時価総額でアリババ超えのテンセント、快進撃はどこまで続くのか

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ここ最近、テンセント(騰訊)の株価と時価総額がますます上昇している。株価は6月24日に500香港ドル(約6940円)の天井を突破して以降、7月9日には終値559.5香港ドル(約7740円)の新高値をつけ、史上最高値を更新した。2020年初めから現在までにテンセントの株価は累計で40%以上上昇しており、今年最安値からの上げ幅は63%に達している。

時価総額は7月3日時点で5兆香港ドル(約69兆4000億円)を突破し、香港市場におけるアリババの時価総額4兆7400億香港ドル(約65兆8000億円)を超え、中国A株のスター企業・酒造大手の貴州茅台(Kweichow Moutai)の2.4倍、IT御三家の一つである百度(バイドゥ)の15.2倍に達した。

株式市場の活況とゲーム事業の飛躍

テンセントの株価上昇は、マクロ環境の影響によるものであると同時に、同社自体の事業成果によるものでもある。

マクロ環境では市場のムードが好転している。海外では米国市場が活況を取り戻し、ナスダック総合指数も最高値を更新した。株価指数の上昇に伴い、ほぼ全ての中国概念株が急激に値を上げ、上げ幅は50%以上となった。

企業経営面ではゲーム事業の急成長がテンセントの株価上昇を後押しする要因となっている。新型コロナウイルスによって巣ごもり経済が拡大する中、テンセントのチームストラテジーゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」、バトルロイヤルゲーム「和平精英(Game For Peace)」とその海外版「PUBG MOBILE」、アクションシューティングゲーム「使命召喚(Call of Duty)」などのモバイルゲームが好調で、売上記録を更新し続けている。米調査会社「Sensor Tower」が発表した2020年上半期の全世界モバイルアプリランキングによると、PUBG Mobileが世界最高売上を達成し、王者栄耀が第2位にランクインした。

データ:SensorTower

株価は今後も上昇するか

ユーザーアクセス数から見るとテンセントの優位は薄れつつある。モバイル調査会社「QuestMobile」の「2020年中国モバイルインターネット春季レポート」によると、2020年3月時点でテンセント系アプリの利用時間はネット全体の43.2%を占め、前年同期比では2.4%減となった。これとは対照的に「今日頭条(Toutiao)」と「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」の利用時間が大幅に増加している。これはユーザーの興味がショート動画とライブ配信に移っていることを意味する。テンセントはいくつかのチャンスを失ったが、全体的に見れば企業規模が大きいため、影響は限定的だ。

データ:QuestMobile

長期的に見ると今後のテンセントの株価上昇には2つの制約がある。

1つめはテンセントの主要売上がゲームに頼っているため、ゲームの認可番号発行に影響を受けることだ。過去2年間、認可申請に対する引き締めはテンセントの株価に大きく影響を与えてきた。

2つめはテンセントの業績の一部が投資収益によるものであるため、企業としての投資能力とアクセス数による収益化能力(投資した企業へアクセス数増加をもたらすこと)がどれくらいあるかだ。将来的に投資状況が悪くなれば業績も一定の影響を受けるだろう。しかし、現在のところテンセントの投資は比較的成功している。

テンセントのゲーム事業の成否は、短期的には新型コロナウイルス流行による思わぬ恩恵と新ゲームのリリース、中長期的には海外進出にかかっている。ある国際投資アナリストは、海外進出は中国のゲーム企業が市場シェアを拡大する重要なチャンスだと述べている。いくつかの大手ゲーム企業の売上の2割程度はすでに海外市場によるもので、この割合は引き続き上昇している。多くの海外企業は所有するゲームタイトル(IP)を中国企業へ提供してモバイルゲーム化を進めている。この流れが投資家に自信を与えている。

テンセントの決算報告によると2019年第4四半期には海外市場におけるゲーム売上の比率は23%に達している。

テンセントにはゲーム以外にも決済、クラウド、デジタルコンテンツなどの優良事業がある。前述の国際投資アナリストによると、投資家は中期的には決済事業への期待を示している。決済業界のトップ2社間の競争は緩和されつつあり、利益率も改善してきている。長期的にはデジタル化の流れの下で、クラウド業務は引き続き規模が拡大しており、テンセントは現在市場シェア第3位につけている。デジタルコンテンツの分野では、投資家がテンセントの事業統合と新事業開拓に注目している。先ごろ実施された電子文学プラットフォーム「閲文(China Literature)」の人員整理や、現在進行中だとされるゲーム実況プラットフォーム「虎牙(HUYA)」と「闘魚(DOUYU.COM)」の統合などがそれに該当する。

2004年の上場以来、テンセントの株価は16年間で740倍以上になった。創業から22年を経た今もなお、テンセントは市場に新しい価値を提供し続け、バイトダンス(字節跳動)などの新たな競合相手とも渡り合っている。今後のテンセントの市場価値は、マクロ環境を除けばゲーム、決済、クラウド、デジタルコンテンツの統合によってどれくらい新しい事業価値を創り出せるかにかかっている。
(翻訳・普洱)

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