ファーウェイ、「半導体製造を手がけなかったことが残念」 秋発表の「Kirin1000」が最後の高性能チップか

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「大きく遅れをとっていたところから地道に追い上げ、世界をリードする立場になるまで十数年。ファーウェイが歩んできた道のりは険しいものだった」

ファーウェイのコンシューマー事業部CEOの余承東(リチャード・ユー)氏は8月7日に開催された「中国信息化百人会(China Info100)」でスピーチを行い、ファーウェイの独自OSや半導体などの業績について語った。

米国は半導体チップに狙いを定め、新たな輸出規制を打ち出した。ファーウェイ傘下の半導体メーカー「ハイシリコン(海思半導体)」が設計する「Kirin」シリーズは「台湾積体電路製造(TSMC)」が製造を請け負っていたが、この追加制裁により取引は困難になる。クアルコムやブロードコムなどの米国企業から調達することもできなくなった。国内メーカーである「中芯国際集成電路製造(SMIC)」はチップ製造技術において、いまだ大きく後れをとっている。このような状況の中、少し前にはファーウェイが台湾の「MediaTek(聯発科技)」に1億2000万枚のチップを発注したと報じられ、2021年新型「P50」シリーズに搭載されるとの見方も出ている。

「非常に残念でならないのは、ファーウェイが半導体チップの設計のみを行い、製造を手がけていなかったことだ」。余氏は、今秋に「Kirin1000」を搭載した新機種「Mate40」をリリースすることに言及し、「これが高性能チップKirinを搭載した最後の機種になるかもしれない」と語った。

さらに半導体産業全体が、設計、材料、製造、工程、実装などの面でさらに成長するべきだと呼びかけた。「強い決意と資金さえあれば、何事も不可能なことはない」

余氏は、今年第2四半期にコンシューマー事業部のスマートフォンが世界トップシェアとなったことを明かし、それが新型コロナウイルス流行の影響によるものだと述べた。「もし米国の制裁がなければ、ファーウェイの昨年の市場シェアは他社を大きく引き離して圧倒的トップを奪うはずだった。しかし制裁の影響で、昨年のスマートフォン出荷台数は6000万台も減少した。今年の出荷台数はさらに落ち込むと思われる。今年に入って半導体チップをめぐる新たな制裁が加わり、チップの供給がストップしているため、今年のスマートフォン出荷台数は2億4000万台を割り込む可能性がある」

人々が米中貿易戦争だ、制裁だと騒ぐ中、今こそ自社のエコシステムを構築し、基礎となるシステム能力を固めていくべきだと、余氏は語る。さらに制裁措置により苦しい局面にある事実を認めつつ、産業の高度化を進めるよう突き動かされるという意味ではチャンスでもあると述べた。

またファーウェイは独自のオペレーティングシステム「Harmony OS(鴻蒙OS)」を開発し、さまざまなデバイスに搭載することを表明している。余氏の語ったところでは、将来的にはIoTの各分野でHarmony OSを利用できるようになるといい、そのために大量のアプリケーションに接続するノースバンドインターフェースと、分散型デバイスに接続するサウスバンドインターフェースを作り上げて、未来型のエコシステムを構築する必要があるとした。

「米国は制裁措置により同国製チップを我々に供給しないばかりか、米国企業のエコシステムを我々が使用することも禁じた。しかし、それは独自プラットフォームであるHMS(ファーウェイモバイルサービス)を大々的に推し進める結果となった。さらにHMSのオープンソース化を進め、全世界でP40シリーズを発売した。HMSはすでに幅広く搭載されており、ファーウェイ独自のアプリストア『AppGallery』は世界三大ストアに数えられている。目指すところは中国のアプリだけでなく、世界のアプリ、全世界のエコシステムを支えることだ」

さらに幾十もの開発キットを作り上げ、エコシステムの進化を図っていると語り、エコシステムのグローバル化を目指していることを明らかにした。現時点で配信されているアプリは数万を数え、月間アクティブユーザー(MAU)は5億2000万人に達しているという。「米国の封鎖を突破して、このエコシステムで世界のリーダーになることができる。我々は毎月、毎週、いや毎日のように改良を加えている。大量のアプリに加え、HMSキットのサポートやOS提供により、アプリの開発、統合、リリースが容易なため、これまでGoogleモバイルシステム(GMS)にしか対応していなかったアプリでも、数時間あればHMSへの移植が可能だ」とも語る。

余氏はスピーチの最後を以下のように締めくくった。「我々の構築したエコシステムが、中国企業また世界中の企業が収益を上げるための基盤になることを願っている。そして中国だけでなく欧州、日本、韓国などの企業が共にニューエコノミー時代のデジタルスマートプラットフォームを作り上げ、我々のエコシステムのさらなる発展および成熟を後押ししてくれるよう願ってやまない」
(翻訳・畠中裕子)

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