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カジュアルバーを全店直営方式でチェーン展開する「Helen’s(海倫司小酒館 )」が3月末、香港証券取引所に目論見書を提出した。順調にいけば、中国のバー業界から初の上場企業が誕生する。
2009年に創業したHelen’sは「夜のスターバックス」を目指すと公言してきた。昨年末時点で中国国内約80都市で351店舗を運営し、バー業界におけるシェアを第1位の1.1%としている。極度に分散傾向にある中国バー業界において、Helen’sがチェーン展開を成功させた鍵はどこにあるのだろうか。
切り札は「標準化」
Helen’sは昨年12月時点で中国全土に351店舗を展開している。一時的に代理店方式を採用していたが、現在は全店直営方式で高度な標準化を実現している。
東南アジアや中国の少数民族の要素を取り入れた店舗のインテリアや店内BGMなどは、本部が統一管理し、運営効率を高めている。また、新規出店にかかる期間を2〜3カ月程度に抑えるほか、わずか9カ月で店長を育成するシステムを制度化している。現時点で420人の店長を育成済みだ。
運営を標準化する上でデータは大きな鍵になる。Helen’sはBI(ビジネスインテリジェンス)システム「Future BIシステム」を自社開発し、ERP(統合基幹業務システム)CRM(顧客関係管理)システムと合わせ、データの統一分析・管理プラットフォームを構築。各店舗の売上や電気使用量のほか、天気やスタッフ配置、来店客などの状況もリアルタイムに把握し、その適切性を判断している。アクセスできるデータの範囲は、スタッフの職位などにより限定される。
全店舗のBGMを管理するのは5人のスタッフのみで、共通のミュージック・ライブラリーに収められた各曲目をテンポやムードを基準にタグ付けし、平日・祝日別や時間帯、客層など各店舗の状況に合わせて選曲・放送するシステムとなっている。
メニューは全店舗共通で、アルコール飲料24種、スナック8種、ソフトドリンク6種、その他の商品3種の計42種類となっている。しかし、メニューを高度に標準化したことでオリジナリティと柔軟性が犠牲になったという側面もある。顧客の多様なニーズに対応するという点では、独立運営されるバーには及ばない。
目論見書の2018年から20年にかけてのデータによると、「一線都市」と呼ばれる大都市での売上高が増加し続けているのはもちろんだが、1店舗当たりの売上高と1日の来店客数の成長率で、地方の中核都市「二線都市」やそれ以下の規模の地方都市「三線都市」が一線都市を上回っている。とくに三線都市に展開する店舗の来店客数が大きく伸びており、地方市場開拓の可能性が大きいことを示している。
Helen’sは、今後も地方市場での展開を継続し、三線都市およびそれ以下の地方都市への出店を増やす方針を明らかにしている。
「若者」をターゲットに
Helen’sの人気に最初に火を付けたのは中国で学ぶ留学生たちで、現在の主な顧客も18〜28歳の若者だ。感度の高い彼らを対象とするプロモーションでは、刺激と面白みを継続的に提供しなければならない。
Helen’sは若者をターゲットとするプロモーションを展開してきたが、中でも氷入りの大きなバケツにコーラとウイスキーを注いだ「コーラバケツ」は大きな話題を呼び、TikTokの本国版「抖音(Douyin)」では関連動画が延べ10億回以上再生された。また、テンセントの大人気SNSアプリ「微信(WeChat)」や中国版Twitterと呼ばれる「微博(Weibo)」にも同社公式アカウントを設けており、フォロワー数は計570万人を超えている。
同社は新規顧客獲得でインターネット企業の手法を踏襲してきた。初来店したユーザーは、QRコードをスキャンしてユーザーIDを設定すれば、ビールの無料提供が受けられる。WeChatの公式アカウントページからは、店舗検索やメニュー閲覧のほか、ECプラットフォームでの買い物などもできる。また、ユーザーの囲い込みにも取り組んでおり、ユーザーは利用しやすい場所の店舗を選び、その店舗のフォロワーグループに入ることができるようになっている。
ECと実店舗、フォロワーグループのように囲い込まれたコミュニティと抖音のように開かれたプラットフォームを全て連携させられれば、Helen’sのエコシステムは単なるバーを大きく超えたものになるだろう。
(翻訳・田村広子)
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