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ロイター傘下の金融メディア「IFR (International Financing Review)」は、中国大手ECサイト京東(JD.com)傘下の物流会社「京東物流(JD Logistics)」が2021年の新規株式公開(IPO)に向けて準備を開始したと伝えた。これにより同社の評価額は約400億ドル(約4兆1500億円)となる見込み。
同社はすでに協議を始めており、10~20%の株式を販売することで40~80億ドル(約4150~8300億円)を調達すると見られている。
京東は早くも2007年に物流システムの自社構築に着手しており、2012年には物流企業として正式に登記している。京東物流の設立は2017年4月25日。
京東物流の王振輝CEOは今年の8月、設立8周年の節目に全社員に宛てた社内メールでも「世界で最も信頼に値するインフラ企業を目指す」などの壮大なビジョンをしたためている。2020年第3四半期(7~9月期)の決算報告によると、同社の業績は確かに目を引くものがある。9月末時点で京東物流が運営する倉庫は800を超え、同社がインターネットを活用し管理する倉庫を含めると、倉庫の総床面積は約2000万平方メートルにも及ぶ。
今年のダブルイレブン(毎年11月11日に開催されるECセール)期間中、京東物流の取り扱い量は前年同期比で102%増加、個人向け宅配便、物流プラットフォーム、コールドチェーン(低温輸送網)の各事業でも同100%以上の成長を果たしている。
これまでも、物流システムの自社構築は京東が台頭してきた最大の要因とみなされていたが、上場することで同社がさらにその強みを拡大することは疑いようがなく、物流分野で積極的な動きを見せているライバルのアリババに対抗していくとみられる。アリババ傘下の物流技術会社「菜鳥(CAINIAO)」は自社配送は行わないが、同社の物流ネットワークを通して中国国内の宅配大手各社と協業し、宅配企業や関連企業に多様なサービスを提供している。菜鳥が現時点で所有する倉庫資源は中国21省、72都市を網羅し、総床面積は619万平方メートルに達し、大部分の宅配企業を超えている。
調査会社「艾媒諮詢(iiMedia Research)」のデータによると、2020年中国の宅配便取扱量は700億件に達する見込みだという。2015年~2020年の中国宅配企業の営業収入は年々増加しており、2020年も成長を続け、8000億元(約12兆6000億円)に達する見込みだ。今回の京東物流の上場に加え、以前報じられた京東傘下のヘルスケア企業「京東健康(JD Health)」上場のニュースも考慮すると、京東はECサイト京東(JD.com)、産業のデジタル化を手がける「京東数字科技(JD Digits)」、京東物流、京東健康の4社で事業拡大を進めていくようだ。
EC(電子商取引)の分野では、新興共同購入型EC「拼多多(Pinduoduo)」が地方市場開拓の先駆者だが、京東も地方市場開拓に力を入れている企業の一つだ。京東の第3四半期アクティブユーザーは前年同期比32.1%増の4億4160万人に達したが、新規ユーザーの80%は地方都市の新興市場によるものだ。決算報告書によると、京東物流のネットワークは中国本土を100%カバーしており、同社の上場によって京東は地方市場シェア争いの足場をさらに固めることができるだろう。
このほか、京東健康は香港証券取引所のサイトにヒアリング後の資料をアップロードしており、目標評価額は290億ドル(約3兆円)だという。また9月12日には上海証券取引所が京東数科の上場申請を受理しているが、アリババ系列のフィンテック企業「アント・グループ(螞蟻集団)」上場延期が発表されてからは、新たな情報はない。
(翻訳・山口幸子)
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