地域型生活サービスを強化するアリババ、「我々はライバルの美団とは違う」

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アリババグループ傘下の金融サービス企業「アント・フィナンシャル(螞蟻金服)」は3月10日、デジタルライフ・オープンプラットフォームを構築すると発表した。これに伴い、同社が運営する決済アプリ「支付宝(Alipay)」にも大幅に変更が加えられた。最も大きな変更はフードデリバリー、グルメ、エンターテイメント、ホテルなど生活関連サービスへの入り口を上位に持ってきたことだ。アリババグループとして今後、地域密着型生活関連サービス事業を重視し、注力していく姿勢がみえる。

同事業を手がけるアリババ傘下の「阿里本地生活服務」の王磊総裁はこれについて、「今回の支付宝リニューアルで最大のメリットを享受するのは、我々のプラットフォームにサービスを提供するサードパーティーの企業だ。(阿里本地生活服務が運営する)フードデリバリーサービス『餓了麼(Ele.me)』と生活O2Oサービス『口碑(Koubei)』の集客数も明らかに伸びているが、これはあくまで(新展開の)序章に過ぎないだろう」としている。

王総裁は新型コロナウィルスの感染拡大がこうしたライフスタイルサービスの活況を招くきっかけになったと考えており、「組織、製品、エコシステム、集客、資金、すべて整った」と述べた。

以下は、事業戦略のこれまでとこれからについて王総裁に語ってもらったインタビューの抄訳。

――新型コロナウィルスが貴社にもたらした影響は。

「天の時、地の利、人の和が揃った。客観的にみれば、新型コロナウィルスが我々の業界をブーストさせ、認知度が上がったとともに、多くの人から重要視されるようになった。これが天の時だ。また、我々がこれまで推進してきたデジタル化が新型コロナ禍で存分に存在感を示し、ますます多くの仲間やリソースが集まって援護射撃をしてくれた。これが地の利だ。最後に、この苦境にあって、我々以上に困窮しているのは提携企業だ。そこで彼らに向け、コミッションの大幅な減免や資金支援、集客支援を行った。彼らも次々と我々と手を取り合ってくれた。これが人の和だ」

――阿里本地生活服務は最近、支付宝のほかにアリババ内でECプラットフォームの「淘宝(タオバオ)」「天猫(Tmall)」、地図プロバイダーの「高徳地図(amap.com)」と連携したことで1日の訪問者数が1億を超えたといいます。この数字が意味するものは。

「実際、控えめに言って1億だが、この数字はますます増えている。さらに重要なのは、互いに集客源を共有した背景には、データ、製品、運営、配送体制なども共有したという事実があることだ。例えば餓了麼とは提携しない、しかし支付宝とは提携するが淘宝や天猫には出店するといった多くの企業にも、プラットフォームに加盟してもらえる。これが、我々にできて(競合の)『美団点評(Meituan Dianping)』にはできないことだ」

――昨年1年間で美団点評は黒字化を果たしたとみられていますが、彼らへの評価は。

「コミッションレートを引き上げ続けるような方法で提携企業が着いてくるかどうかはすぐに結果が見えるだろう。最近になって多くの提携業者が声を挙げているが、美団は新型コロナウィルスによる打撃が深刻な現在もなお、提携業者に対して『競合プラットフォームにも加盟している業者とは提携関係を切る』と迫っている。さすがにやってはならない一線を越えてしまったと個人的に感じた。我々は反対に、過去1カ月余りで4回もコミッションを引き下げ、競合プラットフォームよりも3~5%低く設定している」

「彼らは10年にわたって地域密着型生活サービスを手がけてきたが、優れた製品と組織があれば我々のように1年半余りでここまで来られる。市場全体はまだ黎明期だが、各社の意思決定と将来の方向性はまったく異なっている。今後ますます違ってくるだろう」

――美団は良好な黒字状態を達成し、今後は主力事業の手綱を緩め、新事業開拓に動くと考えられます。これは阿里本地生活服務にとってよいニュースではないですね。

「彼らはもうすでにあらゆる事業に手を伸ばしているのでは。昨年はむしろこれらの新規事業を縮小させている」

――阿里本地生活服務は昨年、地方都市開拓を重要な戦略としていました。その戦績をどう総括しますか。

「明らかな結果が出た。事業を進出させた都市ではいずれも基本的に大きなトラブルはなかった。競合他社があらゆる地域へ我々の戦略を偵察しにきた。我々がひとたび本気を出せば、やはり彼らはひるむだろう。しかし地方進出には大規模な組織の下支えが必要だ。我々は現在100都市に進出しているが、これを200都市に拡大させるには、100人のエリアマネージャーを確保しなければならない」

――今後はどのようなことに力点を置きますか。

「主に二つある。一つは地域型生活サービス事業が将来的にどのようなスキームを打ち立てるか思考することだ。そのため、わたしは提携企業向けのミドルオフィス業務とイノベーション事業グループの責任者を兼任している。今後、新型コロナウィルスの感染状況がさらに加速して深刻になったとき、提携企業を中心に進めてきたデジタルトランスフォーメーションがどう変化するかを見てみたい」

「二つ目はグループの各所を協働させることだ。まずは基礎固めをしてそれが具体的な事業案に昇華したら、前出の支付宝、淘宝、高徳地図や、次世代スーパー『盒馬鮮生(Hema Fresh)』などと協業を検討していきたい」

――現在の王総裁および組織の状態を形容するとしたら。

「組織的には全面的に戦闘態勢が整った。我々には勝算がある。いつでもスタートOKだ」

(翻訳・愛玉)

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