中国資本の海外投資概況とその落とし穴、「現地化を徹底すべき」

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先日、36Kr主催「2019年中国投資家未来サミット」が開催された。海外投資は36Krがかねてより注目してきたテーマだ。本サミットでは「復星鋭正資本(Fosun RZ Capital、以下復星)」の劉思斉Co-CEO(共同経営責任者)が中国資本の海外投資概況、海外投資ベンチャーの落とし穴と防衛策などをテーマにスピーチを行った。以下はそのスピーチのダイジェスト。

中国資本の海外投資概況

全体的に見て、中国資本の海外投資はかなり活発だ。今回は主にインド、東南アジア、イスラエルの3市場に焦点を当ててみよう。

■ インド市場

2017年、中国資本がインド市場で投資した金額は28億ドル(約3000億円)に及ぶが、資金のうち97%がEC最大手「フリップカート(Flipkart)」、配車サービス「オラ(Ola)」、モバイル決済最大手「ペイティーエム(PayTM)」のユニコーン企業3社につぎ込まれた。

2018年には中国の対印投資金額は17.5%減少したが、投資企業数は倍増し、投資分野の範囲も広がり、資金の半数以上が中小プロジェクトに流れた。

インドで比較的活発な中国の投資機関はアリババ、復星、テンセント、「順為資本(Shunwei Capital)」の4社で、各機関とも同国ですでに10社以上に投資しており、代表的な成功例がある。例えば復星が医薬品分野で投資した「Gland Pharma」はインドで初めて米食品医薬品局(FDA)に認可された製薬企業だ。

インドで資金調達を実現した企業や業界、評価額の角度から分析すると、大部分はモバイル決済、EC、オンライン配車サービス、フードデリバリー、物流など中国ですでにユニコーン企業、スーパーユニコーン企業が出現している業界だ。

■ 東南アジア市場

2017年、東南アジアで行われたベンチャー投資は524件以上で、総金額は150億ドル(約1兆6200億円)に上った。中国資本の全体的な参加率は12%に達しており、テクノロジー分野だけを見た場合、中国資本の参加率は47%だ。2017年の東南アジアでのベンチャー投資における代表的な対象企業は、シンガポールの配車大手「Grab」やインドネシアのライドシェア「Go-jek」などだが、これらの「大ヒット」企業の出資者には必ず中国の投資家や投資機関が名前を連ねている。

以前は、東南アジアの投資プロジェクトはイノベーション分野に集中していたが、研究機関によると、今後5年以内にはテクノロジーイノベーションのプロジェクトが一段と増えて全体の20~40%を占めるようになるとのことだ。同時に、テクノロジーイノベーションの分野でこれから注目を浴びるのはフィンテックだ。

東南アジアのテクノロジーイノベーション投資の分野を細かく見ていくと、フィンテックがすでに全体の5分の1を占めている。今後この割合はさらに高くなるだろう。このほか、ブロックチェーン関連のプロジェクトも割合が高く、全体の約4分の1を占めている。AI関連のプロジェクトは過去数年よりも割合が低くなり、わずか3%だ。しかし我々はこの割合が今後顕著に高まると信じている。

出資者という角度からみると、東南アジアにおいてはインターネット大手のアリババやテンセントなどがかなり活発に投資を行っている。

■ イスラエル市場

3つ目はイスラエル市場だ。市場全体の規模は小さく、リソースにも限りがあるため、イスラエルにおける投資の半数以上に海外資本が参加している。最も活発な投資家及び投資機関は米、英、中からであり、中国は第3位だ。

中国資本は過去20年間にイスラエルで138件のプロジェクトに投資しており、そのうちM&Aが17件を占める。

イスラエルで投資される分野は基本的にITやAI、ネットワーク・セキュリティーなどのハード&コアテクノロジーで、これらはイスラエルの全体的なテクノロジー環境と密接な関係にある。

海外におけるベンチャー投資の「落とし穴」と防衛策

最後に海外進出の際に考慮しなければいけない「落とし穴」についてまとめてみよう。海外投資はタイムマシンに乗るのと似ている。もし10年から20年前の中国にタイムスリップできたら、アリババやテンセント、「拼多多(Pinduoduo)」を見逃すだろうか?

しかし残念なことに、市場ごとに特殊性があり、特有の「落とし穴」がある。中国や米国のケースを直接当てはめるだけでは通用しない。例えば中国や米国では広告はインターネットマネタイズの主要なチャネルだが、インド市場ではインターネット広告全体のCVR(転換率)と市場価値は非常に低い。

二つ目の落とし穴は、大まかな傾向を予測するのは簡単だが、具体的な時間を把握するのは非常に難しいという事だ。投資が早すぎれば大損するかもしれないし、遅すぎれば評価額が高すぎて割りに合わなくなる。

三つ目はふさわしい人材とチームをいかに選択するかだ。現地のベンチャー起業家のグループに入り込むのは人材発掘の主要な方法だ。名門校の卒業生グループや大企業を辞職した社員のグループなども含む。しかし投資家にもし目利きする力がなければ、選択したプロジェクトチームが玉石混交となることは避けられない。

これらの落とし穴には対策がある。

まず一つ目は「出張型」の投資は避けることだ。投資したい地域を決めたら必ず長期的に現地に根を下ろし、現地特有の文化や習慣を理解する必要がある。そうしてこそ現地の特色を適切に把握できるのだ。

二つ目は転換期がいつ来るかを予測し判断すること。この時に主な判断材料となるのは他地域の市場での深い調査経験だ。目標市場のサンプルに対するインタビューや、市場データの調査研究及びモニタリングがこれにあたる。

最後に、極めて重要なのは、グローバル化を心がけると同時に必ず現地化も続ける必要があるということだ。現地で生活・成長し、かつグローバルな視野を持つチームを養成する必要がある。
(翻訳・山口幸子)

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