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米経済誌「フォーブス」はこのほど、2022年版の世界で最も価値のあるeスポーツチームランキングを発表した。上位10位までのeスポーツチーム・組織の価値評価額は平均3億5300万ドル(約450億円)と、20年12月発表時に比べ46%増加した。トップは米国の「TSM FTX」(旧Team SoloMid)で、同32%増の5億4000万ドル(約698億円)だった。
企業幹部やeスポーツ業界関係者、投資家、バンカー、アナリストら40人超を対象に調査を実施。業績を含む各項目について格付けした。2位は米国の「100 Thieves」(100チーブス、142%増)、3位はオランダの「Team Liquid」(チームリキッド、42%増)。
4~10位は米「Faze Clan」(フェイズクラン、31%増)、米「Cloud9」(クラウド9、9%増)、ドイツ「G2 Esports」(94%増)、英「Fnatic」(フナティック、適用外)、米韓中「Gen.G」(35%増)、米「NRG」(55%増)、韓「T1」(47%増)だった。
eスポーツチームへの価値評価額が大幅増となった背景には、産業の裾野が広がるeスポーツへの高い成長期待がある。だが、より重要な点は、eスポーツという単体の事業がチームの価値向上を後押しする主因になったのではないということだ。各チームが持つ事業戦略の有無や巧拙が影響を与えていることに留意する必要がある。
eスポーツ業界には今も「収益化の難しさ」という問題が根強く存在している。過去3か月間に、デンマークの「Astralis Group」(アストラリスグループ)や英国の「Guild Esportst」(ギルドEスポーツ)、カナダの「OverActive Media」といったeスポーツ関連の上場企業が相次いで損失計上を発表したことが、それを如実に物語っている。
収益阻む課題も 成長期待は消えず
「収益化は、どのeスポーツチームにとっても依然として主要課題だ」。プライベートエクイティー投資家で、コンサルティング会社「エレクトロニック・スポーツ・グループ」マネージングパートナーのボビー・シャルム氏はこう話す。
実際、eスポーツチームは多くの困難に直面している。その最たるものが、メディア著作権を巡る収入とeスポーツ選手(プロゲーマー)への高額な報酬だ。
メディア著作権収入に関しては、eスポーツの視聴者数が拡大を続けているものの、各大会のメディア著作権の使用料などは低水準に抑えられており、その訴求効果に見合っていないことが課題に挙げられる。
もっとも、中国ネット大手、騰訊控股(テンセント)傘下の米ゲーム大手ライアットゲームズ(Riot Games)が開発した人気ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」(League of Legends、LOL)の中国リーグ「LOLプロリーグ(LPL)」を巡り、テンセント出資の同国ゲームプレー動画配信会社「虎牙(HUYA)」が21年、向こう5年のLPL生中継配信権を20億元(約380億円)で獲得したのは「個別のケース」だ。トップレベルの大会での放映権獲得の基準になったとされる。
膨らみ続けるプロゲーマーへの報酬も、収益の足を引っ張る深刻な課題だ。アストラリスが発表した21年の通期決算によると、同年の人件費は約6400万デンマーククローネ(約11億5700万円)にも上り、売上高全体の85%超を占めた。売り上げ圧迫の大きな要因となっているのは一目瞭然だ。
足元のeスポーツチームは決して「好調なビジネス」とは言い難い。だが、ブランド展開や資金調達活動は順調なようだ。今年4月25日、中国のコーヒーチェーン大手「瑞幸咖啡」(ラッキンコーヒー)が同国eスポーツ組織「EDward Gaming」(エドワードゲーミング、EDG)と提携。5月5日にはチームリキッドの親会社が総額3500万ドル(約45億2200万円)の資金調達を終えた。
市場ではeスポーツ産業について成長可能性が非常に高いとの見方が一般的だ。オランダのゲーム調査会社「Newzoo(ニューズ―)」がまとめたeスポーツ市場リポートによると、eスポーツの視聴者は22年に5億3200万人に達する見通し。このうち毎月1回以上コンテンツを視聴する「コア愛好家」は2億6100万人いると試算している。
eスポーツチーム、選手から「ブランド」へ
とはいえ、今回のランキングを見ても、eスポーツチームにとって事業多角化戦略が収益化実現に向けた突破口を開くのは間違いない。eスポーツ産業の影響力拡大に伴い、有力なeスポーツチームは事業多角化を急ぎ、ライフスタイルやIT、メディア、さらには教育といった分野にまで裾野を広げて収益確保につなげている。
フェイズクランやNRGはゲーム実況を行う「ストリーマー」と独自コンテンツの制作に取り組んでいるほか、100チーブスはアパレルを中心としたライフスタイル提案型企業となりつつある。TSM FTXとGen.Gは独自のトレーニングアプリを稼働。EDGは今年5月、自社ファッションブランド「EDGP」の商品第1弾としてサンダル「QUADRUPLE7」を発売した。
eスポーツチームは今や、単なるゲーム大会の出場選手から一つの独立したブランドへと変貌を遂げ始めていると言っていい。メタバース(仮想空間)やデジタル通貨、ファッションブランドなども強みを発揮できる分野だろう。注目度の高い分野の一つ、メタバースは必須となりつつある。競技場以外でチームブランドをいかに確立できるかが、今後の発展を左右するとみられる。
(36Kr Japan編集部)
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