自宅のミラー越しにAIインストラクター、コロナ禍で進化する中国ホームフィットネス

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自宅のミラー越しにAIインストラクター、コロナ禍で進化する中国ホームフィットネス

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近年、台頭してきたホームフィットネスが、Covid-19パンデミックにより急成長を遂げている。ホームフィットネスのユニコーン企業、米「Peloton(ペロトン)」が2020年6月30日に発表した財務報告によると、同社は第4四半期に8910万ドル(約94億円)の利益を上げたという。

家庭用のスマートフィットネス機器を扱う米国メーカーには、ランニングマシンやフィットネスバイクのペロトン、ローイングマシン(ボート漕ぎ運動機器)の「Hydrow」、フィットネスミラー10万台以上を販売した「Mirror」などがある。このMirrorをベンチマークとして、中国では「myShape」が量産版スマートAIフィットネスミラーをリリースした。

myShape創業者の馮偉氏によると、この商品には3つの特徴がある。

・鏡面ディスプレイ:ディスプレイにはインストラクターの動画に加えて自分の全身を映し出せる。

・鏡面フィードバック:ユーザーは鏡の中でフィットネスコーチと自分の全身の動きの両方を同時に見ることができ、リアルタイムで動作や姿勢を調整しやすい。使い勝手がよく、達成感も得やすい。

・バーチャルインストラクター:フィットネスミラーに組み込まれた3Dディープラーニングカメラがユーザーの全身の3D運動データをリアルタイムでキャプチャし、間違った動きをその場で指摘する。

myShapeは国際的に有名なフィットネス機器ブランドと共同でAIフィットネスミラーの国際版をリリース、80カ国以上で販売を始めた。

この国際版では、myShapeがAIカメラ関連、AIフィットネス用ソフトウェア開発キット、AIフィットネスのコンテンツや制作プラットフォームを担当した。馮氏によると、中国国内版も国際版も既に大量生産を始めており、出荷台数は累計で数千台に達しているという。上海、江蘇省、深圳にサプライチェーンの拠点を置き、月生産台数は数万台に達するので、中国はもちろん世界各地からの注文に対応できる。

myShapeは2016年に上海で設立された。そのスマートフィットネスミラーは3Dモーションキャプチャテクノロジー、姿勢認識アルゴリズム、双方向性フィットネスコンテンツにより、自宅でも正確な指導を受けられるようにしている。前述の大手メーカーのほか、同社は半導体メーカー「MediaTek」、フィットネス機器メーカー「舒華体育(Shuhua Sports)」、テレビメーカー「創維(スカイワース)」などとも提携する。

ホームフィットネスに参入するスタートアップはmyShapeだけではない。2020年9月17日、米スマートフィットネスマシン「トーナル(Tonal)」が、シリーズDで1億1000万ドル(約110億円)を調達したと発表した。出資者は「Lキャタルトン(L Catterton)」、アマゾン「Alexaファンド」、NBAゴールデンステート・ウォリアーズのステフィン・カリー選手とロサンゼルス・クリッパーズのポール・ジョージ選手など。

中国では、四川省成都市に拠点を置くスマートフィットネス「Fiture(成都擬合未来科技)」も、ハードウェア+テクニカルAI+コンテンツ+サービスを組み合わせたホームフィットネスのオンラインレッスンを提供している。デバイスを購入すれば、幾多のフィットネスコンテンツを楽しめるのだ。

Fitureのフィットネスミラーには機器を壁面に設置して負荷をかけながらトレーニングを行うタイプと道具を使わずに行う2種類がある。どちらもディスプレイに表示されたビデオまたはライブでのレッスンを見ながらトレーニングを行う。

こうして見ていくと、多くの企業がミラー型を採用していることに気付く。myShapeの馮氏はフィットネスミラーのメリットについて、他の機器よりも没入感がある上、鏡で自分のフォームを確認できることと説明する。myShapeの強みは、スマートフィットネス業界に早くから参入したことだ。同社は、2017年に初代のAIフィットネスインストラクターをリリースした。4年に及ぶ改良とビッグデータの蓄積により、フィットネスアルゴリズムの精度は業界上位にランキングされるほど向上した。AI レッスンも数万回分を開発済みだ。

3D AIビジョンアルゴリズムを組み込んだmyShapeのフィットネスミラーは、カメラを介してリアルタイムでユーザーの全身の3D軌跡をキャプチャし、フォームが正確かどうかを随時指摘する。たとえば、インストラクターと同じ動きができているなら「すばらしい!よくできています」と声をかけ、ユーザーのモチベーションアップにつなげる。フォームがずれている場合、システムは音声で修正を促す。たとえば、ベントオーバーレイズなら、「体を前に傾けて」とか「腰から背中を真っ直ぐにキープして」といった具合だ。システムには、1500以上のトレーニングを備えた練習モードもあり、ユーザーは模擬練習でAIインストラクターからのアドバイスを受けつつ正しいフォームを学ぶ。

「フィットネスミラーでは、どのメーカーでも形態に大差はない。違いは、正確かつ優れた指導と没入感だ。『運動なんてしたくない』という人々をいかに攻略するかが業界の課題だが、ユーザーエクスペリエンスを向上させるだけでユーザーのスティッキネス(粘着性)は増大できる」とmyShapeの馮氏は指摘する。

中国のスマートフィットネス業界にはまだまだ発展の余地があるが、今はまだ有料ホームフィットネスを普及させるべく粘り強く市場を教育していかなければなるまい。馮氏は、Covid-19パンデミックをきっかけに大手メーカーがホームフィットネスマシン開発に参入し、業界の発展が加速することを期待している。(翻訳:永野倫子)


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