京東と拼多多、家電大手「国美」へ計3億ドル出資 その仕掛け人が明かす両社の狙い

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中国家電販売店大手の「国美零售(Gome Retail)」は、1カ月強の間に資本関連で二度の大きな動きをみせた。EC大手「京東集団(JD.com)」は5月28日夜、国美に対する戦略投資を宣言し、国美が発行する新株予約権付社債(転換社債=CB)を1億ドル(約110億円)で引き受けると発表した。一方、ソーシャルEC大手「拼多多(Pinduoduo)」はこれに先立ち、4月19日に国美のCBを2億ドル(約220億円)で引き受けると発表したばかりだ。

今回の出資は、中国の投資機関「華興資本(China Renaissance)」で過去に無数の大型取引を成功させてきた立役者、王力行氏の主導により実現したものだ。王氏は現在、華興資本事業部の責任者であり、一次・二次市場(プライマリーおよびセカンダリーマーケット)における投資業務を全面的に担当している。王氏の部門は過去1年間で、「知乎(Zhihu)」のシリーズFでの資金調達に「快手(Kuaishou、海外版はKwai)」やバイドゥ(百度)を戦略投資家として引き入れたほか、「明略科技(Mininglamp Technology)」の二度にわたる40億元(約600億円)超の資金調達を支援するなど、数々の影響力ある資本提携を成功させてきた。

36Krはこのほど、国美に対する拼多多と京東の出資に関して王氏に取材し、「ニューノーマル」下における華興資本自身の投資スタイルの変化について話を聞いた。

ーーまずこの2件の出資に至った経緯を教えていただけますか。

「当社と国美は古くからの間柄だ。小売大手の国美には戦略的モデルチェンジについての強烈な願望があり、ニューエコノミー分野における各種の情勢変化にも注目し続けてきた。今年はじめ、国美が戦略的資金調達の本格スタートについて我々に持ちかけた際、ニューエコノミー分野の戦略提携パートナーを見つけ出す上で、資本提携が国美のバリューを引き出すのに適切だとの共通認識を持っていた」

「国美は従来型の実店舗での小売からビジネスを始めた企業であり、同社の戦略的価値は著しく過小評価されていたと我々は考える。同社の実店舗ネットワーク、10万人単位の従業員、1000億元(約1兆5000億円)を超える年間調達額など、いずれも希少かつ短期間では再構築できないリソースだ。また国美が今日抱えている課題は、大部分のオフライン小売企業と同様のものといえる」

「国美の目標は終始明確だった。つまり単なる財務上の出資者ではなく、戦略的盟友を引き入れるというものだ。実際のところ、今回の二度の資金調達規模はいずれも大きいとはいえないが、両社は国美との戦略的協力関係をより意識している」

ーー国美の提携先の選択肢に入ってくる「テックジャイアント」は少なくないと思われます。最終的に拼多多と京東を選んだのはなぜでしょうか。

「企業間の資本提携は往々にしてタイミングや戦略上の優先順位などと密接に関係しており、そこには必然性および一定の偶然性がある。拼多多は当初、低価格商品および知人同士の紹介を中心に大量のユーザーを獲得した。現在、同社のアクティブユーザーはすでに6億人を超えている。一方で京東はもとより家電領域での強力な蓄積があるが、国美と比較した場合、3C(コンピュータ、通信機器、家電)で強みを持つジャンルやブランド、価格帯などの面で一定の差がある。要するに、拼多多と京東は集客、サプライチェーン、物流の面で国美との戦略的協力関係を築けると考えたのだ」

ーーeコマース領域において、京東と拼多多は強力なライバル同士です。こうした関係は出資に影響を与えましたか。

「両社は確かに競争関係にある。だが3社は今回の出資においていずれも自社の獲得したいものに焦点を定め、ライバルということについては気に留めていなかった。これは各社が現実を重んじ、『大局』を見据え『広い視野』を獲得していることの表れといえる」

ーー市場の持続的な下振れという「ニューノーマル」を前に、華興資本自身の投資事業には変化が生じていますか。

「華興は投資事業を重要なポジションに据えており、起業家のための投資機関になることは、当社が創業以来受け継いできた理念でもある。これは投資機関が単に資金をやり取りする業者にすぎないという考えとは根本的に異なり、我々は企業パートナーの視点に立ち問題を考え、ニーズについて考察している」

「現在の状況からすると、新型肺炎との共存がビジネス界のニューノーマルになる可能性がある。この時期に、自社の弱点の補完に注力する中小企業、あるいは時機を捉えて業界統合を進める大手企業のいずれも新たな取引のチャンスをもたらしてくれるだろう。現在は投資機関がバリューを発掘し創出していく時期でもある。我々が観察するに、他社との資本提携により自社の目的を果たすのがより優れた手段だとの考えに至った企業も多い。現在も多くの投資案件が進行中だ」
(翻訳・神部明果)

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