niko and …中国で初のライブコマース実施 数秒でTシャツ3万着を完売

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niko and …中国で初のライブコマース実施 数秒でTシャツ3万着を完売

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日本のカジュアルファッション専門店チェーンを展開する「株式会社アダストリア(Adastria)」傘下のブランド「niko and…(ニコアンド)」は、昨年12月21日に上海の中心地、淮海路に中国大陸初の旗艦店をオープンし、毎日長蛇の列が出来るほどの大盛況となっていた。しかし、誰も予想しなかった新型コロナウィルス感染症の拡大により、小売業は甚大な打撃を受けた。ニコアンドも影響を受けてはいるが、コロナ期間中でも通常営業を維持できていた。今後大きく変化していくであろう、中国マーケットにおいて新たなビジネスモデルの構築が必要となってくる。

今回、アダストリア中国のマーケティング&Eコマース事業を統括する小澤隆行氏に、その詳細を聞いた。

アダストリア中国のマーケティング&Eコマース事業を統括する小澤隆行氏

中国市場に合うマーケティング施策

出店している上海の商業施設のデベロッパーから閉店の指示がなかったため、ニコアンドは店舗内、販売スタッフの手の消毒や体温検査などを徹底的に実施し、通常営業をしていた。来客数は繁盛期と比べるとだいぶ落ちたが、それでも来店客が一日数十人〜数百人いたという。

「おかげさまで、開業当時は予測を大きく超える売り上げが達成できた。コロナ期間中は客足が減少したが、それを利用して店舗整備やスタッフの研修に時間をかけることができた」と小澤氏は説明した。

日本商品のブランド力は今の中国でも依然として強いものの、中国の消費習慣の変化やローカルブロンドの台頭などにより、激しい市場変化に追いつけずに、中国市場から撤退した日系会社も少なくない。先に中国進出を果たしたアダストリア傘下のもう一つのブランド「コレクトポイント(Collect Point)」はその一例だ。さらに、いつも引き合いに出される、中国で大成功を収めた無印良品もここ数年、成長の勢いが衰えてきている。

前述のような状況の中、ニコアンドはそういった変化に常に対応できるように心がけているという。小澤氏は、中国の環境は日本と異なるので、同じことをやっても絶対成功しないと考え、普段中国人スタッフと一緒にいるように意識している。今の中国の若者の間では、何がトレンドで何が話題なのかを、常に彼らから聞き、考えて吸収している。また、初の旗艦店を成功させるために、去年夏から会社の取締役まで上海駐在となっているという。

具体的な施策としては、ニコアンドは進出後まもなくテンセントのソーシャルツールWeChat(微信)のミニプログラムを開設した。また、中国最大のECプラットフォーム、アリババの「天猫(Tmall)」への出店も早い段階で決め、6月に試営業を開始した。中国のローカルファッションブランド(中国語でいう「潮牌」)とのコラボ商品やイベントも積極的に行うなど、「日系メーカーができていないところ」にも工夫をこらしている。

ライブコマースの成功で日本の経営層に刺激を

ここ2、3年、中国で商品を販売するにあたって、「ライブコマース」は、無視のできない有力な販売手法の一つとなっている。ニコアンドの中国チームもそのトレンドを掴みライブ配信による商品販売を実施しようと考えた。そして最終的に、「口紅王子」の異名を持つ中国トップKOL(インフルエンサー)のAustin(李佳琦)を起用した。彼はアリババのライブ配信プラットフォーム「タオバオライブ(淘宝直播)」で約2800万人のフォロワーを持っており、一配信で数十億円を売る超人気者だ。

同社の初めてのライブコマースであったため、検証目的も含め、ニコアンドの定番のロゴTシャツ3万枚の販売を想定した。Austin側は3万枚では少ないという意見もあったが、当社としても初の試みだったため、日本本部を巻き込んだプロジェクトとなった。

「中国のECはどれほど便利なのか、電子決済はどこまで進んでいるのか、日本にいる人間はそのエコシステムの強さを実感できないため、単一アイテムだけで3万着と聞いた時、本社はとても心配した。本社の協力の元、チャレンジすることが決まった」

ライブコマースの大きな特徴として、一回(短時間)で低価格(特別割引)で大量に売るということがある。そのため、在庫処理や広告費と考えて儲からなくともライブコマースで商品を販売する会社は多い。

ニコアンドのライブコマースでは、定価99元(約1500円)のTシャツを89元(約1300円)で販売した。一般的に割引率は30〜40%なので、それと比べ、かなり低い割引率で販売できた。小澤氏はその理由を、「上海の旗艦店の成功が交渉のよい武器となった」と説明。

今回のライブコマースの成功は、中国マーケットのパワーを新ためて知るいい機会となった。「日本本社の中国マーケットに対するモチベーションはさらに高まった」と小澤氏は語る。

実際の買い物体験を向上させながら、オフラインとオンラインを融合させるビジネス手法は今後間違いなく必要とされる。ニコアンドは、中国はまだまだ拡大のチャンスがあるだと考えており、今後も旗艦店戦略を継続する予定である。

小澤氏は「その前に、中国EC販売の本番、双11(ダブルイレブン)に向けてしっかり準備していこうと思う」と目を光らせた。

※双11とは、毎年11月11日に開催される、(アリババ主導の)中国EC各社が参戦するネット通販スーパーセールイベント。去年は、11日の1日だけで、天猫における取引額が2684億元(約4兆1800億円)に達している。毎年ファッションカテゴリの首位を飾るユニクロは、スタート16分後には取引額5億元(約78億円)を超えた。

(作者・Ai、編集・永井)

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