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アリババ傘下で最先端技術を研究する「阿里達磨院(Alibaba DAMO Academy)」は8月16日、画像から複数のがんを見つける診断モデルを発表した。罹患率や致死率の高い8種類のがんの検出、セグメンテーション(画像を物体ごとの領域に分割すること)、診断が可能で、複数のがんの同時診断を実現し、診断漏れの減少に寄与する。
医療分野のAIモデルは単独の臓器の疾病を識別できるようになっており、医師の診断をサポートしているが、複数の臓器で正しく識別するのは難しかった。偽陽性が多すぎることに加え、一定の確率で診断時の見落としが発生するためだ。見落としや誤診をなくすため、放射線科の医師は通常全身の複数の臓器に対してさまざまな検査と診断を行う。そのため、複数のがんをまとめて効率的に診断できるモデルが求められていた。
達磨院の医療AIチームは中山大学腫瘍予防・治療センター、四川省腫瘍病院、浙江大学附属第一病院、盛京病院、広東省人民病院などと協力して、画像から複数のがんを診断するモデル(cancerUniT)を構築した。以前はさまざまな腫瘍の画像から検出、セグメンテーション、診断を一度に行うことはできなかったが、セマンテックセグメンテーションモデルMask Transformerを基に構築したモデルなら、罹患率や致死率の高い8種類のがん(肺、大腸、肝臓、胃、乳腺、食道、すい臓、腎臓)や関連臓器のさまざまタイプの腫瘍に対応できる。
複数がんの問題を複雑にしているのは臓器、悪性腫瘍やその他の腫瘍の間に存在する多くの関連性だ。例えば、肝臓がんと肝嚢胞はいずれも肝臓で発生するが、見た目の特徴や良性・悪性の違いがある。一方、肝臓がんとすい臓がんは形態が似ているが、発生する臓器は異なる。
さまざまながんの違いや相似性についてモデリングするため、達磨院医療AIチームは深層学習モデルTransformerを使った腫瘍の表示の学習方法を編み出した。腫瘍をTransformerのクエリとして表示し、異なる臓器の腫瘍とそのタイプに関してセマンティックレイヤーを構築するというものだ。これによりモデルの学習効率や、腫瘍とそのタイプの予測精度が向上し、セグメンテーション、検出、診断の予測が同時に行えるようになり、複数のがんの識別が可能になる。
631人の患者に行ったテストでは腫瘍の検出、セグメンテーション、診断の性能は8つの臓器の単独モデルを組み合わせた場合を上回っており、検出の平均感度は93%、平均特異度は82%に達した。
阿里達磨院医療AIチームの責任者でIEEE(米国電気電子学会)フェローの呂楽氏は、統一モデルによって初めて「致死率の高い8種類のがんを1回で診断する」ことが可能になり、複雑なAIモデルを簡略化しながらも高い感度を維持できているとする。呂氏は「放射線科の医師にAIを活用した画像診断サポートを提供するもので、特にがんの再発や転移などで大きな効果を発揮するだろう」と話す。
このモデルに関する論文はコンピュータビジョン分野の世界最高峰の国際会議ICCV 2023で採択され、現在すでに上海市第一人民病院など複数の病院で試験が進められている。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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