1日1億件の受注目指す、逆境下でも強気のDiDi 拡大戦略の勝算は?

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オンライン配車サービス大手「滴滴出行(DiDi)」は3月16日、最近中国で流行し始めた新タイプの配送サービス「跑腿(使い走り)」サービスを開始した。積み合わせ配送をせず、すぐに送り主のところに駆けつけられる手すきの配送員が直接届け先まで荷物を運ぶサービス。各種の移動手段を取り込み、「ポスト自動車」の時代をにらんだ業務を拡大していくというのは、DiDiの一貫した戦略であり、今回の跑腿もその試みの1つと言える。

美団との新たな一戦

跑腿は、河南省鄭州市、上海、深圳、重慶など21都市でサービスを開始。これはデリバリー業務に続く、DiDiの生活関連サービス分野への進出となる。

DiDiが生活関連O2O(オンラインからオフライン店舗への誘導)サービス企業「美団(Meituan)」と競い合うのは配車予約、デリバリー、シェアサイクルに続いて4分野目となる。

新型肺炎流行に伴う外出制限による配車サービス需要低迷の中で、新サービスを導入したことについて、DiDi側は運転代行サービスに携わるドライバーの収入源を増やすためであり、今後どのように展開していくかは実際の効果のフィードバックをみて決定するとコメントしている。

しかしDiDiは、跑腿のローンチから10日後にSNSプラットフォームでのマーケティングを開始し、芸能人や人気ライバー(動画配信者)を起用した動画配信を行うと同時に跑腿を低価格で利用できるキャンペーンを開始しており、このサービスがドライバーの収入を増やすためという単純な目的だけで行われているのではないことが見て取れる。

市場シェア拡大が第一目標

3月24日、DiDiは社内通達で1日の注文件数が1億件を超えること、中国国内のモビリティ分野で市場シェア8%を超えることを今後3年間の新たな目標とすると宣言した。

DiDiはすでに業界では最大手の企業だ。しかし2016年中国インターネット大会において、DiDiの総裁、柳青氏は「中国のスマートモビリティ利用率(外出のべ回数に対し交通手段としてスマートモビリティが選択される割合)は1%にすぎない。米国は15%だ。中国のオンライン配車予約市場にはまだ非常に大きな成長の余地がある」と語っている。

1日1億件というのはあり得ないことではないが、非常にアグレッシブな目標だ。DiDiの関係者は「シェアサイクルに関して言うと、投入できる車輛台数が厳しく制限されている現状においては、中国全土にいくら浸透しても、1日2000万件程度が限界だ」と語る。シェアサイクル市場では、アリババが出資する「哈囉出行(ハローバイク、Hello TransTech)」、美団が買収した「摩拜単車(モバイク)」など、どのライバルも侮れない存在だ。

「中商産業研究院(ASKCI Consulting)」が発表した「2018-23年中国オンライン配車予約業界の展望および投資機会研究報告」によると、現在、中国のオンライン配車予約の主戦場は一、二級都市に集中し、配車予約の市場浸透率はそれぞれ40.1%、17.3%となっているが、三、四級都市は依然として手つかずの巨大市場のままだ。

1日1億件を実現するには、地方都市での展開が必須だ。DiDiの元社員は「DiDiは、自転車、電動バイク、公共バスに匹敵するような、より安く革新的なモビリティサービスを提供する必要がある」と述べている。

多くの課題とひしめくライバル

しかし、規模拡大は容易ではない。

2018年に起きた相乗り配車サービス(順風車)のドライバーによる乗客殺害などの事件を契機に、昨年、DiDiは安全とコンプライアンスを主要な戦略と定めたが、この機にライバルたちはオンライン配車予約市場でのシェア拡大を虎視眈々と狙っている。中国自動車メーカー大手数社が共同設立した「T3出行」、東風汽車の「東風出行(DFGO)」などが新たに配車予約を始め、「哈囉出行」も配車予約へ参入している。

現在の苦境は新型肺炎の影響も大きい。2月のDiDiのMAU(月間アクティブユーザー数)は前期比28.34%減の1962万人だった。新型肺炎の影響は中国国内にとどまらず、DiDiが市場開拓を進めているラテンアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、日本などでも苦境が続いている。

国際市場はDiDiが全力で挑まなければいけない領域だ。新型肺炎以外の障壁として、インドやインドネシアには地元の有力な配車予約サービス企業が存在し、欧州や北米にはUberやLyftがあり、中東にはUberに買収されたばかりのCareemがある。このような状況に対し、DiDiは早いうちから米LyftやシンガポールのGrabに出資を行い、Uberに対抗するグループを作り上げようとしてきた。

18年の「順風車事件」以降、DiDiはしばらく冬の時代を迎えた。同年の損失額は109億元に達し、その年末にはボーナス半減や事業売却を実施した。だがDiDiの上層部に近いある人物は「最悪の時はすでに過ぎ、今の状況は悪くない。新型肺炎の影響により、政府は安定した働き口の確保を必要としており、DiDiのドライバーや美団の配達員がその受け皿となり得るからだ」と話している。これはコンプライアンス面でDiDiと政府の関係部門の間において、何らかの暗黙の了解があった可能性を示唆している。

現時点でスマートモビリティの分野では、DiDiは依然として巨大な企業だ。モバイルインターネット専門のデータ調査企業「Trustdata」によると、モビリティ分野における2月のMAUの減少率は、DiDiが最も小さかった。DiDiが2020年通年で40%~50%の成長を達成できるかどうかは、新型肺炎の収束後のチャンスを掴めるかどうかにかかっている。

作者: Tech星球(ID:tech618)、王琳

(翻訳・普洱)

(編集・後藤)

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