航空機も電動化加速。中国「万戸宇航」、パイロット養成や個人向け製品の開発に注力

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新エネルギー車産業が発展してきた恩恵で、動力装置の電動化改革は重機・船舶・航空などの各分野に浸透しはじめた。「万戸宇航工業(Wanhu Aerospace)」はまさに複合材を用いた純電動固定翼機の設計・開発・製造に特化した企業で、2021年に山東省済南市の商河一般航空産業パークで設立されている。

万戸宇航工業は現在、中国・米国・チェコの3カ所に共同開発チームを置き、世界各国からベテランの航空エンジニアを集め、複合材を使った固定翼機の設計や開発、耐空証明取得、製造などに経験のある人材を揃えた。コアメンバーはいずれも航空機製造で10年以上のキャリアがあり、過去にはダイヤモンドエアクラフトやムーニーインターナショナルなど世界的に有名な一般航空機メーカーに在籍していた。

近年、航空機の電動化が加速している。SDReportsが21年に発表した2030年までの電動航空機市場予測レポートは、都市航空交通(UAM)に用いられる航空機の普及が加速し、さまざまなシナリオに対応できる航空機の運用に成功したことで、21年の電動航空機の世界市場は79億ドル(約1兆700億円)規模に達し、年平均成長率14.8%で推移して30年には277億ドル(約3兆7500億円)に成長すると予想している。このレポートで定義する電動航空機には電動ドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)、スカイスポーツ用電動航空機なども含む。

中国の一般航空における飛行回数・航空機数・操縦士数などの重要なデータはこの10年近く、年平均成長率がいずれも10%を超えている。万戸宇航工業を創業した張天洪氏は「関連データから予測すると中国では40年までに一般航空機が4万機を突破する。中でも固定翼とピストンエンジンを用いた一般航空機の数は2万6000機を突破する見込みで、電動航空機にとっては巨大な成長市場だ」と述べている。

電動の一般航空機はこれまでの航空機と比べいくつかの長所がある。まず、電動化によって燃料費や維持費を極めて効率よく抑え、二酸化炭素の排出を効果的に減らせる。また、電気駆動技術を採用することで騒音を大幅に減らし、最大離陸重量に燃料の重さが加わらないため、純粋に商業用途の荷重データに基づいて飛行任務を遂行できる。

万戸宇航工業は電動プロペラ機「EP-3」をスタンダード版(航続距離600キロ)とアドバンスト版(航続距離670キロ)の2バージョンで発表する計画だ。機体の大きさは人気の高いシーラスエアクラフト「SR20」やダイヤモンドエアクラフト「DA40」と同等だ。張天洪氏によると、スタンダード版とアドバンスト版はそれぞれ異なる顧客をターゲットとし、スタンダード版はパイロットを養成する航空学校向け、アドバンスト版は個人ユーザー向けを想定している。搭載バッテリーはいずれも「中航鋰電(CALB)」の三元系リチウムイオンバッテリーで、240kW/800Vの充電スタンドに対応し、充電性能に優れ、残量20%から80%までの充電はわずか20分で済む。

EP-3スタンダード版

EP-3アドバンスト版は主翼と水平尾翼の表面に高性能ソーラーパネルを搭載している。主に個人ユーザーに向けた製品で使用頻度は一般的に高くないため、飛行場で駐機中にソーラーパネルで充電する仕様とし、充電設備を持たない飛行場にも対応できるようにした。張天洪氏は「個人ユーザーは通常、経由地で一定の時間を過ごすため、そこで完全自力でフル充電ができる」と説明する。

EP-3の最大の長所は、使用・維持にかかるコストを大幅に減らせることだ。これまでの3〜4人乗りの一般航空機では購入コストの約40%、維持コストの半分近くをエンジンが占めてきた。

EP-3アドバンスト版

張天洪氏は「一般航空機にかかるコストを圧縮し、市場での消費を刺激することが、中国の一般航空機産業を成長させるために重要だ。燃料費のことも考慮すれば、これまでは航空学校で一般航空機にかかるランニングコストは1時間あたり約1000元(約2万円)だったが、万戸宇航工業の電動航空機ならこれを約200元(約4000円)にまで下げられる」と述べている。さらに電動航空機は操縦士の養成コストや飛行時の故障率も下げられるという。

カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と削減量を差し引きゼロにすること)が推進され、環境汚染に関する法律が世界的に厳格化していく中、電動航空機は欧州を中心とした海外市場の開拓をスムーズに進めている。

EP-3のスタンダード版はすでに全体の構造設計が完成し、コア部品の生産、電動機やバッテリーの調達も始まっている。年末から来年初めにかけて試作機が制作され、試験飛行を実施する計画だという。
(翻訳・山下にか)

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