コスト・機能で勝る中国EVメーカー、なぜテスラに勝てないのか

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米EV(電気自動車)メーカー大手テスラの「モデル3」は今年上半期、中国国内で4万5000台を販売した。そのうち6月単月の販売台数は1万4954台で、新エネルギー乗用車の販売台数ランキング1位となった。これは中国のEV市場の販売総数の23%を占める。

「理想汽車(Li Auto)」の創業者・李想氏は、テスラの販売データに対して「航続距離、インテリジェント化、コストパフォーマンスの面で中国EVメーカーはテスラを追い越した。にもかかわらず販売台数では遠く及ばない」と語った。

「中国版テスラ」を目指す

2014年4月、テスラのイーロン・マスクCEOが初めて中国を訪れ、中国で初めて「モデルS」のオーナーとなった8人に鍵を手渡した。この最初のオーナー8人は社会的に成功している人たちで、多くが企業の管理職であり、その中には当時中古車情報プラットフォーム「汽車之家(Autohome)」の総裁で、後に理想汽車を設立した前出の李想氏も含まれていた。

テスラの進出をきっかけに中国国内には新興EVメーカーが次々と現れた。2014年半ばにはモバイルブラウザを手がける「UCWeb(優視科技)」の創業者の何小鵬氏が「小鵬汽車(Xpeng Motors)」を設立した。同年11月には自動車総合情報サイト「易車網(bitauto)」董事長の李斌氏が「NIO(蔚来汽車)」を、2015年7月には李想氏が理想汽車の前身となる「車和家(CHJ Automotive)」を設立した。

2014年前後に設立された新興EVメーカー 画像:インターネット

中国国内の名だたる企業家によって設立された新興EVメーカーは、例外なく「中国版テスラ」になることを目指してきた。これらの企業は6年あまりの見習い期間を経て、ようやく一人前になろうとしている。

テスラを超える

新エネルギー車にとって動力電池はコア部品で、完成車のコストの中で高い割合を占める。「私が最も心配するのはEVのバッテリーの劣化だ。NIOはバッテリーの永久無料保証と無料交換をおこなっており、その懸念を解消してくれた。私がNIOを購入した一番の理由はこれだ」とあるカーオーナーは語った。

現在NIOはオーナーに対して公共充電スタンド、移動充電車、バッテリー交換ステーションの3つのバッテリーサポートモデルを提供している。最新データによるとNIOは中国全土の58都市に131カ所のバッテリー交換ステーションを建設している。この数はテスラの「スーパーチャージャーステーション」には及ばないが、NIOのバッテリーサポートシステムが消費者のEV購入への懸念を大幅に低減しているのは間違いない。

もう一つの新興EVメーカー、小鵬汽車は常にテスラと競っている。昨年5月、何小鵬CEOは中国版ツイッター微博(Weibo)で「テスラが中国工場で生産したモデル3が32万8000元(約510万円、自動運転機能なし)というのは競争力がない。今は5年前とは状況が全く違う。我々と比べてテスラのバッテリーの優位性、インテリジェント化の差異はもうない。『P7』が発売されたら必ずテスラを圧倒する」と宣言した。

今年4月、小鵬汽車はスポーツセダンのP7を正式発表したが、そのハードウエアスペック、航続距離などはテスラを超えている。

小鵬汽車のスポーツセダン「P7」 画像:小鵬汽車公式サイト

小鵬のP7はスマートドライビングシステム「XPILOT3.0」を備えており、ハードウエアには5つの高精細ミリ波レーダー、12の超音波レーダー、14の車載カメラを搭載している。一方でテスラのモデル3は、1つの高精細ミリ波レーダー、12の超音波レーダー、8つの車載カメラを搭載している。

自動運転機能について小鵬は目論見書の中で、2021年初頭にリリース予定のXPILOT3.5で、ナビゲーションシステムによる高速道路での自動走行および先進的な自動駐車機能が追加される予定だと表明している。

バッテリーに関しては、小鵬のP7のエネルギー密度は170Wh/kgに達しており、航続距離は706kmとなっている。これはテスラの全車種を超えており、中国国内の純電気自動車としても最長の航続距離だ。

しかし、新興EVメーカーの中で最長の航続距離を実現したのは小鵬ではなく、レンジエクステンダーシステムを採用している理想汽車だ。「理想ONE」の動力性能は1.2T、バッテリー出力は240kWだ。レンジエクステンダーシステムはハイブリッドの一種で、バッテリーパックと発電用の小型エンジンを搭載している。

理想ONEの内部構造 画像:理想汽車公式サイト

給油、充電がともに満タンの状態で、理想ONEの航続距離は800kmに達する。この航続距離は、消費者の航続距離に対する懸念を大幅に低減できる。

テスラのブランド効果

あるテスラの営業担当は、モデル3が絶えず価格を下げていることが、多くの消費者をひきつける大きな要因の1つだと語った。モデル3の航続距離は445kmだが、短~中距離移動には十分だ。また長距離移動の際には、テスラのスーパーチャージャーステーションを利用することで問題をある程度解決できる。

これまでにテスラのスーパーチャージャーの設置数は中国国内で2300カ所を突破し、140あまりの都市を網羅している。2020年にはさらに4000カ所以上のスーパーチャージャーが設置される予定だ。

テスラが長期に渡って蓄積してきたブランドイメージに、マスクCEO自身の知名度も加わり、テスラが消費者をひきつける大きな要因となっている。

複数のテスラオーナーによると、テスラを購入する大きな理由は、テスラの技術的な優位性とブランドの影響力を信じているからだという。

「中国のEVメーカーは設立してからの時間が短く、技術的に未熟だ。テスラはブランドとしての認知度が高く、運転していても顔が立つ」と別のテスラオーナーは語る。またテスラオーナーの中には、熱狂的なマスク氏の信者で同氏をスターとして崇拝する人もおり、そのためにテスラを購入するオーナーもいるという。

テスラは販売台数で他ブランドをはるかにリードしている。それは主として技術力とブランド力によるものだ。今後、テスラの中国生産が進むにつれ、中国メーカーはさらに大きな打撃を受けるだろう。また、中国の新興EVメーカーがブランドを確立するにはまだ時間がかかる。しかし、新興EVメーカーの認知度が高まれば、いつの日かテスラの「覇者」の地位を脅かす日も来るかもしれない。(翻訳・普洱)

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