宅配ロッカー「豊巣」の有料化で不満殺到 ライバル「菜鳥」にはチャンスか

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中国の宅配ロッカーが無料で利用できた時代は終わろうとしているようだ。

4月30日、宅配荷物の一時預かり用ロッカーを運営する「豊巣科技(Hive-box)」が有料の会員サービスを正式にリリースした。価格は月額5元(約75円)、3カ月プランは12元(約180円)だ。サービス内容には7日間無料の宅配荷物保管と、豊巣の宅配ロッカーから荷物を送る際に利用できる5元(約75円)のクーポン、その他提携企業と合同の特典(動画サイトの会員価格が割引になる等)が含まれている。

これまで豊巣の宅配ロッカーは無料で利用でき、保管期間が長くなった場合ユーザーは任意で「投げ銭」を支払うことができた。しかし5月から豊巣は保管荷物に対し料金を徴収することにした。普通のユーザーは無料で荷物を保管できる時間が12時間に短縮され、超過後は12時間ごとに0.5元(約8円)、最大で3元(約45円)の保管料がかかる。法定休日は時間数に加算されない。

この新しい料金制度に対し、消費者から批判が相次ぎ、波紋が広がっている。

どうしても利益を上げたい豊巣の思惑

「有料化は避けられないだろう」とある宅配企業関係者は話す。

任意の投げ銭から厳格な時間ごとの料金徴収へと、豊巣は綿密な会員管理を進めようとしているようだが、実のところより大きな狙いは増収だ。以前、宅配ロッカーの主な収益源は配達員だった。豊巣の場合、料金はロッカーの大きさによって0.2元~0.6元(約3円~9円)だ。

通常、荷物の配達は「配達員が引き受けー受取人に連絡ー自宅へ配達ー受取完了」という流れだが、実際は受取人に連絡がつかなかったり、自宅に不在だったりという不確定要素がある。宅配ロッカーはこれらの問題を解決すると同時に配達員の配送効率を上げることができるため、配達員は自腹で宅配ロッカーを利用しても、より多くの荷物を配達することで利益を上げることができた。

配達員の給料は基本給と荷物の配達、集荷分の歩合から成る。市場シェア争いのため宅配企業各社は価格競争に突入しており、荷物1件あたりの利益に影響が出ている。配達員もその影響は避けられない。

前出の関係者によると、現在荷物1件当たりの配達料はわずか0.8元(約12円)で、さらに減少する可能性があるという。配達員の収入が下がれば宅配ロッカーの収益にもしわ寄せがいき、ロッカーを運営する企業は別の収益源を探るしかないというわけだ。

その点で、消費者向けサービスから収益を上げるというのは確かに有効な方法である。豊巣は綿密な会員管理を通してユーザーのアクティブ度を向上させ、サービス収入を得るだけでなく、会員以外の利用者には迅速な荷物の引き取りを促し、数に限りのある宅配ロッカーの回転率を高めることで収入を上げることができる。

(写真:豊巣公式サイト)

菜鳥駅站にはチャンスとなるか

豊巣には有料化以外の選択肢がないが、消費者は違う。

4月29日、アリババや複数の物流企業が出資している宅配物の代理受取サービス「菜鳥駅站(Cainiaoyizhan)」は今後も無料で荷物の保管サービスを行うと発表した。宅配ロッカーと菜鳥駅站はこれまでもライバル関係にあったが、以前はスマート宅配ロッカーが時間や設置場所の利便性やセキュリティの面から急速に発展してきており、菜鳥駅站の発展に打撃を与えていた。豊巣が有料化した現在、今後はより多くの消費者が菜鳥駅站を利用することになるだろう。

実際のところ、豊巣の有料化は菜鳥駅站だけでなく同様に荷物の無料一時預かりサービスである「快宝駅站」「百世隣里」「媽媽駅站」などにとってもチャンスとなるだろう。

「駅站(荷物の一時預かりサービス)」には小規模の商店やスーパーなどと提携して一時的に荷物を預かるものから、学校のキャンパスや地域コミュニティの敷地内に店舗を構え無料で荷物の一時預かりを行うものまであり、各種のサービスを合わせて行うことで利益をあげている。例えば菜鳥駅站は荷物の預かりや紛失の際の補償など宅配便に関するサービスだけでなく、荷物を送ったり、共同購入やクリーニングなどのサービスも行っている。

新型コロナウイルスの影響で、非接触サービスが生活の各方面に浸透してきた。宅配ロッカーはその代表的な例だ。豊巣がネット上で行った調査によると、4月13日時点で同社の荷物受取りサービスを利用することに同意したユーザーは8200万人を超え、回答者の98.5%を占めたという。現在豊巣は全国110余りの都市で2億人以上のユーザーに非接触での荷物受け渡しサービスを提供している。

これは、消費者が新型コロナウイルス流行期間中に新しい荷物の受取り方法に慣れたことを意味するが、この新しい習慣はそこまで強固なものとはいえず、「無料」の方がユーザーに与える影響は大きいはずだ。

豊巣が市場をほぼ独占している宅配ロッカーと違い、駅站の設置密度はまだ余裕があり「多ければ多いほどいい」という状態だ。宅配ロッカーと駅站にはどちらもより適したシーンがある。例えば都市部にある社区には宅配ロッカーが適しているし、農村などには駅站の方が適している。

注意すべきなのは宅配荷物や宅配ロッカーに関連する法律では「配達員は受取人の意向に沿って配達する」と規定されているにも関わらず、なお大量の荷物が無断で宅配ロッカーや駅站に届けられていることだ。宅配ロッカーが有料化すれば「宅配荷物は必ず自宅まで届けるべきか」という問題が再燃するだろう。

(翻訳・山口幸子)

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