ペットの高齢化に対応、中国でイヌ・ネコ向け幹細胞療法

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ペット向けのバイオ医薬品を開発する「覓投克生物」が、エンジェルラウンドで峰瑞資本(Frees Fund)から1000万元(約2億円)を調達したと発表した。覓投克生物は筋ジストロフィー、炎症性腸疾患、変形性関節症などを適応症とする間葉系幹細胞(MSC)製剤を始めとする高齢の猫や犬向けの治療薬を研究開発している。

資金調達後、同社は実験室や開発チームを整え、細胞培養の基本プロセスや品質管理体制を作り上げた。また犬の筋ジストロフィーや炎症性腸疾患に対する薬効試験を行い、すでに段階的な成果も上げている。

(画像は企業提供)

覓投克生物が設立されたのは2021年末。創業者でCEOの任宇博士は中国科学院動物研究所で発生生物学を専攻した。創業メンバーは中国科学院や清華大学、中国農業大学の出身で、海外での研究業務や幹細胞製剤の開発経験を持つ。

間葉系幹細胞(間葉系ストローマ細胞)は、免疫調節、抗炎症、神経血管再生、損傷細胞の保護、組織修復などに対して科学的・臨床的に安全かつ有効であることが報告されている。現在はヒトへの臨床試験が進行中で、変形性関節炎や心筋梗塞、脳卒中などの治療に用いられる。

動物医療の分野では、すでに海外企業が犬や猫、馬の変形性関節症や軟骨・靱帯損傷を治療する間葉系幹細胞製剤の開発や臨床試験を進めている。ドイツの製薬会社ベーリンガーインゲルハイムが開発した馬の軟骨損傷および腱・靱帯損傷を治療する間葉系幹細胞製剤2種類は、すでにEUの販売承認を受けている。中国ではペットの病気を対象とした幹細胞製剤はまだ申請されたことがない。

間葉系幹細胞で医薬品ができあがる可能性は細胞の培養プロセスに大きく依存する。適切な条件が整って初めて、幹細胞は活性を維持でき、特定の疾患に対して良好な治療効果を発揮することができる。任宇CEOは「ペット向け間葉系幹細胞製剤の開発でも、ヒト幹細胞製剤と同様の高い基準で、薬効に対する厳格な試験と改良を進めている」と語る。病気によっては、薬効を高めるために細胞の改変を行うこともあるという。

間葉系幹細胞製剤の開発では、細胞培養に使用する消耗品や培地(ばいち)、環境制御などに高い水準が求められるため、幹細胞療法のコストも当然高くなる。

これに対し覓投克生物の共同創業者の李昂達氏は、プロセス開発の段階から常に最終製品の生産コストを考えていると語る。同社は培養の効率を高め、より少ない細胞で良好な治療効果が得られるよう、細胞培養の各プロセスを念入りにテストしてきた。プロセスの最適化能力をもとに、この先売り出す医薬品は都市部在住の飼い主なら手の届く価格設定を目指している。またワクチンの開発など、さらに多くのペットの治療法の開発も展開していく予定だ。

市場ニーズについては、中国の都市部で飼育されている犬や猫は1億1000万匹以上。犬は7~8歳、猫は10歳を超えると老齢期を迎えるが、中国にいる老齢期の犬や猫は現在2000万匹あまり、5年後には5000万匹以上に達すると見込まれ、高齢化が進んでいる。また飼い主の多くがペットを家族の一員と見なしているため、高齢のペットが病気になった場合、積極的な治療を選択すると考えられる。

中国獣医協会(CVMA)などがまとめた「2021年中国ペット医療業界白書」によると、ペット医療はペットフードに次いで需要の大きな市場であり、市場規模はペット産業全体の22%を占める600億元(約1兆2000億円)に達する。2025年には1000億元(約2兆円)を突破する予測だ。

峰瑞資本の謝達副総裁は次のようにコメントしている。「ペット医療の展望としては、ペットの高齢化がより進んだ5年後に、老齢期のペットの治療に対する需要が急速に高まるだろう。幹細胞療法を含む再生医療は、この需要に応えるための重要かつ必要な手段であり、開拓する価値のあるブルーオーシャンだ」
(翻訳・畠中裕子)

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