アリババクラウド、タイにデータセンター開設 東南アジアが激戦区に

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アリババ傘下のクラウドサービス「アリババクラウド(阿里雲)」は5月20日、タイのクラウドデータセンターの運用を開始したと発表した。アリババクラウドが東南アジアに開設したデータセンターとしては10カ所目となる。

クラウド事業者の海外進出はすでに目新しいものではないが、この1年ほどは特に東南アジア市場が活況で、データセンター建設や大規模なクラウドコンピューティング案件が頻繁に発生している。中国国内のクラウド事業、特にIaaS(サービスとしてのインフラ)市場はすでにレッドオーシャンとなり、クラウド事業者の成長も鈍りつつある。それに対し、新興国市場の多くはアフターコロナの景気回復に伴ってインターネット需要も急増しており、なかでも東南アジア市場の好調が際立つ。

新たな成長曲線を求めて

中国のクラウド市場ではアリババクラウドが依然として首位を守っているが、安泰とも言えなくなっている。

インターネット企業はアリババクラウドにとってメインの顧客だが、この数年で成長は頭打ちとなっている。昨年からはアリババクラウドの勢いにも陰りが見え始めた。調査会社カナリスが今年3月に発表したデータによると、2021年にアリババクラウドは市場シェアを40.3%から37%へと落とした。背後にはファーウェイクラウドとテンセントクラウドが迫る。

アリババクラウドは新たな成長曲線を切実に必要としており、そのうちの一つが海外進出というわけだ。特に東南アジアを重点市場に位置づけ、複数の国でシェア拡大を進めてきた。米調査会社ガートナーが2021年に公表した最新データによると、アリババクラウドはマレーシア市場で29.2%のシェアを占めており、インドネシア市場でも22.92%のシェアを獲得しているという。

昨年末に開催された投資家大会で、アリババクラウド・インテリジェンスの張建鋒総裁は、東南アジアでアリババクラウドの売上高が60%以上増加しており、国内市場の数倍もの成長を遂げていることを発表した。

現在、アリババクラウドは海外展開を強化するために、大量の人員と資金を投入している。昨年6月にはインドネシアとフィリピンに新たなデータセンターを建設することを発表し、今後3年間に60億元(約1200億円)以上を投じてインフラを拡張する計画を打ち出した。これまでと比べて、海外志向がより明確になっている。今年、アリババクラウドは海外の組織構造の改革を完了し、サービスチームやソリューションチームの現地化を徐々に進めている。

中国企業を引きつける東南アジア

中国企業にとって、東南アジアは大きな戦略的意義を持つ市場だ。同じアジア大陸に位置し、ユーザーの属性や消費習慣、文化などの面で中国と共通する部分が多い。海外進出する中国企業の最初の拠点が東南アジアというケースは多く、中国インターネット界の「裏庭」とも呼ばれるほどだ。

東南アジアではインターネットが依然として急成長を遂げており、その増加率は欧米市場を上回る。シンガポールのテマセク、米グーグル、米コンサル会社ベインキャピタルが共同で発表した「2021年東南アジアデジタル経済リポート」によると、東南アジアのインターネットユーザーは約4億4000万人で、インターネット普及率は前年の70%から75%に高まった。2021年上半期だけでも、東南アジアで新たに2000万人のデジタルユーザーが生まれており、それに伴うクラウドストレージの需要は今後5年間に40%増加すると見込まれている。

東南アジアでは積極的な政策も打ち出されている。インドネシア政府はデジタル経済分野を経済発展の重点業務に据えたほか、シンガポールも昨年「シンガポール・プラスワン」戦略を打ち出してデジタル経済分野の企業を積極的に招致している。

これを受けて、より多くの企業が集まるようになった。アマゾンとグーグルは昨年、それぞれインドネシアに新たなデータセンターを開設すると発表。加えて昨年からインターネットデータセンター(IDC)事業者も続々と参入しており、中国最大のIDC事業者「万国数拠(GDS)」が昨年、東南アジアへの進出を公表した。東南アジアへ進出する中国企業はすでに数多く、これらIDC事業者も新たなユーザーを獲得して自らのテリトリーを確保する必要がある。

東南アジア市場で一歩リードしているアリババやテンセントも、今後さらにライバルが増えることは間違いない。今年4月にはテンセントクラウドが、インドネシアで最初のクラウドコンピューティングデータセンターの運用を始めた。また、ファーウェイクラウドも今年3月に、グローバルビジネスを支援する新たなソリューションを発表し、海外で事業を展開するゲームやEC、エンタメ、金融などの分野の中国企業にクラウドサービスを提供することにしている。

すでに海外市場は残り少ないパイを奪い合う状況だ。競争が本格化した今、各企業はシェア獲得に全力で取り組む必要があるだろう。
(翻訳・畠中裕子)

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