世界で需要高まる「軌道上サービス」、中国新興企業も参入 宇宙ゴミ除去や人工衛星の運用に注力

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宇宙の軌道上サービスを展開する中国スタートアップ企業「三垣航天(Sanyuan Aerospace)」が、太倉港泓潤資本の主導するプレシリーズAで数千万元(数億~十数億円)を調達した。資金は試験衛星の製造に充てられるという。

軌道上サービス(OSAM)は、軌道上にある人工衛星などの宇宙機にさまざまなサービスを提供する新しいビジネスで、保守、寿命延長、燃料補給、拡張ミッション、組立、製造、運用を終えた宇宙機の軌道離脱、軌道修正、衛星コンステレーションの構築、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去などが含まれる。

三垣航天は、宇宙機の運用サービスを手がける「航天馭星(Emposat)」の子会社として2022年6月に設立された。宇宙空間での作業に焦点を当てており、中国及び世界のクライアント向けに軌道上で宇宙ゴミの除去、宇宙機の推進剤補給、宇宙機の保守および製造などのサービスを提供している。世界トップクラスの軌道上サービス企業を目指しており、世界の衛星市場にコストパフォーマンスと信頼性の高いサービスを提供することで、衛星の航続をサポートしようとしている。

需要高まる軌道上サービス

宇宙空間を漂う宇宙ゴミの量は近年急増しており、10センチを超えて監視対象となっているものは3万個余り、ミリメートル級の破片は1億3000万個に上るという。

低軌道衛星通信産業の爆発的成長に伴って、「Starlink(スターリンク)」のようなサービスが出現し、衛星の打ち上げ頻度が高まってきた。しかし、寿命を迎えた大量の衛星は宇宙ゴミとなり、衝突すれば破片が発生する。これは宇宙の安全にとって大きな脅威だ。2021年12月にはスターリンクの衛星が2度にわたって中国の宇宙ステーションに接近する危険な場面があった。これに対して宇宙ステーション側は、予防的衝突回避制御を2回作動させている。

宇宙ゴミを積極的に取り除くことは、宇宙の持続可能性を確保するための必然的かつ唯一の方法だと考えられる。

三垣航天は宇宙状況認識、目標計測、ランデブーを通じて宇宙ゴミの監視、捕獲、早期警戒などを手がける。すでに軌道上サービス用の小型試験衛星と関連作業に必要なペイロードの設計や製造、製品の地上試験と検証をおおむね完了。今年末には宇宙ゴミの除去機能を備えた試験衛星の打ち上げを予定している。

次のステップでは、軌道上での燃料補給、保守、拡張ミッションなどの技術と設備を開発し、軌道上の宇宙ゴミ除去と運用の包括的なサービスを展開する計画だ。

三垣航天が開発した宇宙ゴミ捕獲メカニズムのシミュレーション

急成長する世界市場

世界の同業他社では、日本の「アストロスケール」が2013年の設立以降、7度にわたって累計3億7600万ドル(約550億円)を調達した。18年に設立されたスイスの「ClearSpace」は20年に欧州宇宙機関(ESA)と8600万ユーロ(約140億円)に上る契約を締結し、26年までにターゲットとする宇宙ゴミの除去を計画している。

世界の軌道上サービス市場は急成長している。米上院は2023年10月に軌道維持法(ORBITS Act)を可決し、24~28年にスペースデブリ除去デモプロジェクトへ1億5000万ドル(約220億円)を投じることにした。

米調査会社NSRは2022年2月に発表した世界軌道上サービス市場レポートで、同市場の規模が向こう10年間で100億ドル(約1兆4700億円)を超え、143億ドル(約2兆1000億円)に上ると予想。うち寿命延長市場が最大規模の47億ドル(約6900億円)となり、宇宙ゴミ除去市場は年平均成長率が最高38%に達すると見込んでいる。

*2024年3月13日のレート(1元=約20円、1ドル=147円、1ユーロ=161円)で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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