中国国産DNAシーケンサー台頭 先行企業が過去最大の10億ドルを調達 コロナ対策にも貢献

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中国国産DNAシーケンサー台頭 先行企業が過去最大の10億ドルを調達 コロナ対策にも貢献

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5月28日、DNAシーケンサーの開発を手掛ける「華大智造(MGI Tech)」がシリーズBで10億ドル(約1080億円)を調達したことを発表した。リード・インベスターは「IDGキャピタル」と「Citic Private Equity Funds」が務めた。今回の調達額は中国の遺伝子解析分野では過去最大となった。

華大智造は深圳華大集団(BGI Group)の子会社として2016年に設立された。ライフサイエンスと医療ヘルスケア分野に特化し、DNAシーケンサーをはじめとする検査機器や試薬、消耗材などの研究開発・生産・販売を手掛け、医療・農業・ヘルスケア業界の顧客向けにデジタル化に関する設備とソリューションを提供している。同社は遺伝子解析業界の上流でコア技術によって独占市場へ切り込み、シリーズAでは2億ドル(約216億円)を超える資金を調達している。

中国国産DNAシーケンサーの台頭

従来、DNAシーケンサーの生産は海外企業に独占されてきた。そのため遺伝子解析を行う企業は価格面において大きな制約を受けていた。DNAシーケンサーやそれに付随する試薬の価格が上がると、遺伝子解析サービスの価格もそれに伴って変動していた。華大智造はこのような状況を打破し、臨床レベルのDNAシーケンサーの量産で世界第3位の企業となり、本当の意味での「中国国産」を実現した。

華大集団の共同創業者、汪建董事長は「これまで私たちは海外製の武器で海外企業と戦ってきたため、大きな制約があった。今は自分たちで開発したDNAシーケンサーという武器で戦えるようになった。これによって道具の面においては完全に主導権を握った」と語っている。

DNAシーケンサー生産への参入障壁は非常に高く、生化学や光学、流体力学、機械工学 、ソフトウエアアルゴリズムなど多岐にわたる学問分野を高度に融合する必要があり、どれか1つが欠けても高品質な解析結果を出すことはできない。華大智造はゲノミクス企業「Complete Genomics」を買収して以降、研究用の高価な大型DNAシーケンサーを改良し、臨床ニーズに合わせて軽量化を図ってきた。

この過程で、華大智造はDNAシーケンサーのコア部品の国産化を徐々に実現した。現在、華大智造は毎年新機種をリリースし、様々なグレードのシーケンサー製品のラインアップを揃えている。

華大智造は強力な研究開発能力に支えられている。同社のデータによると、従業員約1000人うち研究開発スタッフが4割以上を占めている。特許の累計出願件数は740件を上回り、同社のDNAシーケンサーが生み出したデータは36ペタバイトを超え、これまでに投入した研究開発費は50億元(約760億円)以上となっている。

スウェーデンのカロリンスカ医科大学にも導入

グローバルな遺伝子解析市場の規模が急速に拡大するにつれ、華大智造も急速な発展を遂げた。現在、同社の事業範囲は39の国家と地域に拡大し、顧客企業は530社を超えている。

華大智造は「より多くの企業が中国国産のDNAシーケンサーに基づいたプラットフォームを開発し展開することによって、産業チェーン全体が充実し、オープンな産業エコシステムが構築されていく」という理念に基づき、引き続き遺伝子解析のエコシステムを構築し、解析コストを低減し、遺伝子解析技術によりアクセスしやすくしていくと表明している。

新型コロナウイルスとの闘いに貢献

次世代シーケンサーによるメタゲノム解析分野の蓄積により、華大智造の機器は今年2月以来、新型コロナウイルスとの闘いにおいて重要な役割を果たしてきた。同社が他の機関と共同で武漢に設立した新型コロナウイルス専門の検査施設「火眼実験室(Huo-Yan Laboratory)」は核酸検査の所要時間を大幅に短縮した。同社は中国国内の感染状況が効果的にコントロールされた後、設備、経験および技術者を世界各地へ送り届け、他国の感染対策を後押ししている。

武漢に設立した新型コロナ検査施設「火眼実験室

同社は新型コロナウイルスとの闘いに役立つ3種類の装置を提供している。

まず、ハイスループット全自動ウイルス核酸抽出装置は核酸検出能力を大幅に向上させた。火眼実験室に配置されているのは華大智造のハイスループット全自動ウイルス核酸抽出装置MGISP-960およびMGISP-100で、これらの装置は1日当たりの検査能力を2万件以上に引き上げた。現在、火眼実験室は理論上1日平均10万サンプルを超える検査が可能なレベルに達している。

次に、同社のDNAシーケンサーは研究者が新型コロナウイルスの解読と研究を行うのをサポートし、ワクチンと特効薬の研究開発を加速した。

最後に、同社の遠隔超音波診断ロボットはリモートで診察を行い、医者と患者の交差感染を防ぐ。遠隔超音波診断ロボットは2月中旬以降、複数の医療機関で試用されている。先ごろ、この遠隔超音波診断システム(MGIUS-R 3)は、中国国家薬品監督管理局(NMPA)の承認を得て発売が決定した。

(翻訳・普洱)

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