生活関連サービス最大手「美団」が組織再編、食料品の共同購入ECをさらに強化

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生活関連サービス大手の「美団点評(MEITUAN)」は、今年に入ってから「同一市内小売」(生活用品・食料品を注文客の近くの倉庫やスーパーなどから短時間で配達するサービス)を強化している。その最新の動きとして、同社は7月7日夜に組織構造の改編を発表。新たに「優選事業部」を立ち上げ、住宅地の食料品団体購入を中心とする「美団優選」業務を始めることになった。

今回の改編後、美団の組織構造は下図のように、2つの事業群、3つの事業部、6つのプラットフォームからなるものになる。美団優選を一つの事業部として独立させたことから、同社が当該事業を重要視していることがわかる。

公表された資料をもとに36Krが画像を作成

組織構造の改編後、美団の同一市内小売における戦略はより明確になった。北京、上海、広州、深圳といった一級都市では自社運営のEC「美団買菜」を展開し、武漢、成都、南京などの二級、三級都市では野菜市場の運営代行を行う「菜大全」、その他の地方都市は美団優選という棲み分けの体制になる。完全自社運営もあれば、プラットフォームに徹することもあり、地域ごとの特色に合わせた柔軟な戦略だと言える。

美団優選のビジネスモデル

年間4.5億のユーザーが美団を利用しているが、その利用の多くがフードデリバリーとホテル予約だ。地方都市のユーザーはデリバリーよりも自炊することが多いため、美団の利用率はそれほど高くない。そこで、美団は地方都市で食料品の購入サービスを強化し、団体購入という低価格を実現できる形で、所得が比較的低い地方都市のニーズに応えようとしているのである。

美団優選はまもなく済南で内部テストを開始し、住宅地ごとに住民のなかから「団長」と呼ばれる団体購入の担当者を募集する予定だ。団長は担当エリアのSNSグループを作り、新規ユーザーの獲得や、セール情報の発信を行う。獲得したユーザーの数と売上高によって、団長に一定の手当が支給されるが、金額や条件面の詳細はまだ不明である。

同業他社は団体購入した商品を団長に送るのが一般的だが、美団優選は住宅地にあるコンビニに配送する形を取る。購入者は注文した次の日に、近くのコンビニで商品を受け取る形だ。

このビジネスモデルで問われるのは、美団のサプライチェーンマネジメントや物流の実力である。同社がこれまで食料品のサプライチェーンを自社運営したのは、北京、上海、広州、深圳の大都市においてのみであり、ノウハウをそのまま地方都市に横展開できるかは不透明だ。仮にサプライチェーンを一から構築するとなれば、物流や倉庫のコストが大きくかさむことになる。

それでも、食料品ECを手掛けるスタートアップと比べれば、美団の強さは明らかである。同社はトラフィックの獲得が他社より容易であり、コストも安い。これまで培ってきた、技術、アプリの運営、配送スタッフの管理などのノウハウも美団優選に生かせる。団体購入の規模が十分ならば、物流面のコストもカバーできるだろう。

同一市内小売における美団の展望

美団は昨年から、同一市内小売を重要事業に据えていた。美団買菜は昨年、北京、上海、深圳すべてでサービスを開始し、北京では前線倉庫(住宅地に近い場所に設置される小型の倉庫)を60カ所持つに至っている。

しかし、前線倉庫モデルを採用している生鮮食品EC専門の「每日優鮮(Missfresh)」が、未だ黒字化できていないことからすると、一級都市以外で前線倉庫のモデルを維持することは困難だといえる。そのため、美団は二級、三級都市では野菜市場の運営代行を中心に展開してきており、実際この事業は昨年200%の急成長を記録した。今年第1四半期の財務レポートによれば、新型コロナ禍の影響もあり、当該事業を所管する「美団閃購」の売上高は前年同期比4.9%増の41.7 億元(約630億円)となり、美団の全事業のなかで唯一成長した事業となった。

オフラインの小売市場は巨大だが、生鮮食品を始めとした食料品のEC化はそれほど進んでいない。そのため、今年に入ってから、アリババ、「京東(JD.com)」も同一市内小売のモデルで攻勢をかけている。それだけに、美団がこの競争に勝ち抜くことの意味は大きい。同社はフードデリバリーやホテル予約に強みがあるが、それ以外の収益事業がないのである。トラフィックの獲得や配送スタッフの確保は美団にとって問題ではないが、サプライチェーンマネジメントはまだまだ不十分だ。美団買菜、菜大全、美団優選と、どのビジネスモデルを採用するにしても、強力なサプライチェーンの構築が、美団の最重要課題である。

(翻訳:小六)

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