中国、単光子測定可能なセンサー技術を強化、自動運転や空間3Dスキャンにも活用

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中国、単光子測定可能なセンサー技術を強化、自動運転や空間3Dスキャンにも活用

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中国の光センサーチップメーカー「霊明光子(Adaps Photonics)」の技術が注目を集めている。光の粒子(光子)1粒でも検出できるSPAD(Single Photon Avalanche Diode、単光子検出ダイオード)チップやセンサーを手掛けており、このほど数千万元(数億円)のシリーズA1投資を獲得した。共同創業者兼CEOの賈捷陽氏によると、今回の調達資金は一般用dToFイメージングチップなどの技術強化、製品拡充に充て、自動運転や空間3Dスキャンなどの注目分野にも利用可能な単光子測定技術をさらに発展させる考えだ。

霊明光子は2018年5月に創業、深圳市南山区の本部のほか、米国シリコンバレーにR&Dセンターを設ける。主として高効率なSPAD型の大規模集積チップを研究開発しており、現時点でSPADチップの中核技術であるシリコン光電子増倍器(SiPM)、次に一般向け電子製品に使用されるSPADイメージセンサー(SPADIS)および光子による距離測定技術、dToFを活用したトータルソリューションの2分野の事業を展開している。

室内の360度dToF SLAMモデリング図および実際の部屋の写真

SPADイメージセンサーは、現在のデジタルカメラに使われる通常のイメージセンサーと違って、光子1粒でも検出、増倍器によって比較的大きな電気信号を出力できる。雷や自動車衝突といった一瞬の現象を高速撮影する場合に有効で、光子による距離測定技術と組み合わせると3D空間スキャンや自動運転に欠かせない車間距離測定などにも活用できる。

これらの中で霊明が強みを持つのはToF(Time of Flight)型と呼ばれる距離測定技術。同社の3Dセンサーでは、レーザー光の飛行時間を直接測定できるdToF(directToF)型LiDARを採用している。一般的なiToF型(indirect ToF)LiDARでは、発射信号および同信号が被測定物体で反射して受光部に帰還するまでの位相差を測定することで、出射レーザーの飛行時間を間接的に計算しているが、dToF型LidarはiToFに比べ相対的にシンプルで消費電力も低く、精度も高い。またイメージングのレベルも高く屋外での利用により適している。だが現実的には、dToFはiToFに比べ実現がはるかに難しい。dToFにおいて検出するのがレーザー光そのものであり、低い消費電力と高い時間的精度が求められるなか微弱な反射光を検出する必要があり、検出器の性能要求が非常に高いためだ。dToFで一般的な検出器がSPADであり、このSPADがdToFの性能を直接的に決定づけている。

霊明光子のSiPM実物写真および他社製品との性能対比

今年年初めに米アップルが発表した2020年版iPad Proには、dToFモジュールを採用したLiDARスキャナーが搭載されている。フランスの調査会社Yole Développementは、dToF機能を搭載したスマートフォンが今年だけでも世界で1億7300万台出荷されると予測する。

霊明光子のコアコンピタンスは、SPADのコアテクノロジーと製造プロセスを有している点にある。同社が発明したナノフォトニクスによる捕捉技術が検出効率を大幅に引き上げ、その一方でコストや時間的精度はもとの水準を保っている。検出効率の高さがセンサーによる検出距離の向上にもつながっている。

「現在、市場にみられる既存製品の多くでは7%前後の単光子検出効率しか実現できていない。一方、我々の製品では12%に達しており、実験室の指標はすでに20%を超えている。このデータは国外有数の学術誌に発表済み」と賈CEOは話す。

霊明光子は同社のコアテクノロジーをもとに、シングルポイントおよび1×16の規格のシリコン光電子増倍管(SiPM)も開発し、LiDARが直面している検出距離の不足、消費電力やコストの高さ、既存の電気回路との共通性の低さといった問題を解決している。同社によると、霊明光子のSiPM製品の光子検出効率は既存の市販品の2~3倍に達しており、LiDARの検出距離を50%引き上げる一方で、システムの消費電力を大幅に引き下げることが可能だという。現在、同社のSiPM製品はすでに量産・販売されており、市場や顧客のフィードバックに応じて第3世代までバージョンアップされている。

今回の資金調達情報が伝えられると、同社は解像度規格が80×60ピクセルおよび160×120ピクセルのSPADISチップおよび同チップを搭載したスマートフォン用dToFモジュールを発表した。このモジュールは30FPS(フレームレート、コマ/秒)以上のリアルタイムdToF画像が実現でき、モバイル端末のアプリケーションにおけるdToF性能要件をほぼ満たし、精度は誤差1%以下に達しており、すでに顧客のテスト段階に入っている。2021年には製品化が実現する見込みだ。

霊明光子の室内360度にわたるdToF SLAMモデリング点群データ。同社の製品は現時点で1辺が10m以上の複雑な室内における高精度な3Dモデリングが可能であり、ディテールの再現能力にも優れ、机の上の細かな物品も識別できる。

Yole Développementが発表した「3Dイメージング&センシング2020」レポートの予測によると、2019~2025年の3Dイメージング・センシング市場の規模は50億ドル(約5400億円)から150億ドル(約1兆6000億円)に増加し、年平均成長率は20%を超えるとのこと。また2025年には、3Dセンシング用ToFモジュールの年間出荷量は6億8000万件に達し、3Dセンシング市場全体の約6割を占めるという。

霊明光子は海外から帰国した博士号保有者により創設された。30名以上の社員のうち10名は有名校で博士号を取得しており、半導体業界で15年以上の経験を有するベテランだ。中心メンバーは集積回路、SPAD画像センシング技術、半導体サプライヤー管理、製品運営などで豊富な経験があり、過去にマイクロソフト、エヌビディア、テスラ、STマイクロエレクトロニクスおよびオーストリアのAMSなど世界トップクラスのテック企業や半導体関連企業で勤務してきた。

(翻訳・神部明果)

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