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中国では現在、コンピュータビジョンを手掛ける企業が次々と台頭している。AI分野のユニコーン企業として知られる「商湯科技(センスタイム)」と「曠視科技(メグビー)」もコンピュータビジョンを主軸業務としている。
今回36Krが取材した「久訳科技(Jiuyi)」は、AIソリューションとディープラーニングアルゴリズムが専門だ。同社は2018年に設立され、レーザースキャンとインテリジェントビデオ分析(IVA)を融合させた技術を中核に据え、顔認識やビデオセグメンテーション、群衆密度のモニタリングなど多岐にわたる独自技術を用い、交通、観光および政府関連事業向けに総合モニタリングシステムや交通事故防止システムなどを提供している。
久訳科技は、昨年の新中国成立70周年閲兵式に顔認識による総合分析システムを提供した。現在の顧客は北京市順義区政府や故宮博物院、北京地鉄(Beijing Subway)など。今年は新型コロナウイルスの流行を受け、開発期間わずか1カ月で高精度・低価格の赤外線サーモグラフィー装置を開発している。
久訳科技はソフトウェアとハードウェアを組み合わせたソリューションを手掛け、主軸製品として2シリーズのエッジコンピューティングデバイスを提供している。スマート撮影設備「叮咚」シリーズからは、デプスカメラとディープラーニングを組み合わせた公共交通機関の旅客流動調査用ソリューション「叮咚計数」およびレーザースキャナーとカメラを組み合わせた防犯モニタリングソリューション「叮咚周界」をリリース。スマートボックス「刺猬」シリーズは、通常のデジタルカメラに直接接続することで、エッジコンピューティング機能を備えたスマートカメラとして利用することができる。
久訳科技の裴中陽CEOは「エッジコンピューティング用機器は設置に時間がかからず安価な上、アフターケアも便利だという特長がある。今後は業界の主流になると考えている」との見通しを示している。
裴CEOは同社の製品の強みについて「当社の主軸製品は、レーザースキャナーとカメラを組み合わせることでモニタリング精度を高めている。レーザースキャナーが異常を発見すると、カメラに指示を出し、対象となる人や物を追跡撮影する。スモッグや夜間などの悪条件でも対応できる上、通常のデジタルカメラに欠けている人体の3Dモデルデータ解析機能を補える」と述べた。
久訳科技のもう一つの強みは、各業界の各シーンにおけるニーズに合わせたカスタマイズだ。ワンストップ型のサービスにより製品の機能を可能な限り最適化している。新中国成立70周年閲兵式のためにカスタマイズした顔認識総合分析システムでは、通常の顔認識機能を弱め、総合的な動作や感情の識別を主な機能として盛り込んだ。この機能が閲兵式部のニーズに合致し、同業他社のソリューションよりも優れていると評価された。裴CEOは「当社の強みは簡素化されたアルゴリズムを運用できることと、個別のニーズに柔軟に対応できるカスタマイズ製品にある」と述べている。
裴CEOは、同社は今後「レッドオーシャン+ブルーオーシャン」戦略を取っていくと説明した。
「レッドオーシャン」とは、熾烈な価格競争が始まっている市場を指す。すでに単純なアルゴリズムは低価格化し、簡単な顔認識アルゴリズムは無料になっている。久訳科技も製品の性能保証を前提に価格を抑え、一定の条件を満たした場合には無料提供することで市場競争を展開する。「ブルーオーシャン」とは、AI技術の利用が進んでいない市場を指す。同社はまず核心となる課題を把握し、課題を解決に導くカスタマイズされたソリューションで市場シェアと先行者利益の獲得を目指すという。
ネット調査機関「iiMediaResearch」のデータによると、2018年のマシンビジョン分野の市場構成では、セキュリティ業界が67%のシェアを占めていた。セキュリティ業界はコンピュータビジョンの主な活用シーンでもある。コンピュータビジョン技術は金融や交通、小売などの分野でも活用されている。一方、老人福祉や観光地の運営などに対応するソリューションは成熟していない。これらの分野が久訳科技の狙う「ブルーオーシャン」だ。裴CEOは、これらの業界には規模の大きさ、ニーズの明確さ、技術を汎用的に利用できる、という三つの特徴があるとの見方を示す。
裴CEOは「当社は今後、AI分野の大手企業とは異なる市場をターゲットに差別化を図っていく。われわれが選択したのは一般的な利用範囲の『広さ』ではなく、細分化された分野における『深さ』だ」と述べている。
久訳科技は現在、技術開発、知的財産権の取得、マーケティングに充てるため、新たな資金調達計画を進めている。
(翻訳・田村広子)
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