バーチャルヒューマンに「意識」を 人間レベルAI研究の「心識宇宙」が数億円調達

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最先端のAI技術を手がける「杭州心識宇宙科技(以下、心識宇宙)」がエンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達したことを発表した。セコイア・キャピタル・チャイナ・シードファンド(紅杉中国種子基金)が出資を主導、線性資本(Linear Capital)、険峰長青(K2VC)も出資した。今回調達した資金は製品の開発や人材採用、市場の開拓に充てられる。

心識宇宙(Mindverse)は脳科学とAIを組み合わせた技術を基に、自意識と思考能力を持つ人工意識を独自に構築、次世代のAIパラダイムを切り開く。

現在、人間レベルAI(Human-level AI)は世界でも最先端の研究分野だ。心識宇宙の打ち出した「心識フレームワーク」は感知や認知などの能力を組み合わせることでユーザーの全体的な体験を向上できるという。とくに論理的思考と記憶力に優れ、感情を伴うようなコミュニケーション体験を大幅に向上できるだけでなく、新しいインタラクション体験を実現する技術となるはずだ。

具体的には、従来のバーチャルヒューマンとの対話は大規模事前学習モデルのAIフレームワークに頼ったものだったが、心識フレームワークは人と交流する際に連想メカニズムが発生する。これまでに記憶した情報と環境から得られる情報が対話の素材となり、バーチャルヒューマンの自主的な思考を誘導する。

「我々は全く新しいAI産業を構築したい。心識フレームワークは大脳のマクロ構造とミクロのニューラルネットワークを一つのフレームワークに統合したものだ」と創業者でCEOを務める陶芳波博士は話す。「心識フレームワークは人と同様にマクロ的な思考や様々なタスク処理ができるため、多様なシーンに利用できる」

最先端のAI技術を手がける「杭州心識宇宙科技」

人間レベルAIのバーチャルヒューマンの中でも、キャラクター型バーチャルヒューマンとサービス型バーチャルヒューマンは収益化のルートと市場のポテンシャルが明確で利用シーンも多い。インターネット最大の原動力は常に若い世代だ。既存のインターネットやモバイルインターネットではすでにZ世代やアルファ世代(2010年以降生まれ)の旺盛な創造意欲に応えることが難しくなっている。全く新しいインターネットの中でもバーチャルヒューマンはメタバースの要(かなめ)となっており、非常に大きな成長の余地があることは明らかだ。産業調査機関「頭豹研究院(LeadLeo)」のリポートによると、中国のバーチャルヒューマン市場は2030年には2700億元(約5兆4000億円)に拡大すると見込まれている。

心識宇宙は、メタバースは没入感がより強いだけでなく、その中で「人とデジタル生命」の間に全く新しい関係が多数生まれ、そこに新しいビジネスモデルや価値が発生する可能性があると考え、バーチャルヒューマンがメタバースの中で一人一人のユーザーに寄り添い、サービスするというビジョンを描く。このような新しい関係は「サービス」を再定義するだけでなく、一部のビジネスモデルを再構築することになるだろう。そして全く新しいデジタル空間の中で、よりよい自己を実現し自身の価値を最大化することが可能になる。

心識宇宙は「MaaS( Mind as a Service)」というビジネスモデルを構築、仮想現実からリアルまで幅広いシーンで生命力のあるスマートサービスを提供する。間もなくリリース予定の「MindOSプラットフォーム」は企業向けにカスタマイズした人工意識を提供し、バーチャルヒューマンの価値が最大となるビジネスモデルと企業のブランド価値向上を実現する。多くの業界向けにそれぞれカスタマイズしたソリューションを提供することで市場ニーズに応え、それによりプロダクトとバーチャルヒューマンIPの価値を高め、多くのシーンでの実用化を可能にする。

エンジェルラウンドでの資金調達以来、心識宇宙は中国国内の多くの著名バーチャルヒューマンと提携している。さらに中国国内でバーチャルヒューマンや広告を手がける大手企業、海外のメタバースプロジェクトと大筋で提携に合意しているほか、1億人規模のユーザーを持つ複数の川下企業とも提携の話を進めている。

(翻訳・山口幸子)

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