農機を電動化・スマート化、運用コスト最大7割減 中国・知申禾行

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電動トラクターを手掛ける中国スタートアップ企業「深圳知申禾行」がこのほど、エンジェルラウンドで険峰長青(K2VC)と昆仲資本(Kinzon Capital)から数千万元(数億円超)を調達した。資金は製品開発や人材獲得、市場開拓に用いられる。

知申禾行は2023年に設立され、電動の農業機械の開発に注力している。同社の電動農機ブランド「知禾(Cybertractor)」が打ち出すスマート制御の電動トラクターは、オプションとして無人作業が可能な自動運転システムを搭載することもでき、すでに多くの顧客が契約の意向を示しているという。

世界中でカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進むなか、農業機械の分野でも電動化への動きが始まっている。調査会社Acumen Research and Consultingによると、世界の農業機械の市場規模は2022年に2000億ドル(約30兆円)となり、32年には4857億ドル(約74兆円)に成長すると見込まれている。なかでも、自動運転機能を備えた電動トラクターは業界の注目分野になると期待される。

知申禾行の創業者・陳擁軍氏は次のように語る。「エネルギー密度の高い車載バッテリーが低コストで生産されるようになり、その活用分野が乗用車やトラックといった一般車両から、農業機械などのオフロード車両にも広がってきた。2022年から次第に農業機械の電動化が進み、農業の経営コストや人件費が大幅に削減された」

同社の電動トラクターは従来製品に比べてスマート制御のレベルが高く、複数のセンサーや制御システムを搭載し、自動運転やスマート認識、正確な位置決めなどの機能を実現している。また、生産ニーズや作業環境に応じてさまざまなツールを自由に付け替えられるモジュール化設計を採用し、生産効率の向上を効果的にサポートする。

さらに自律的学習機能や自律運転システム、リモートメンテナンス機能、エネルギーマネジメントシステムなどを備えるほか、騒音や振動を抑え、人間工学に基づいた設計を施すなど、乗り心地や運用環境にも配慮した作りになっている。

トラクターを燃料式から電動式に切り替えることで、総合的な運用コストを50~70%削減でき、数千元(数万円超)のメンテナンス費用も省くことができるという。自動運転機能があれば、人件費の削減や運転手の負担軽減にもつながる。「農業従事者がもっと楽に稼げるよう、高品質のハイテク製品を開発することに力を注いでいる」と陳氏は語る。

農業機械に求められる主要な技術は電気自動車(EV)と似ているが、農業機械特有の技術的ハードルもある。乗用車やトラックなどは一般道路や高速道路の走行がメインだが、農業機械は基本的な走行性能を備えたうえで、さまざまな土壌のタイプ、作物、作業プロセスなどに対応しなければならない。農業機械に対するノウハウや技術力だけでなく、地域によって異なる作物や農法などにも精通していることが不可欠だ。

農作業に使われる知申禾行の電動トラクター (画像は企業提供)

陳氏は、ドイツの世界的農機メーカーFENDTでシニアテクニカルマネジャーとして勤務した経験があり、帰国後は複数の農機大手で幹部を歴任した。知申禾行の開発・運営チームには中国やドイツ、日本など国内外の有名機械メーカー出身者が在籍しており、海外の駆動技術や電子制御技術の専門家からリモートで技術サポートを受けながら製品開発、製造、運営をグローバルに進めている。

今後1~2年の間にチーム拡充と製品ライン拡大を図り、中国さらには世界中の農業機械の電動化とスマート化を後押ししていく方針だという。

*1ドル=約152円、1元=約21円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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