赤字続くも1年で8億ドルの投資 美団創業者が新興EVメーカーを有望視する理由とは

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赤字続くも1年で8億ドルの投資 美団創業者が新興EVメーカーを有望視する理由とは

ビジネスメディア「晚点(Latepost)」によると、新興EVメーカーの「理想汽車(LEADING IDEAL)」が、シリーズDでの5.5億ドル(約600億円)の調達について交渉を進めているという。生活関連サービスプラットフォームの「美団点評(Meituan Dianping)」がリードインベスターとして5億ドル(約500億円)を投資し、理想汽車の李想CEOが3000万ドル(約32億円)を出資するという。

ロイターの報道によれば、理想汽車は昨年8月に美団の王興CEOから3億ドル(約300億円)を調達し、その後まもなくIPOを申請した。IPOでは5億ドル(約500億円)を調達する予定だったが、新型コロナ禍と「瑞幸咖啡(Luckin Coffee)」の不正会計などにより、上場の予定を先延ばしにせざるを得なくなったという。そのため、公開市場のかわりに、プライマリーマーケットで資金調達を行う運びになったのである。今回の資金調達が順調に進めば、美団とその系列企業は理想汽車の20%以上の株式を保有することになる。

新興EVメーカーのほぼすべてが資金不足に悩まされているが、理想汽車だけは資金が潤沢にある。そこにさらに美団からの巨額な資金が加わるということは、同社が事業規模の拡大に向けて準備を進めていると考えてよいだろう。

美団・王興CEOの判断

インターネット企業が新興EVメーカーに投資する例は珍しくなく、バイドゥ(百度)、アリババ、テンセントはそれぞれ「威馬汽車(WM Motor)」、「小鵬汽車(Xpeng)」、「蔚来(NIO)」に投資している。しかし、美団のように事業の相乗効果が期待できないにもかかわらず、数度に渡り巨額な投資をするのは異例である。

美団は2017年にモビリティ事業部を立ち上げ、ネット配車事業に乗り出したが、この事業を重要視しているとは言い難く、2019年5月からは自社でネット配車を運営することを停止し、プラットフォームに徹するようになった。

したがって、美団が理想汽車への投資によって、自社の自動車関連の事業を拡大させようとしているとは考えにくい。同社の従業員が筆者に語ったように、美団ではCEOの王興氏以上に自動車産業を知悉している人物がいないため、理想汽車への投資は、王氏が個人的にEVや自動運転の将来に期待しているためだろう。

理想汽車の方針転換

理想汽車は新興EVメーカーのなかでは設立が比較的遅く、資金調達で他社より遅れを取ることになり、そのため設立当初よりコスト抑制に取り組んできた。今年4月、李CEOが取材で語ったところによれば、同業他社が赤字に苦しむ中、理想汽車だけはキャッシュフローのプラスを実現しているという。これも低コスト戦略の賜物だろう。

しかし、コスト抑制のマイナス面も無視できない。新興EVメーカーのなかで、自動運転に向けた投資額は理想汽車が最少である。小鵬汽車は中核となるチップ以外はすべて自社開発で、蔚来は米中両国に自動運転開発チームを持ち、センサー技術以外は自社開発となっているのに対し、理想汽車の自動運転開発チームの規模は50人弱であり、多くの面で立ち遅れている。

この差を埋めようと、理想汽車は新たな技術開発工程表を発表した。それによると、同社は2021〜2022年にかけてL3の自動運転技術を保有し、2023年にL4の自動運転が可能な新車種「X01」を発表、2024年頃には自社の市販車にOTA(Over the Air、無線通信でソフトウェアを更新すること)する形で、L4の自動運転を普及させることを目標に掲げている。

この工程表を現実のものにするため、理想汽車は低コストの方針を転換し、自社開発に取り組み始めた。2カ月前に車体開発チームの人員削減を行った同社は、このほど自動運転開発チームで200人を新規採用する予定だと発表したのである。

理想汽車の開発費が一気に増えることは間違いなく、この施策の業績への影響を軽減させるには、販売台数を増やしていく必要がある。ライバルの蔚来は中国国内に125店舗を持ち、月3000台以上を販売しているが、理想汽車の販売店は19店しかない。それゆえ、販売体制整備のための支出もかさむようになるだろう。

自動車産業は大量な資金が必要な業種であり、かつ強力なライバルがひしめいているため、スタートアップにとっては困難を極める業界だ。理想汽車のような低コスト戦略を維持してきたメーカーでも、必要不可欠な投資を迫られている。王興氏と美団の資金面でのサポートは強力だが、理想汽車が競争に勝ち抜くためには、開発を急がなくてはならない。

