iPhone12発売延期のアップル、何でユーザーを引き留められるのか?

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米アップルの毎年恒例の新商品発表会が15日(現地時間)、オンラインで開催された。今回の発表会の主役はウェアラブル端末Apple Watchやタブレット端末iPadで、多くのファンが待ち望んだスマートフォンの新作iPhone 12は登場しなかった。理由は新型コロナ禍の影響によるサプライチェーンに混乱が生じたことで、当初の予定より数週間遅れの発表になるという。

過去5年、iPhoneがアップルの総販売額に占める割合は徐々に目減りしており、ピーク時の70%が現在では44%となっている。替わってウェアラブル端末や周辺機器が存在感を示すようになった。市場調査会社カナリスの調べでは、iPhoneの販売台数を100とすると、スマートウォッチApple Watchは49、ワイヤレスイヤホンAirPodsは14となっており、加えて同社のウェアラブル端末は高価格なため、利益で見ればさらに多くの割合を占めることになる。

ハードウェア製品の他に、今回の発表会ではフィットネスサービス「Apple Fitness+」や、複数の人気サービスを一つのサブスクリプションに統合した「Apple One」も発表され、今後はよりサービス事業に注力していくことが明らかとなった。スマートフォンでは5Gの導入で他社に後れを取っているが、ティム・クックCEOはユーザーの引き留めに自信を見せている。アップルがユーザーを惹きつける要素はハードウェアにはとどまらず、多様なサービスを提供することでユーザーのアップル離れを回避し、増収につなげられると考えるからだ。

クックCEOの指揮下でアップルは売上高、利益、時価総額ともに最高記録を更新している。時価総額では米国企業として初めて2兆ドル(約208兆円)の大台に乗った。 

サブスクに将来を賭けるアップル

IT専門調査会社IDCが携帯電話のグローバル市場について調べたレポートによると、2019年のスマートフォン出荷台数は全世界で前年比2.3%減の13億7100万台だった。 

スマートフォン市場の黄金時代は徐々に陰りを見せている。アップルも例に漏れず、昨年は「万年二番手」から陥落し、ファーウェイにその座を明け渡した。アップル製スマートフォンの世界市場シェアは昨年、前年比8.5%減の13.9%に落ち込んでいる。

米金融サービスMaxim Groupが2018年末に発表した調査結果によると、アップルは実際にユーザーのiPhone離れに直面している。同年、iPhoneユーザーの他機種への乗り換え率は5%から9%にまで上昇した。アップルが頼みの綱とする中国市場でも他機種への乗り換えが進んでいる。中国のモバイル市場調査会社QuestMobileのデータによると、2019年上半期、約46%のiOSユーザーが端末の買い替え時にAndroidへ移行しており、その数字は前年同期から2.6%増えている。

こうした問題点を意識してか、アップルは収益の軸足をコンテンツエコステムによるサービスに移している。実際、昨春の新商品発表会ではハードウェアは1点も登場せず、発表された商品のすべてがApple News+(ニュース)、Apple TV+(映像コンテンツ)、Apple Arcade(ゲーム)のサブスクリプションサービスと、独自のクレジットカードApple Cardだった。

アップルの事業は決定的なターニングポイントを迎えたといっていい。

しかし、自社でサービス体系を構築するほどアップルはリソースに恵まれているわけではない。音楽配信サービスApple Musicは目下、世界最大規模のコンテンツを有するサービスだが、香港の調査会社Counterpoint Technology Market Researchが音楽ストリーミング市場について行った今年第1四半期の調査報告によると、同市場で世界首位に立つのはSpotifyで課金ユーザー数のシェアは35%、これに次ぐApple Musicはシェア21%だ。

ニュースサービスApple Newsは米国・英国・豪州・カナダを合わせたMAU(月間アクティブユーザー)が1億人を突破している。また、動画配信サービスにおけるコンテンツ調達争いについては、Apple TV+が7000万ドル(約73億円)を投入してライバルのNetflixに競り勝ち、米映画「グレイハウンド」の配信権を獲得。これにより新規ユーザーを30%増やしている。

今年第3四半期、アップルのサービス事業は前年同期比15%増の売上高132億ドル(約1兆3800億円)に達し、iPhoneの売上高の半分にまで迫った。サービス事業の急成長はクックCEOにとっても満足いく成績だったようで、今四半期の決算後のカンファレンスコールでは、2016年(会計年度)から売上高倍増を目指すとした目標は6カ月前倒しで達成できたと報告した。今年はサブスクリプションサービスのユーザー数6億人を目標としているという。

Apple Oneパッケージ価格

今回の新商品発表会では改めて同社がサービス体系の強化を図ったことがわかった。複数のサブスクリプションサービスを一本化するApple Oneの月額料金は個人向けで14.95ドル(約1600円)、ファミリー向けで19.95ドル(約2100円)だ。 利用できるサービスは今後さらに増える可能性がある。Apple Oneのローンチによってよく多くのユーザーがサブスクリプションを利用するようになるとクックCEOは考えており、さらにユーザーの定着率を伸ばし、長期的な収益につながると期待している。

アップルが今後もサービス事業の強化を続け、エコシステムをさらに完全なものにし、自身の強みをより堅固なものにしていくなら、アップルのこれからの10年にも明確な道筋が示されたといってもいいだろう。

(翻訳・愛玉)

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