米アップル、中国ECイベント「618セール」に初参加 スマホ価格戦争に巻き込まれる懸念も

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今年の「618セール」(6月18日前後に行われる中国ECサイトのスーパーセールイベント)に、アップルの直営店が参加することがわかった。同社が中国のECセールに参加することを公式発表するは初めて。

また、アップルの直営店と販売代理店の間で価格競争が起きている。6月1日の時点で、アリババ傘下の「天猫(Tmall)」内のアップル直営店のiPhoneの販売価格は、「京東(JD.com)」の代理店よりも高かったが、2日後には直営店の方が安くなっていた。

iPhone 11の128GBモデルの価格比較。左がTmallの直営店、右が京東の代理店

EC販売を強化するアップルの課題

新型コロナ禍でオフラインの販売が減ったため、アップルはオンライン販売に期待を寄せている。しかし、米国企業ならではのトラブルが起きている。

米中貿易摩擦により、中国の消費者の一部は米国製品のボイコットを呼びかけている。また、ライブコマースなどでiPhoneを宣伝すると、コメント欄が炎上する事態も発生している。そのため、iPhoneの代わりに中国国産のスマホを検討する消費者が増えてきた。

また、スマホ大手のファーウェイ、シャオミ(小米、xiaomi)、「OPPO」、「vivo」の各社はすでに5Gスマホを発表しているが、アップルはまだ5G対応機種に関して公式な発表をしていない。市場調査会社の「Counterpoint Research」は、2020年の中国市場では5Gスマホが販売台数全体の40%を占めると予想しており、そのほとんどが中国国内メーカーの販売になると思われる。

新型コロナ禍の影響で落ち込んだ個人消費の回復も順調ではない。4月、中国でのiPhoneの販売台数は390 万台と、3月の150万台に比べ160%も増えたが、IT調査会社IDCのWill Wong氏は、これまでiPhoneを購入していた消費者の一部が、すでに割安な国内メーカーに興味を向けていることを指摘した。

市場全体が回復していないなか、販売数を増やすには膨大な数の消費者を持つECを強化するしかない。海外ブランドの中国のECでの販売サポートを専門とする「WPIC」のデータによると、Tmallのアップル直営店の4月の売上高は前月比40%増の1.276億ドル(約137億円)となり、iPhoneの売上高は同33%増の8000万ドル(約86億円)以上となった。この数字からも、アップルの販売戦略の変化が伺える。

販売代理店との関係の悪化

アップルと中国の販売代理店の関係にひびが入ったのは、2018年にiPhone XR/XSが発売された頃だ。この機種はiPhoneの中でもっとも高価なだけでなく、中国では米国よりはるかに高い価格で販売された。例えばiPhone XS Max 512GBモデルは米国で1499ドル(約16万円)、中国で12799元(約19万円)と、約26%もの開きがある。

そのため、中国の販売代理店は2018年12月から値下げに踏み切った。まずはEC大手「拼多多(Pinduoduo)」でのiPhone XS Max 512GBモデルの販売価格が、すべての割引を適用すると8099元(約12万円)となり、「蘇寧(Suning)」、京東、Tmallでもまもなく同様のセールが行われた。

過去十年間、アップルは販売代理店に、発売から1カ月以内の値下げを許可したことがなく、無断で値下げをすれば懲罰的な措置を取るほどだった。しかし、新機種があまりにも高すぎるために許可せざるをえず、アップルが絶対的な優位を誇っていた代理店との力関係も微妙に変化してきた。

価格設定のミスに気づいたアップルは、下取りキャンペーンの期間を延長し、また、小売部門最高責任者で、ティム・クックCEOの後継者の有力候補と見られていたアンジェラ・アーレンツ氏が会社を去ることになった。その後発表されたiPhone 11は、XRより1000元(約1万5000円)も安くなったのである。

しかし、代理店との力関係が変わったという事実を変えることはできない。販売チャネルの開拓も代理店任せだったため、アップルは販売チャネルの見直しをも迫られている。今年のECセールに直営店が参加したのは、販売チャネルを自社でコントロールしようという試みである。アップルの販売体制に、大きな変化が起きようとしている。

(翻訳:小六)

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