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ピカソ展「天才の誕生(Picasso ―Birth of a Genius)」が、北京市の798芸術区にある「ユーレンス現代美術センター(UCCA)」で6月15日から開催されている。およそ2カ月で来場数は20万人近くにのぼり、SNSでも話題を呼んでいる。
あのピカソの貴重なコレクションが中国にやってきた。驚いたのは、それだけではない。UCCAがECサイト「天猫(Tmall)」に開設したミュージアムグッズ旗艦店がオープン当日、わずか24時間で173万元(約2600万円)の売り上げを記録した。UCCAは文化クリエイティブ産業の収益化をサポートする「天猫新文創(Tmall Culture)」と展覧会、アーティスト、無形文化遺産プロジェクトおよびアート出版物の4分野における3年間の戦略提携をスタートさせた。
UCCAはピカソ展の会期中、ミュージアムグッズのIP使用許諾を得てアパレル、コスメ、手工芸品など7カテゴリ、81種類のライセンス商品を展開している。
業界を跨いだコラボレーションでは人気タレントや歌手も起用。香港の歌手・陳偉霆(ウィリアム・チャン)氏の人気ブランド「WILLIAMISM」とのコラボTシャツを発売した。人気アイドルの蔡徐坤(KUN)氏は音声ガイドのレコーディングに参加、ギャラリー内のQRコードを読み取ると彼による作品の解説を聞くことができる。
UCCAの朱瑋琦COOは、アートは人々のライフスタイルに深く入り込むことができると考える。アートの普及と可能性を探求し、ワークショップなどの非営利事業から、レジャーやライフスタイル分野へとアートを浸透させ商用化。営利事業として3つのブランドを展開している。
ミュージアムグッズを開発・販売する「UCCA Store」、子供向けアート教育の「UCCA Kids」、アートとビジネス界をつなぐサブブランド「UCCA Lab」だ。UCCA Labは高級EVメーカーの「蔚来汽车(NIO)」、民泊仲介サービス「Airbnb」、中国のコスメブランド「瑪麗黛佳(Marie Dalgar)」など大手企業とのコラボで、企画展、プロモーション、ギャラリーイベントなどを開催している。
業界を越えたUCCAのコラボレーションはキュレーション業界でも異彩を放つ。ファーウェイが主催する映像アワードとその作品展「2018華為新映像大賽(next-image awards)」では、UCCA Labが全プロモーションを担当。中国で活躍する日本人建築家の青山周平氏らを招いてパリの美術館グラン・パレで盛大に開催された。
アートライセンスの商用化については、非営利事業で蓄積された豊富なリソースやパートナーシップが役立っている。幅広い業界とのコラボレーションが強みとなり、多くの実績につながった。オンラインとオフラインの融合という手法も目を引く。今回のピカソ展のアートグッズは、オフラインでの共同制作とオンラインでの販売を連動させることで成功した。
ピカソ展は中国婦女発展基金会(CWDF)とも共同でイベントを開催。無形文化遺産の職人らがその技術を用いて、刺繍入りTシャツや唐傘、アクセサリーなど手工芸をモチーフとしたグッズを制作、天猫(Tmall)のUCCA旗艦店で販売した。
UCCAは美術館として業界を越えたコラボレーションを通じて、アートライセンスの商用化に取り組んでいる。それには3つのメリットがあると朱瑋琦氏は言う。
美術館には固定客(ターゲット層)がついており、ブランド側やデザイナーにとってはコラボレーションやライセンス供与が認知度アップにつながる。アーティストやコレクターからすれば、IPの露出が増え、人気や活力を維持でき商機を期待できるというわけだ。
市場の期待も高まっている。商業用不動産のデータ分析を手がける「贏商大数据(WIN DATA)」によれば、2015~18年の全国の一~二級都市の商業施設に入居するブランドのうち、文化クリエイティブ関連ブランド事業の数は0.5% から2.2%に上昇したという。
UCCAなどの新戦略をもつ美術館の出現によって、アート市場はさらに成熟が進んでいる。
(翻訳:貴美華)
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