物流業界で天下統一を狙うアリババ 強敵の京東と拼多多は猛追

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先ごろ中国EC最大手のアリババが、物流大手を傘下に持つ「韻達控股(Yunda Holding)」の株式10~15%を取得する計画だと報じられた。このニュースは瞬く間に広がり、それに伴って韻達株は急騰した。現時点の株価で計算すると、アリババが取得予定の株式は少なくとも67億元(約1020億円)に上る。

現時点ではアリババ、韻達ともにこの件について言及してないが、もし株式取得が事実なら、中国の六大物流会社である「順豊(SFエクスプレス)」、「申通(STO Express)」、「圓通(YTO Express)」、「中通(ZTO Express)」、「百世(Best Express)」、韻達のうち、順豊以外の5社がアリババ傘下に入ることになる。

アリババが韻達株の取得に意欲的なのは、自社の物流戦略を強化するという理由だけでなく、ライバルに応戦する意図があると思われる。近頃、中国三大ECサイトのうち直販EC大手「京東(JD.com)」は傘下に物流会社「衆郵快逓(Zhongyou Express)」を設立しており、共同購入型EC「拼多多(Pinduoduo)」はインドネシアの宅配最大手「J&T Express(極兔快逓)」と提携に至ったとも言われている。物流分野で勢力拡大を狙う三つどもえの戦いは早くも幕を開けているのだ。

うわさの真相は?

アリババの物流事業はすでに並外れた規模に成長しており、傘下の物流プラットフォーム「菜鳥網絡(Cainiao Network)」がそれを統括している。物流業界で天下統一を目指すアリババだが、いまだに韻達を傘下に収めきれていないのはなぜか。

アリババの物流企業への出資、各社の公表データを元に36Krが作図
注:雲峰基金(YF Capital)とアリババが百世の株式26%を保有、菜鳥とアリババが圓通の株式17.63%を保有

この買収の成否を決めるのは韻達側の態度だ。情報に通じた人物によると、韻達は創業者とその一族が経営権を握るファミリー企業だが、物流大手の中でも健全な成長を続けており、利潤やキャッシュフローも申し分のない数字を保っているという。

とはいえ業界内の競争激化と新型コロナウイルスの打撃により、韻達の態度に変化が生じる可能性は十分にある。今年2月の配送サービス事業の売上高は前年同期比26.48%減少となる8億9700万元(約136億7000万円)で、1件当たりの売上高も同15.17%減の3.02元(約46円)となった。さらに2019年末から今に至るまで韻達の市場シェアの伸びは頭打ちとなり、成長をもたらす新たな突破口の開拓が急がれている。

そもそも両社は事業において依存し合っている。現在、「通達」系と呼ばれる物流大手(申通、圓通、中通、韻達)では業務の7割以上がEC関連だ。拼多多が驚異的な追い上げを見せているものの、荷物取扱数では依然アリババが上回っており、これら物流会社とアリババとの間には強固な依存関係ができあがっている。順豊と京東はそれぞれ単独で強大な物流システムを構築している。

今後新たな脅威となり得るのは、拼多多が大部分の配達をJ&T Expressに委託した場合だ。通達系の物流企業に大きな影響が及ぶのは必至なため、アリババとの関係強化が防衛策になると考えられる。

競争の行方は

現在、中国の宅配事業はアリババ系、京東系、順豊系、拼多多系が四分している。規模拡大を続けるアリババ、地方都市の開拓を進める京東、海外の物流企業を引き入れた拼多多、それぞれの思惑もからみ宅配業者によるEC案件争奪戦も過熱している。各社ともに虎視眈々とチャンスをうかがっているが、最後に笑うのは誰だろうか。

現時点でアリババはクラウドソーシングモデルを採用しており、巨額を投じて自前の物流体制を構築する考えは皆無だ。アリババが目指すのは物流を管理し事業者を動かす「OS(オペレーティングシステム)」としての役割だ。同社が出資する申通、圓通、中通および韻達と連携してスマート物流の基幹ネットワークを作り上げ、国内24時間、海外72時間以内に配達するという基本サービスを押さえた上で、最大限の運営効率向上とコスト削減を進めている。

物流各社の市場シェアの推移、画像は智氪研究院より

京東はEC売上高と荷物取扱数でアリババに大きく水をあけられているため、物流分野は負けられない戦いとなる。京東は傘下に物流子会社の「京東物流(JD Logistics)」を抱えるほか、「達達(Dada)」や衆郵快逓などとのクラウドソーシングモデルも確立しており、EC大手の中でも万全の物流体制を整えている。しかも自社ECの配送のみに満足することなく、外部の事業者向け、個人向け配送サービスや小口混載輸送などにも意欲を燃やしている。京東物流の王振輝CEOが過去に述べたところでは、2018年に外部向け配送サービスを開始して以来、個人向け配送事業の売上高が全体の40%にも上っているという。

拼多多とJ&T Expressによる戦略提携の可能性は、物流競争における新たな未知数となっている。拼多多はこれまでトラフィックを武器に物流コストを極限まで圧縮してきた。さらに送り状の電子化やJ&T Expressとの接触などから、アリババ傘下の物流会社からの脱却を果たそうとする野心が透けて見える。しかし海外から参入してきたJ&T Expressにとってコスト管理と物流インフラの整備は大きな障壁といえる。J&T Expressが短期間で中国全土に勢力を広げるのは至難の業だろう。

2020年、ECと物流を巡る戦いは新たなステージに突入した。アリババは今後も物流企業への出資という方法で勢力拡大を狙うのかもしれないが、京東と拼多多がひたひたと追い上げている今、その歩みを速める必要に迫られている。
(翻訳・畠中裕子)

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