ペーパーレス政策に呼応 経費管理SaaS「易快報」にソフトバンクVFが出資

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ペーパーレス政策に呼応 経費管理SaaS「易快報」にソフトバンクVFが出資

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経費精算・管理のSaaS「易快報(Ekuaibao)」を運営する「合思信息技術(Hose Information Technology)」がシリーズDで10億元(約170億円)を調達した。出資を主導したのはソフトバンク・ビジョン・ファンド2で、セコイア・キャピタル・チャイナ、明勢資本(Future Cap)、曼図資本(Mandara Capital)、

タイガー・グローバル・マネジメントも参加した。
画像出典:易快報

経費管理自体は決して真新しいトレンドではない。2014年、業界のベンチマークである米Concur(コンカー)が独SAPに83億ドル(約9100億円)で買収されると、中国でも関連政策が同業界に恩恵をもたらしはじめた。中国政府は2015年11月に電子領収書が法的効力を持つと明確に示している。2016年には経費管理業界は「元年」を迎えており、易快報は当時すでに成功を収めていた。

上述の好条件が合わさって経費精算・管理ビジネスはブームとなった。2014年に立ち上げられた易快報もこれらを追い風に急成長し、2015年にはプレシリーズA、2016年にはシリーズAと順調に資金調達を行い、直近では2019年10月のシリーズCおよびシリーズC+で5000万ドル(約55億円)を調達している。

その後の2年間、同社ではさまざまな変化があった。

最も顕著な変化は組織の拡大で、従業員数は2019年の400人から700人に増加。創業者の馬春荃CEOによると、年内には1000人にまで増やすという。また組織再編も行い、支社を設立したほか、本社では二つの事業部を新設、大手企業から役員クラスの人材を多く引き抜いた。

最も重要な変化は事業上の変化だ。2年の間に、易快報は新たに二つのソリューションを生み出した。

一つ目は、証憑、帳簿、財務諸表など会計記録の管理を行う「易会檔」だ。従来の管理方法では保存コストや人件費がかさみ、偽造や改ざんが容易な一方で借覧は難しいという問題がある。加えて、比較的規模の大きい企業の場合は、部署ごとに異なる会計システムを導入していることでデータの孤島化が生じる問題も存在する。また、中国政府は近年、経済発展や企業管理のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を後押ししており、「カーボンニュートラルを目指す」とのビジョンの下、ペーパーレス化を推奨している。

上記を背景に、会計記録の電子化プラットフォームは企業の必需品となった。易会檔は、金蝶(Kingdee)、用友(UFIDA)など大手の会計ソフトにも対応し、領収書、画像、ファイルなどを電子証憑として保存できる。紙の資料の保管が不要になるほか、電子証憑によって業務の全プロセスが自動化されるのだ。

もう一つの新ソリューションは、経費申請のプロセスをなくす「無需報銷」だ。これまで事後に行っていた経費申請を「事前」に持ってくるもので、タクシー移動、出張、食事、オフィス用品の購買などあらゆる経費をワンストップで処理する。社員は専用サイト「合思商城」を通じて必要なものの手配や購入を行い、決済や伝票発行は企業側が行うため、経費を「申請」する中間プロセスが省かれる。

中でも、ECサイトのアリババ、オンライン旅行代理店のTrip.com(携程網)、オンライン配車サービスのDiDi(滴滴出行)など、業務上利用する頻度の高いソフトウェアを1カ所にまとめた専用サイトは重要な存在だ。このサイトを経由すれば、社員は不必要な消費はできず、費用の立て替えも不要で、経理担当者は領収書との突き合わせもしなくて済む。

今年、中国政府は電子領収書について「奨励」ではなく「必須」にするとの方針を表明した。1月からは「増値税専用発票」の電子化を全国で導入しはじめている。さらに、今後5年間の政策要綱「第14次五カ年計画」では「デジタル化の導入シーン」として、証明書・契約書・署名・領収書などを電子化させると明示した。(※編集部注:増値税専用発票とは、日本の消費税に相当する「増値税」を徴収するために税務局が発行する領収書。企業にとっては仕入れ税の控除を申請するための証憑となるため、税務局が発行枚数や限度額を厳しく管理している)

馬CEOによると、政策に促される形で業界標準が定まれば、顧客が過度な個別仕様を要求することがなくなり、製造元は製品の規格化を一層進められ、限界効果を高められる利点がある。

今後も数年にわたり政府がカーボンニュートラル戦略やデジタル化戦略を支援し続けるなら、証憑のペーパーレス化は重要な施策の一つとなると馬CEOは考える。電子領収書の発行数は今年、500億枚にまで増えると予測されている。

(翻訳・愛玉)

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