ポルシェ傘下VC、中国スタートアップへの投資を本格化

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大手自動車メーカーは往々にして優れた投資チームを有している。イノベーティブなプロジェクトを発掘することで、市場に先駆けて自社の事業やマネジメントをレベルアップさせるためだ。独高級スポーツカーメーカーのポルシェも例外ではない。

ポルシェ・チャイナは6月12日に開催したイノベーション・オープン・デー(Porsche China Innovation Open Day 2023)で、エネルギー管理のデジタル化を手がける「電享科技(EnjoyElec)」に出資すると発表した。同社傘下のベンチャーキャピタル「ポルシェ・ベンチャーズ」にとっては3つ目の中国投資プロジェクトとなるもので、これ以前にもバーチャルキャラクターを手がける「万像科技(Wanxiang Tech)」と産業用3Dプリンターを手がける「遠鋳智能(INTAMSYS Technology)」の2社に出資している。

出資したプロジェクトのうち、すでにポルシェの事業に組み込まれているものもある。例えば、ポルシェのヴァイザッハ開発センターで使用する3Dプリンターの一部はすでに遠鋳智能の製品が採用されている。

5年でプロジェクト3件というペースは決して速いとは言えない。ポルシェ・ベンチャーズのマネジングディレクターUlrich Thiem氏によると、ポルシェ・ベンチャーズの投資は全て、財務的リターンではなく戦略的シナジーに基づいて行うため、一般的なファンドのように頻繁かつスピーディーに出資することはしないという。同氏は「出資先の企業を見定めるのに少なくとも6〜9カ月をかけている」と述べている。

戦略的シナジーを確実に得るため、ポルシェ社内では全ての投資プロジェクトが特定の事業部門の同意を得る取り決めになっているという。結果、ポルシェ・ベンチャーズが手がける全プロジェクトは、グループ内の特定の事業に確実にメリットをもたらしている。しかし、このやり方では新規プロジェクトを見出すペースが鈍ることにもなる。

ポルシェは今年4月、ポルシェ・ベンチャーズを「Porsche Investments Management S.A.」として分社化し、本社をルクセンブルクに置いて、2億5000万ユーロ(約400億円)をスタートアップへの投資に充てると発表した。

分社化に関してThiem氏は、ポルシェ・ベンチャーズの意思決定権がグループ本社から投資プラットフォームに移り、投資チームはより大きな決定権を持つようになると説明した。つまり、今後は投資のペースアップも期待できるということだ。ポルシェ・ベンチャーズ中国エリア責任者の龔挺氏も、今後はより主体的に、かつリターンも重視する方向性で投資できるようになるとしている。

ポルシェ・ベンチャーズの手がけるジャンルは主に4つ。自動車産業とモビリティ、インテリジェント企業、SDGs(カーボンニュートラル、循環経済、持続可能なサプライチェーンなど)、空飛ぶクルマや電動自転車などの新興分野だ。

ポルシェはこれまでに世界中で約60社の新興企業に直接投資してきたが、中国企業の占める割合はそれほど高くなかった。投資事業に関しては、中国ではマーケティングやセールス、ESG(環境・社会・ガバナンス)分野などを取り扱うことが多く、現時点では自動車開発などの先端分野を取り扱うことは少ない。

Thiem氏によると、中国でも欧州本部でも投資に関する方針は同じだが、重きを置くポイントは異なるという。欧州はサプライチェーンが近くにあるため自動車産業関連の投資が多いが、中国では顧客中心の技術やSDGsなどモビリティ以外の案件が多い。「中国ではベンチャーキャピタルやスタートアップを取り巻くエコシステムが自立し、整っている。こうしたエコシステムから成功企業や優良企業が誕生すると信じ、中国市場での投資を拡大し続けていく」と同氏は述べている。

(翻訳・山下にか)

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