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中国「新経済」の台頭に伴って最大の益を得ているのはドル建てファンドだ。IT企業御三家の「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」を始め、多くの中国企業が資金を調達し、上場を成し遂げられたのは、ドル建てファンドのバックアップがあったからだ。
EUや日本は中国にとって重要な貿易相手だが、ユーロ建てファンドや円建てファンドはほとんどなく、大部分がドルに替えてファンドを設立している。「資金調達、投資、管理、エグジット」というファンドのプロセスを考えると、なぜドル建てファンドなのかが分かってくる。
世界の基軸通貨
「麦星投資(Maison Capital)」のマネージングパートナー崔文立氏によれば、投資の各プロセスにおいて絶対的な地位を占めているのが米ドルであり、ドルに統一して投資するのが、関係者全てにとって好都合なのだという。
資金源の異なる出資者をまとめ、各プロセスにおける通貨の一致と価値安定を図るのに最適なのは米ドルだと、多くのベンチャーキャピタルが考えている。「全ての資金を日本から集めることは難しく、他国の市場からも調達する場合、米ドルなら各出資者の賛同を得られる」と崔氏は語る。
また、日本の株式市場は閉鎖的なため投資に向いておらず、日本円で調達した資金を他国の市場に投資する場合、余計な為替差損が増えることもネックになる。
米国で上場を目指す中国のインターネット企業にとって、ドル建てファンドなら全プロセスにおいて余分な手続きや為替差損を減らすことができる。米ドルは世界の基軸通貨であり、中国でも人民元に次ぐ通貨であるため、投資対象企業が海外事業でも国内事業でも問題にはならない。
上場しやすい市場
オープンな国として知られる米国だが、30兆ドル(約3300兆円)規模の米国株式市場も例外ではない。膨大な資金が集まる同市場にはアマゾン、アップル、アリババなど最高クラスのインターネット企業がひしめく。流動性とPER(株価収益率)が高く、上場のハードルが低いことが、米国市場の強大な投資力を支えている。
2018年、世界の主要取引所の株式時価総額は74兆3000億ドル(約8200兆円)で、そのうち米国が40%を占めた。ナスダックの時価総額だけを見ても、日本の2倍近くに上る。
米国で上場すれば、高い評価額を期待できる。中国の調査会社「Wind資訊」のデータによると、ナスダックのPERは30~40倍、S&P500やNYダウのPERも20倍前後なのに対し、東京証券取引所のPERは通年15倍以下で推移している。市場関係者の一人はこう語る。「インターネット企業がナスダックで上場すれば、時価総額は東証上場の5倍に跳ね上がるだろう」
米国上場は時間の短縮にもつながる。日系金融機関のアナリストによれば、米国では最短6か月でデューデリジェンスや審査を含め上場までの全プロセスが完了するが、日本ではスムーズにいっても3年はかかるという。「もし3年の間に経営が不安定になれば、それまでの準備は水の泡だ」
さらに米国ではインターネット企業に対して寛容だ。設立3年で上場したソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」は、当時累計13億元(約215億円)の損失を抱えていた。設立2年でナスダックに上場したニュースアプリ「趣頭条(Qutoutiao)」も、上場後初の決算では10億元(約165億円)の損失を計上している。2社の収益性や設立間もないことを考えると、米国の寛容さに助けられたと言えるだろう。
対して日本の市場は閉鎖的だ。2018年11月30日時点で、東京証券取引所の上場企業3640社のうち、外国企業はわずか6社で、中国企業は1社もない。上場するまでに最低3年かかり、安定した収益性が求められるなど、日本の株式市場は審査が非常に厳格だ。そのため日本で上場を目指す外国企業はごくわずかで、上場を果たしたとしても毎年の審査で基準に到達せず上場廃止になることがある。
欧州市場は外国企業に対して日本よりもオープンであるものの、欧州市場で上場を目指す中国企業の多くは従来型産業で、インターネットなどの新興産業ではない。
こうした状況から、欧州や日本のファンドが中国市場に参加する場合は間接的な方法をとる。日本の資本の場合、中国でドル建てファンドを設立し、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)という形で直接投資する方法と、中国のゼネラル・パートナー(GP)に出資し、リミテッド・パートナー(LP)として間接投資する方法の2つがある。
前述のアナリストによれば、中国市場に関心を示す日本企業は増加しており、多岐にわたる提携モデルを模索しているという。
この先しばらくは、ますます多くの欧州や日本の資本がドル建てで中国市場に参入していくとみられる。
(翻訳・畠中裕子)
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