(翻訳:小六)

原文はこちら

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ビジネスメディア「晚点(Latepost)」によると、新興EVメーカーの「理想汽車(LEADING IDEAL)」が、シリーズDでの5.5億ドル(約600億円)の調達について交渉を進めているという。生活関連サービスプラットフォームの「美団点評(Meituan Dianping)」がリードインベスターとして5億ドル(約500億円)を投資し、理想汽車の李想CEOが3000万ドル(約32億円)を出資するという。

ロイターの報道によれば、理想汽車は昨年8月に美団の王興CEOから3億ドル(約300億円)を調達し、その後まもなくIPOを申請した。IPOでは5億ドル(約500億円)を調達する予定だったが、新型コロナ禍と瑞幸咖啡(Luckin Coffee)の不正会計などにより、上場の予定を先延ばしにせざるを得なくなったという。そのため、公開市場のかわりに、プライマリーマーケットで資金調達を行う運びになったのである。今回の資金調達が順調に進めば、美団とその系列企業は理想汽車の20%以上の株式を保有することになる。

新興EVメーカーのほぼすべてが資金不足に悩まされているが、理想汽車だけは資金が潤沢にある。そこにさらに美団からの巨額な資金が加わるということは、同社が事業規模の拡大に向けて準備を進めていると考えてよいだろう。

美団・王興CEOの判断

インターネット企業が新興EVメーカーに投資する例は珍しくなく、バイドゥ(百度)、アリババ、テンセントはそれぞれ「威馬汽車(WM Motor)」、「小鵬汽車(Xpeng)」、「蔚来(NIO)」に投資している。しかし、美団のように事業の相乗効果が期待できないにもかかわらず、数度に渡り巨額な投資をするのは異例である。

美団は2017年にモビリティ事業部を立ち上げ、ネット配車事業に乗り出したが、この事業を重要視しているとは言い難く、2019年5月からは自社でネット配車を運営することを停止し、プラットフォームに徹するようになった。

したがって、美団が理想汽車への投資によって、自社の自動車関連の事業を拡大させようとしているとは考えにくい。同社の従業員が筆者に語ったように、美団ではCEOの王興氏以上に自動車産業を知悉している人物がいないため、理想汽車への投資は、王氏が個人的にEVや自動運転の将来に期待しているためだろう。

理想汽車の方針転換

理想汽車は新興EVメーカーのなかでは設立が比較的遅く、資金調達で他社より遅れを取ることになり、そのため設立当初よりコスト抑制に取り組んできた。今年4月、李CEOが取材で語ったところによれば、同業他社が赤字に苦しむ中、理想汽車だけはキャッシュフローのプラスを実現しているという。これも低コスト戦略の賜物だろう。

しかし、コスト抑制のマイナス面も無視できない。新興EVメーカーのなかで、自動運転に向けた投資額は理想汽車が最少である。小鵬汽車は中核となるチップ以外はすべて自社開発で、蔚来は米中両国に自動運転開発チームを持ち、センサー技術以外は自社開発となっているのに対し、理想汽車の自動運転開発チームの規模は50人弱であり、多くの面で立ち遅れている。

この差を埋めようと、理想汽車は新たな技術開発工程表を発表した。それによると、同社は2021〜2022年にかけてL3の自動運転技術を保有し、2023年にL4の自動運転が可能な新車種「X01」を発表、2024年頃には自社の市販車にOTA(Over the Air、無線通信でソフトウェアを更新すること)する形で、L4の自動運転を普及させることを目標に掲げている。

この工程表を現実のものにするため、理想汽車は低コストの方針を転換し、自社開発に取り組み始めた。2カ月前に車体開発チームの人員削減を行った同社は、このほど自動運転開発チームで200人を新規採用する予定だと発表したのである。

理想汽車の開発費が一気に増えることは間違いなく、この施策の業績への影響を軽減させるには、販売台数を増やしていく必要がある。ライバルの蔚来は中国国内に125店舗を持ち、月3000台以上を販売しているが、理想汽車の販売店は19店しかない。それゆえ、販売体制整備のための支出もかさむようになるだろう。

自動車産業は大量な資金が必要な業種であり、かつ強力なライバルがひしめいているため、スタートアップにとっては困難を極める業界だ。理想汽車のような低コスト戦略を維持してきたメーカーでも、必要不可欠な投資を迫られている。王興氏と美団の資金面でのサポートは強力だが、理想汽車が競争に勝ち抜くためには、開発を急がなくてはならない。

(翻訳:小六)

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