米テスラ、アリババ「天猫」に世界初出店 中国市場はコロナ不況下の救世主になるか

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米電気自動車(EV)大手テスラは4月16日、アリババ系の大手ECプラットフォーム「天猫(Tmall)」への出店を発表した。テスラがサードパーティーのプラットフォームへ旗艦店を出すのは中国初、いや世界初だ。

「テスラは天猫に出店するとはいえ、車を販売するわけではない」とテスラの関係者は語る。テスラの直販方針は変わらず、テスラ車を購入できるのは公式サイトのみだが、天猫旗艦店で試乗予約を申し込むことは可能だ。

テスラ天猫旗艦店のホームページ:天猫サイトのスクリーンショットより

テスラの天猫旗艦店には、リモコンキー、インテリアキット、パフォーマンスペダル、車載緊急対応セット、携帯電話の高速充電接続プレートなど、現在販売されている車用にカスタマイズされた専用アクセサリーが販売されている。最も売れているのはクルマの形をしたモデル3用リモコンキーだ。テスラの言い方を借りれば、アフターサービスから専用アクセサリーまで、クルマのライフサイクル全体をオンライン化したというわけである。

テスラ、中国化への旅

写真:テスラのウェイボー公式アカウントより

テスラ側は、OTA(Over the Air、ワイヤレス通信を経由してのデータ送受信)でアップデートすれば、車内でオンライン麻雀やトランプを楽しんだり、「YOUKU(優酷)」や「ビリビリ動画(bilibili)」の配信動画にコメントを送れるようにもなるという。中国の若い消費者の注意を引くために、テスラは「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」や「抖音(Douyin、海外版TikTok)」などのソーシャルメディアプラットフォームに公式アカウントを開設したほか、テンセントの音楽配信サービス「QQ音楽(QQ Music)」と提携して音楽パーティーも開催した。

4月2日、テスラチャイナは公認テスラ・オーナーズクラブのオープンを発表した。テスラCEOのイーロン・マスク氏は、中国が最も重要なEV市場だと語る。同氏はテスラに中国的要素をいっそう盛り込みたいと考えており、見た目で完全に中国式の自動車を中国でデビューさせるのもアリだと言う。将来的にグローバル本社を中国に置き、CEOも中国人であるべきだとさえ考えているのだ。

テスラは製品でも中国の顧客に配慮している。中国オリジナルモデルを開発すべく、2020年1月には研究開発(R&D)・デザインセンターを中国に開設、中国国内のデザイナーに参加を呼びかけた。

中国顧客のニーズをより満たすため、テスラは4月10日にモデル3のロングレンジRWDとパフォーマンスAWDの予約開始を発表した。中国国内工場で製造されたモデル3ロングレンジRWDは補助金込みで33万9050元(約512万円)、航続距離は668キロだ。

溺れる者は藁をもつかむ?

テスラの完成車工場で現在も稼働しているのは、現時点では世界で上海工場だけである。

2018年に公布された上海市の資料によれば、テスラの上海工場では当初、モデル3を年間15万台生産する計画だったが、その後、モデルYの生産プロジェクトが加わり、年間生産量を25万台に増やしている。モデルYは今年1月から生産が始まった。

世界中で市場が停滞している期間に、テスラは中国市場で過去最高の成績を達成している。

自動車市場予測サービスも行う英調査会社「LMC Automotive」の調べでは、中国でのテスラの新車登録台数は今年3月に1万2709台となり、2月の2314台から約5.5倍に跳ね上がった。また中国「乗用車市場信息聯席会(CPCA)」のデータによると、テスラは同月、中国で1万160台を販売し、中国市場への参入以来、単月で最高の販売台数を記録し、中国におけるEV販売台数の約25%を占めたという。

モデル3 ロングレンジRWDのオーダーシート:テスラのアクセサリーサイトTesmanianより

4月10日に発表されたモデル3 ロングレンジRWDのオーダーも急上昇している。テスラアクセサリーのウェブサイト「Tesmanian」によれば、ロングレンジRWDの予約開始から24時間を待たずに2万件を超える注文が入り、1分間で10件成約したこともあったという。

テスラ対外事務副総裁の陶琳氏は、テスラの上海ギガファクトリーは今年の生産目標15万台の早期実現に向け、現在フルパワーで稼働しており、今年中に前年比36%増の50万台以上を販売すると確信しているという。

テスラは中国化への道を勢いよく進んできたが、順風満帆だったわけではない。「低スペックスキャンダル」の嵐もまだ収まってはいないのだ。3倍補償請求訴訟でテスラは「丹書鉄券(皇帝が臣下の罪を許す約束を交わした書面)」を失い、既存の自動車メーカーもEV化へのシフトを加速し始めている。テスラからすると、獲得したアドバンテージをいかに強化するかが、現時点での最優先事項かもしれない。
(翻訳・永野倫子)

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