クアルコムに挑む中国「Siengine」、年内に「7ナノ」車載チップ100万枚出荷へ

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高性能の車載チップの研究開発に取り組む中国の「芯擎科技(Siengine)」がこのほど、シリーズBで数億元(数十億円超)を調達した。中国国有企業構造調整基金二期が出資を主導し、基石資本(Costone Capital)などが参加した。調達した資金は、7nmプロセスのスマートコックピット用チップ「龍鷹1号」の量産と供給の強化に充てるほか、龍鷹1号をベースにしたスマートコックピットや自動駐車機能のプロモーション、先進運転支援システム用チップ「AD1000」のテスト検証と市場投入の推進に用いるという。

芯擎科技は2018年に設立された。創業者でCEOの汪凱博士は、過去に華芯通半導体(HXT)や米国のSanDisk、Freescale(2015年にオランダNXP Semiconductorsが買収・合併)、Broadcom、スイスのSTMicroelectronicsなどに在籍し、通信やマイクロコントローラー、自動車、IoT、コンピューター、サーバーなどの分野で30年以上のキャリアを積んできた。

車載チップ業界は参入ハードルや技術水準が高く、新たに参入する新興企業には巨額の初期投資や事業立ち上げに関わるさまざまな問題が壁となって立ちはだかる。こうした状況のなか、芯擎科技は中国自動車大手・吉利汽車(Geely)などの株主や産業投資機関のバックアップを受けて着実に歩を進め、同業他社より早期に量産を実現するチャンスをつかんだ。

吉利汽車傘下「Siengine」、200億円の資金調達。スマートコックピット用7nmチップの量産へ 

芯擎科技が2023年3月に量産を発表した7nmプロセスの車載チップ龍鷹1号は、8コアCPUと14コアGPU、さらに8TOPSのAI処理性能を備えたニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)を搭載し、最大7画面への同時出力や12チャンネルのビデオ信号入力に対応している。自動車のデジタルメーターやヘッドアップディスプレイ(HUD)、4Kディスプレイ、ドライバーモニタリングシステム、360度モニターなどの機能を支え、スマートコックピットの使用感を大きく向上させる。

スマートコックピット用チップ市場では米半導体大手クアルコムが主導的な地位を占めているが、芯擎科技の龍鷹1号は柔軟性に富む国産ソリューションとして勢力を伸ばしている。龍鷹1号は2023年9月に吉利傘下の高級車ブランド領克(Lynk&Co)の「領克08」に初めて搭載され、それ以降も多くの車種に導入されてきた。23年末までに同チップの出荷量は20万枚を突破した。

吉利系列だけでなく、さまざまなメーカーとの幅広い提携も進んでいる。現時点で主要な自動車メーカーの20車種以上で指定サプライヤーとなっており、年内にもチップ出荷量が100万枚に達する見込みだという。サプライチェーンのリスク管理を考えてチップを1種類に絞るのは避けたい自動車メーカーにとって、芯擎科技は優れた選択肢になっていると、汪CEOは語る。

スマートコックピットがさまざまな価格帯の車種に広がるなか、芯擎科技は龍鷹1号をベースにしたシングルチップの総合ソリューションも打ち出した。これにはスマートコックピットの機能のほかに、基本的な運転支援システムや自動駐車機能も統合されている。

芯擎科技はさまざまなメーカー提携している

汪CEOによると、業界では運転支援システムとスマートコックピットそれぞれにチップ1枚を必要とするデュアルチップ構成が一般的だが、龍鷹1号ならシングルチップで全ての機能を実現できるため、自動車メーカーは数百元(数千~1万数千円)程度、多ければ1000元(約2万円)以上のコスト削減が可能になるという。

さらに、先進運転支援システム用チップのリリースに向けた準備も進んでいる。近々発売が予定されているAD1000は、米NVIDIAの「Orin」をベンチマークにしており、7nmプロセスを採用。CPUの処理能力は250KDMIPS(毎秒2500億命令)以上、NPUの処理能力は256TOPSに達し、4つのチップを協働させることで最高1024TOPSを実現する。

AD1000は大規模言語モデルやTransformerなどのアーキテクチャを想定して最適化されており、最先端のアルゴリズムにも対応できるという。今年10~12月期にテスト用として顧客に納品する予定で、現在はテープアウト(設計完了)に向けた最終的な調整に入っているという。

*2024年4月10日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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