ファーウェイ、米制裁で海外事業1兆円損失も国内堅調の増益 2020年は「死力を尽くす」

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中国の通信機器大手ファーウェイは3月31日、オンライン動画配信により、2019年決算を発表した。新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るい、昨年5月に米国から課された輸出禁止も続く中、ファーウェイの年次報告は異例尽くしだ。

ファーウェイ輪番会長の徐直軍氏は、2019年の業績は基本的に期待通りの結果を達成したと語る。2019年の売上高は、世界全体で前年比19.1%増の8588億元(約13兆円)、純利益は前年比5.6%増の627億元(約9600億円)となり、過去5年間の平均年間成長率14%よりは明らかに低いものの、営業活動によるキャッシュフローは前年比22.4%増の914億元(約1兆4000億円)だった。

徐直軍氏はインタビューに答えた中で、昨年は米国の制裁の影響により、海外市場におけるコンシューマー事業で100億ドル(約1兆1000億円)以上の損失を出したと語る。

主要事業別では、コンシューマーBG(ビジネスグループ)の売上高は前年比34%増の4673億元(約7兆円)で、売上高全体の54.4%を占める。スマートフォン出荷台数は2億4000万台以上だった。コンシューマーBGの成長率は、米国の禁輸措置のせいで前年より落ちてはいるが、それでもファーウェイの三大事業の中では最も伸びが大きく、全体の売上高を押し上げている。 コンシューマーBGの設立は2018年だが、今やファーウェイの稼ぎ頭だ。

コンシューマーBGは現在「1+8+N」戦略(1:携帯電話、8:パソコン、スマートスピーカー、スマートウォッチなどの各種端末、N:事業パートナーのスマート機器、+:チップ、車載機器、ルーター)を推進しており、パソコン、タブレット、ウエアブル端末などIoT設備の成長に力を入れている。コンシューマーBGの余承東(リチャード・ユー)CEOはかつて、将来的にIoTの売上高は同グループ全体の30%を占めるまでになると語っていた。昨年、ファーウェイはサブブランドの「Honor」を含めスマートテレビを発売し、テレビ市場に参入した。

キャリアネットワークBGの売上高は前年比3.8%増の2967億元(約4兆5000万円)で、売上高全体に占める比率が初めて40%を下回り、34.5%となった。2019年にファーウェイは僻地でのインターネット接続を可能にするRuralStarシリーズをローンチしており、このシステムを利用して50以上の国や地域の僻地人口4000万人以上がモバイルインターネットを利用できるようになったという。

エンタープライズBGの売上高は前年より8.6%増加し、売上高全体の10%以上を占める。昨年、ファーウェイは初めてコンピューティング戦略を打ち出して肥沃な土壌であるスマート業界に注力することを発表、世界最速AIプロセッサ「Ascend 910」および同チップを数千基組み合わせた「Atlas 900」AIクラスターをローンチした。ファーウエイによると、現在、世界の700以上の都市にある、世界トップ企業500社のうち228社がファーウェイをデジタルトランスフォーメーションの外部パートナーに選んでいるという。

地域ごとに見ると、中国市場の成長率が36.2%と突出している。これは米国の制裁を受けて、携帯電話事業の重心を中国国内に移したことに起因する。EMEA(欧州、中東、アフリカ)での売上高は基本的に横ばいだ。アジア太平洋地域での売上高は13.9%減少したものの、米国では9.6%売上を伸ばしている。アジア太平洋地域での業績不振についてファーウェイは、複数の国でキャリアネットワークへの投資サイクルに変動があったこと、米国からの制裁でGoogle モバイル サービス(GMS)を使用できなくなったことを理由に挙げた。

厳しい状況下でも、ファーウェイの研究開発への投資意欲は変わらない。2019年は研究開発費に年間売上高の15.3%に当たる1317億元(約2兆円)を費やした。ここ10年間の研究開発への投資は総額6000億元(約9兆円)を超える。徐直軍氏は、逆境でのイノベーションは完璧な答えではないとしても、問題解決の核心にはなるとしている。

2020年の見通しについて徐直軍氏は「2020年も非常に苦しい年になるだろう。米国による禁輸措置は今年も続くとみられ、業界は当社の兵糧が間もなく尽きると予想している。今年はファーウェイにどれだけ持ちこたえる力があるかを試みる一年になるだろう。新型コロナウイルスの蔓延は全くの想定外だ。コロナ禍による世界的な景気後退、金融不安、需要落ち込みは我々の想定範囲を超えている。しかも、新型コロナウイルスは世界中に広がり、未だ収束する兆しもない。従業員の安全を確保しつつ、何とか顧客や政府のニーズに応えることが我々の当面の任務であり、今年の業績を今、予測するのは難しい。来年もまた決算を発表できるよう、2020年は死力を尽くして闘う」と述べた。
(翻訳・永野倫子)

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