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11月11日、中国で毎年恒例となっているインターネット通販セール「独身の日(双十一)」が開催された。10年目を迎えた今年は、EC企業最大手のアリババグループ(阿里巴巴集団)が取引総額2135億元(約3兆5000億円)を記録。前年比27%増と伸び率こそ昨年に及ばなかったものの、過去最高額に達した。
最大手アリババ、取引額で過去最高を達成
日本円換算で取引額3兆円の大台はアリババにとって初。受注件数は前年比23%増の10億元超えとなった。
2009年にアリババが始めた「独身の日」セールだが、現在では中国EC業界全体のお祭りとなっている。参入企業が増えるにつれ、売上高全体に占めるアリババのシェアは減少傾向だ。2013年には78%だった同社のシェアを、2017年の66%にまで押し下げた強力なライバルはEC大手の京東集団(JD.com)、家電量販「蘇寧易購(Suning.com)」、ソーシャル越境EC「小紅書(RED)」など。今年からは廉価が売りの新興EC「拼多多(Pinduoduo)」も参戦した。
2018年「独身の日」に影を落とした3つの不安要素
予測以上の取引額を達成したアリババだが、不安要素が皆無だったわけではない。今年は以下の3要素が影を落とした。
1) マクロ経済の疲弊
2018年7~9月期の中国の国内総生産(GDP)は前年同期比6.5%増にとどまり、6.6~6.7%の予測値を下回った。長引く米中貿易摩擦の影響もあり、今後もこの傾向は続くだろう。製造業に目を向けると、2018年10月の購買担当者景気指数(PMI)は50.2%で、前期比から0.6%減。製造業の不振は金融業、IT業へも波及していくだろう。
2) 月賦払いバブルの崩壊
2017年10月にニューヨークで上場した月賦払いプラットフォーム「趣店(Qudian)」は、中国の金融サービスとしては米国で上場した3社目の企業となった。若年層を主要ターゲットとしたサービスで急成長を果たしたものの、利用手続きや督促の際の強硬な手口が上場後に社会問題化し、政府が対策に乗り出した。
趣店をはじめとした同種の金融サービスは政府規制の影響もあり、2018年初めから大幅に減速。その影響を受けたのは消費能力の低い中間~低所得者層だ。彼らの消費鈍化は、今年の独身の日にも直接的な打撃となった。
3) サービス商品の不振
過去数年、独身の日の売上に貢献してきたのが物品以外の商品だ。中国国家統計局のデータによると、2017年11月におけるEC売上高でサービス商品の伸び率は64%。航空券から宿泊予約、通信費チャージまで商品は多岐にわたるが、中でもゲームスキンやゲームカードなど、ゲーム関連商品が大きな存在感を見せていた。
ところが2018年3月、国家関連当局が新規タイトルの審査を凍結。新作ゲームをリリースしても課金できなくなり、ゲーム関連の売り上げに深刻な影響が出ている。
今後の成長をけん引する二大要素
反対に、今後の成長をけん引すると期待されるのは以下の二要素だ。
1) 海外市場の急成長
国内市場が飽和に近づく中、海外取引に期待を寄せるアリババだが、2018年第1~3四半期における国際取引の伸び率は63%・64%・55%を記録。今後も独身の日に大きく貢献してくれることが期待される。
2)新小売(ニューリテール)の浸透
ECと実店舗を連携する「新小売(ニューリテール)」も、今年の独身の日から本格的に浸透しはじめた。アリババグループは近年、買収と投資を繰り返し、多くの企業を自社グループに取り込み、オフラインの世界でも国内最大級の小売網を築いている。
今年から独身の日に本格参戦したフードデリバリー「餓了麼(Ele.me)」は開始9時間で受注額が前年比114%増、地元密着型生活サービス「口碑(Koubei)」は開始30分で1日平均の3倍に達する受注件数を記録した。
(翻訳・愛玉)
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