。中国の保健当局のデータによると、オンライン診療の市場浸透率は2009年から2018年まで、0.52%から0.85%へとほんのわずかしか向上せず、さらに、ネットで調べてみると、オンライン診療を不安視する声が大量にある。

その状況が今回の感染症で一変した。各オンライン診療プラットフォームが感染症特集ページを開設し、ユーザーが爆発的に増えた。微医の1日あたりのアクセス回数は10倍増え、同じくオンライン診療プラットフォームである「平安好医生(PingAn GoodDoctor)」のアプリの新規登録者数は10倍に増えた。それと並行して、外出規制で実際に病院に足を運ぶ患者が激減したため、オンライン診療プラットフォームに登録する医師の数も急増した。

政策面での支援も大きい。3月2日、中国医療保障局と保健当局が連名で通達を発表し、一定条件を満たせばオンライン診療にも公的保険を適用するとした。

これらの好材料が後押しとなり、微医はこのタイミングでの上場を目指しているのである。

インターネット大手の争い

オンライン診療の各社とも資本市場の力を借りようとしている。平安好医生とアリババ傘下の「阿里健康(アリヘルス)」がすでに上場を果たしたため、微医は取り残されないためにも急ピッチで上場を進めなければならない。

微医には2014年テンセントが出資し、資金面で余裕ができただけでなく、SNSサービス「WeChat」によるトラフィック面の支援も得て、その後は業務を急速に拡大してきた。

オンライン診療企業の背後にインターネット大手が存在することはすでに周知の事実である。大手企業もオンライン診療という新たな戦場で一歩も譲らない競争を繰り広げている。2019年上半期、医療・ヘルスケア分野の資金調達は374件あり、合計金額は502億元(約8000億円)だった。資金調達額上位4社のうち、3社がインターネット大手である「京東(JD.com)」、アリババ、テンセントのグループ企業だ。

オンライン診療業界はすでに淘汰が進み、現在生き残っている影響力を持つ企業は、どれも巨大企業が背後から支えている。今や競争はビジネスモデルの戦いにシフトしたと言える。

未解決の課題

ビジネスモデルはまちまちだが、どこも黒字化できていないのが現状だ。

平安好医生の2019年の財務データによると、年間売上高は50.65億元(約800億円)で、7.34億元(約120億円)の赤字となった。前年は売上高33.38億元(530億円)で、9.12億元(約150億円)の赤字だった。阿里健康の2019年中間報告によると、赤字は前年の9000万元(約14億円)から91.5%も減り、760万元(約1億2000万円)となったが、それでも赤字であることに変わりはない。業界関係者によると、オンライン診療プラットフォームはどこも赤字だという。

今は赤字覚悟でユーザー獲得を狙う時期だが、長期的に収益化できるかどうかは不透明だ。ユーザーをつなぎとめるためには医師の参加意欲が重要だが、今は多くの医師が登録するだけでオンライン診療に参加していない状態である。「丁香園(DXY)」の創設者李天天氏によると、同社で登録している医師は200万人以上いるが、オンライン診療を日常的に行っているのは1.5万人しかなく、全体の1%未満である。

丁香園の創設者李天天氏

そのため、感染症終息後は、一時的にオンライン診療プラットフォームに登録した医師の参加意欲をどのように高めるのかが課題になるだろう。

人間の医師のほか、AIを診療に応用する動きも広がっている。医師不足が叫ばれるなか、アリババ、バイドゥ(百度)、テンセント、微医の各社とも、AIによるオンラインでの問診サービスを始めている。

オンライン診療が大きく伸びるきっかけを迎えていることは疑いない。今の課題は収益モデルと医師不足をどう解決するかということである。それを乗り越えた先に、オンライン診療の春が待っているだろう。

(翻訳:小六)

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