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中国で6月18日に行われるECサイトの大型セールに新たな火種が加わった。
アリババが「淘宝直播(タオバオライブ)」に続く2つめのライブコマースプラットフォームとなる「淘宝特価版直播」を、618セールに合わせてリリースする予定であることが分かった。これは中国初の工場直営ライブコマースプラットフォームで、現在リリースに向けて内部テスト中とのこと。
内部テストに参加しているあるユーザーが36Krに提供した画像によると、アプリ上ではこの新サービスの告知に大きくスペースが割かれており、ライブコマースへのリンクがトップページに設置され、ユーザーはそこからライブコマースのページへ入れる。
ライブコマースのページでは「メーカー直販」が強調され、ノーブランド商品が多くを占めている。業界関係者によると淘宝特価版のライブコマースで販売される商品の多くはメーカーの余剰在庫品で、中小メーカーの在庫圧力を緩和するのに役立つと期待される。618セールはメーカーにとって、新型コロナウイルスの影響で失った体力を取り戻す絶好の機会だ。
淘宝特価版直播は淘宝直播と大きな違いはなく、ユーザーはライブ配信を見ながら直接商品を注文できる。
淘宝特価版がライブコマースに乗り出すのは、バージョンアップしたプラットフォームの位置付けと関連している。新しくなった淘宝特価版は「工場直売品」に特化しており、この事業はタオバオのC2M(Customer-to-Manufactory)事業部が統括している。
新たな方向性が打ち出されたことで、淘宝特価版が誕生して以来存在していた疑問への答えも明らかになってきた。淘宝特価版と、タオバオの共同購入サービス「聚劃算」や農村部の商品を扱う「農村淘宝」など地方都市に関わる一連のサービスやプラットフォームは事業範囲が重なる部分が多く、それぞれの違いは何かという疑問だ。現在では淘宝特価版がC2M分野を主とした工場製品の直売、聚劃算は有名ブランドの地方市場への展開、農村淘宝は県城(県政府所在地)レベル以下の小都市と協力し地元の製品を販売する点で違いが明確になった。
淘宝特価版は、アリババが持つ各種の工場リソースを統合しつつある。社内ではタオバオの特売サイト「天天特売」に参加しているC2M工場、中小企業向けB2Bプラットフォーム「1688商家」に登録している工場などのリソースを集め、社外では貿易企業を新たなリソースとして開拓している。4月にアリババは同社の「春雷計画(アリババのデジタルリソースを活用した中小企業支援プロジェクト)」に基づき、輸出向け商品を手掛ける工場に対し国内販売への転換を支援する10項目の方針を発表している。
工場リソースを統合した効果は明らかだ。バージョンアップしてから2カ月で、淘宝特価版へ出店する工場直売店舗は50万軒を超えた。4月にはプラットフォームに参加する輸出向け商品製造工場の数が前四半期比30%増となり、売上高は前四半期比300%増となった。アリババの決算報告にも初めて淘宝特価版が登場し、同社がこの分野に全面的に力を入れていく姿勢を反映している。
タオバオ系のECサイトと輸出向け商品製造工場はともに成長への圧力を背負っているという点で一致している。アリババの決算報告によると、2020年3月31日までの12カ月間の年間アクティブユーザー数は7億2600万人となり、2019年12月31日までの12カ月間と比べて7200万人増加した。また、月間アクティブユーザー数(MAU)は前年同期比1億2500万人増の8億4600万人となった。
アリババのアクティブユーザー数は依然として大きな成長を遂げているが、ライバルも背後から距離を詰めつつある。「拼多多(Pinduoduo)」の2020年3月31日までの12カ月間の年間アクティブユーザー数は6億2800万人に達し、アリババとの差は1億人だ。現在の拼多多の成長速度からすると今後1年以内にアリババに追い付くことも難しくはない。アリババと拼多多のユーザー重複率は90%を超えており、淘宝はC2Mを武器にライバルとの差別化を図りたい考えだ。
アリババの地方市場に対する全体戦略は次第に明らかになってきた。ブランド品の地方市場での販売を拡大する一方で、地方市場においてサプライチェーンとなる工場資源の統合を加速している。この機会を利用して同社のクラウドサービス「阿里雲(アリババクラウド)」、物流プラットフォーム「菜鳥網絡(Cainiao Network)」、ネット銀行「網商銀行(MyBank)」などを工場へ提供し、より多くの企業をアリババの「経済圏」へ取り込み、さらに完成されたビジネスエコシステムを作り上げようとしている。
36KrはこれまでにいくつかのC2M関連の工場を取材している。C2M技術が比較的成熟しているのは日本だがコストが高い。中国のC2M工場は、技術面で依然として向上の余地があるうえ収益化まで時間がかかり、量産体制にも課題がある。C2Mビジネスに必要なのはサプライチェーンだけではなく、品質検査機関を統合する能力であり、それができて初めてノーブランド品が有名ブランド品と互角に戦える。実際のところ、有名ブランドと同等の品質検査をできる工場は極めて少ない。
多くの製造業界関係者は中国政府が打ち出している「供給側改革」の方針にバックアップされ、C2M市場が次第に成熟し、多くの企業が参入すると考えている。しかしC2Mが製造業の構造そのものを覆すのは難しく、それはB2Cの補足にしかならないだろう。悲観的にみると、C2Mは消費者側の需要によるものではなく、業態の転換を急ぐメーカー側の要望によるものだという現実もある。
このような環境下では、C2Mが短期間で成果を出すのは難しく、それはマラソンのように先の長い戦いになるだろう。しかしすでに成長に行き詰まる大手ECプラットフォームはどんな小さな機会も逃すつもりはなく、この分野における熾烈な戦いが続くだろう。
(翻訳・普洱)
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