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生物の網膜を模倣したビジョンセンサーを手がける「動微視覚(DVSense)」がエンジェルラウンドで、数千万元(数億~十数億円)を調達した。辰韜資本(Cherish Capital)と一村淞霊貝葉斯が出資を主導。動微視覚はこれ以前にも、シードラウンドで奇績創壇(MiraclePlus)から数百万元(数千万~1億数千万円)を調達していた。
動微視覚は2023年5月、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)神経情報科学研究所(Institute of Neuroinformatics)の出身者によって設立された。ETHはイベントカメラと脳型コンピューターの分野で世界的に評価されており、同社が使っているダイナミックビジョンセンサー(DVS)は、創業者・劉敏氏がETHの博士課程時に指導教官を務めたトビ・デルブルック教授が発明した。
従来のCCDセンサーやCMOSセンサーとは異なり、イベントベースのダイナミックビジョンセンサーは「フレーム」の概念が無く、「ストリーム」のような形でターゲットを表現し、時間分解能は最高1マイクロ秒、消費電力は10ミリワット未満だ。一方、従来のセンサーは時間分解能が30マイクロ秒で、消費電力が100ミリワットを超える。
ダイナミックビジョンセンサーは自動運転、スマート物流、人型ロボット、SLAM(自己位置推定と環境地図作成)、マシンビジョン、スマートシティなど1兆元(約20兆円)を超える市場の可能性をさらに広げる見込みがあり、通信機器のファーウェイ(華為技術)、ITのバイドゥ(百度)、スマホのシャオミ(小米)、OPPOのほか、自動車メーカーが注目している。
フレーム単位で画像を出力するカメラとは異なり、イベントカメラはやや原始的なデータ情報のみを出力してターゲットの輪郭をとらえるものだが、輪郭情報を関連付ける独立したデータベースが少ない。また、適切なチップとアルゴリズムが不足していることも、ダイナミックビジョンセンサーの大規模な活用を難しくしている。
動微視覚の「EPPスマートカメラ」はダイナミックビジョンセンサー用に設計された世界初のスマートハードウエアで、独自開発のイベントストリーム処理アルゴリズムを採用し、高輝度、低輝度、明るさが急激に変わる場面で解像度、インタフェース、視野角、重さ、大きさ、消費電力などの指標に応じて、ハイスピード外観検査やOCR(光学的文字認識)などオーダーメイドのソリューションを提供できる。従来のハイスピードカメラでは、10ギガビットイーサネットのような高速伝送インタフェースによってデータを伝送する必要があったが、同社製品は全体のデータ量を大きく減らせるのが特長だ。劉氏によると、通信速度が同じ環境下で、データ量を10%まで減らせるという。
劉氏によると、既存の活用シーンではメーカー各社によるダイナミックビジョンセンサーの出荷量がそれほど多くないという。自動運転技術は開発サイクルが長くコストも高いことを踏まえ、動微視覚は現段階で市場に比較的早く参入できそうな品質検査に目を向けた。大華技術(Dahua Technology)など業界のベンチマーク企業に比べ、動微視覚の製品はスピードやダイナミックレンジなどの性能に優位性がある。
テック産業関連サービスを手がける甲子光年(Jazzyear)のデータによると、2023年の中国のマシンビジョン市場規模は278億元(約5600億円)に上る見込みだ。マシンビジョンが製造業のインテリジェント化を加速すれば、市場の成長率は年平均25%に達し、その規模は100億元(約2000億円)ずつ拡大する可能性がある。
劉氏によると、動微視覚は第2世代EPPスマートカメラの開発を進めている。第2世代は新しいタイプのトリガーを採用し、第1世代に比べて低遅延で解像度の高い画像が撮れるようになる見通しだ。
*2023年12月14日のレート(1元=約20円)で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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