未公開株取引仲介の米「シェアーズポスト」、ユニコーン企業を追って中国へ

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シリコンバレーの多くのスタートアップは、ストックオプション制度で多くの人材を惹きつけているが、勤めている会社が上場するか買収されなければ、従業員が株式を売却することは困難だ。

研究者の報告によると、2008年以降、米国の企業は設立から上場まで平均して10年間を要しているという。言い換えれば、従業員や創業者は10年間は株式を現金化できないということだ。マイホームの購入や結婚、そして子育てなどのため、もっと早く株式を売却したいと考える従業員もいるだろう。

優秀な人材の確保、IPOへのプレッシャー緩和などの目的で、従業員の株式売却を条件付きで認める企業もある。反面、資産を持つ個人や投資機関の多くは成長企業、特にユニコーン企業の株式を保有し続けたいと考えている。

このような需要と供給の存在が、いくつかのプライベートエクイティプラットフォームを誕生させてきた。米国の「シェアーズポスト(SharesPost)」もその1つだ。

2009年にサンフランシスコで設立された同社は、世界中のユニコーン企業の株式取引、仲介業務、非上場株投資運用サービス、調査業務などを提供している。フェイスブック、テスラ、ツイッター、LinkedIn、Spotify、Evernoteなどといった、数多くの新興企業株をIPO前に取り扱っていたことでも有名だ。

スタンフォード大学ビジネススクールのデビッド・F・ラッカー教授の研究によれば、シェアーズポストを含む4つのプラットフォーム(シェアーズポスト、エクイデート、エクイティー・ゼン、ナスダック・プライベート・マーケット)は、2017年だけで合計40億ドル(約4500億円)以上の取引に関与。シェアーズポスト創業者兼CEOのグレッグ・ブロッガー氏も「すでに数万株の取引を完了させており、取引総額は40億ドルに達した。取引企業は230社以上」と明かしている。

シェアーズポストの収益モデルは、取引手数料に基づいている。この業界の取引手数料は一般的に5%以下だ。また、同社の公募ファンド「シェアーズポスト 100」も管理手数料を徴収しており、目下、ファンドは1億1400万ドル(約130億円)規模にまで成長した。

ブロッガー氏によると、同社の取引成功率は95%。取引成功率は投資家にとって重要な指標だ。取引プラットフォームが企業と良好な関係を築けていない場合、最終的に取引が拒否されることもあるからだ。投資家にとっては無駄に資金を投入しただけでなく、時間も浪費したことになる。

中国進出の理由

今年1月、シェアーズポストは中国支社を設立し、非上場の「滴滴出行(Didi Chuxing)」と「途家(Tujia)」の株式譲渡に関わった。

ブロッガー氏は、中国市場参入の理由について「最近、中国のユニコーン企業の台頭は海外投資家の関心を惹きつけている。4年前、世界のユニコーン企業の約85%が米国に存在していたが、現在は50%程度にまで落ちた」と述べる。実際、スタートアップ企業のデータベースサービスを提供する「CB Insights」も、世界のユニコーン企業260社のうち122社が米国に、74社が中国にあるとしている(2018年8月時点)。

ブロッガー氏は、中国支社を設立することで、米国投資家の中国市場への理解を深めるとともに、中国企業との信頼関係を構築し、米国からの投資を受け入れる体制を整えていく方針だ。しかし、もともと中国の非上場企業では従業員の持株数が極めて少なく、株式譲渡のニーズも限られている。また、両国の制度や文化などの違いから、取引においてさまざまな不確定要素が存在しているのも確かだ。

しかし、「シャオミ(小米科技)」や「拼多多(Pinduoduo)」、「美団点評(Meituan-Dianping)」などのスーパーユニコーンが立て続けに上場を果たしたことは注目に値する。ブロッガー氏は「我々が関心を寄せている中国の『ニューエコノミー』関連企業は常にダイナミックで、この分野では新たなユニコーン企業も誕生し続けるはずだ。上場前の株式譲渡も必要となってくるだろう」と述べ、中国のユニコーン企業に期待を寄せた。

ブロッガー氏は、シリコンバレーの法律事務所でテック企業の弁護士としてキャリアをスタート。その後、いくつかの企業の設立に携わり、エンジェル投資家、董事会メンバーなども歴任した。ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得している。
(翻訳・飯塚竜二)

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