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紡績ロボットなどの開発を手がける中国メーカー「微埃智能(AIATOR Intelligent Technology)」がこのほど、シリーズA+で数千万元(数億~十数億円)を調達した。出資は神騏資本と東方富海(Oriental Fortune Capital)が主導し、香港科技大学(HKUST)の高秉強名誉教授のほか、如皋市科創投資、Virtu International、個人投資家も参加。資金は、捲糸ロボットのマーケティングや小規模な試験加工拠点の建設、海外事業の開拓に充てられる。
中国の紡績業界では高齢化によって労働力が不足しており、工場の作業環境が悪いため若者が集まらず、メーカーが負担する人件費も上がっている。ある紡績機械の操作担当者は、食事や家賃、労災手当込みで月給8000元(約16万8000円)だという。
採用コストや人件費の高さは、中国の紡績業が今後も発展していくために解決すべき課題となっている。
課題解決に向けて、微埃智能は人工知能(AI)を使った検知システムや流体力学、組み込みエッジコンピューティングを組み合わせた「自動捲糸ロボット」を独自に開発し、人件費の削減と人手不足の解消を後押ししている。同社の捲糸ロボットの投資回収サイクルは平均1年半で、工場のコストを70%削減できるという。また、最も手間のかかる糸端を見つける作業を同ロボットは1.5秒でこなし、その精度が98%に達するほか、不正な糸も正確に検出する。
同社はこれまでに業界大手の40社を顧客としており、海外事業の開拓も進めている。
大部分が地方で展開されている中国の紡績業では、従業員の高齢化が進み、新しいものに対する受容度も限られることから、AIの技術や製品が浸透しづらい状況にある。
微埃智能も当初はこうした現状を理解しておらず、製品にロボットハンドや自動巡回検査などの最先端技術を盛り込んだ。一見「ハイテク」で「多機能」に見える製品も実際の現場に導入してみると、効率の低さやコストの高さ、メンテナンスの複雑さという課題にぶつかり、大手工場が求めるニーズに対応できないことが分かった。
捲糸ロボットは、台車に乗って固定されたレールの上を巡回しながら、マシンビジョンを利用して材料投入や糸端検出を進める。そのためには台車やロボットアーム、自動センサー、検知アルゴリズムを制御しなければならないが、これら4つのコントローラーが同時に通信すると遅延が発生し、動作の安定性と効率に影響が及ぶ。また、複数のコントローラーを組み合わせるには演算力を高める必要があり、コストもかかる。
この問題に対して同社はGNC(誘導航法制御)モジュールを開発し、4つのコントローラーを1つにまとめた。SSKD(半教師あり知識蒸留)アーキテクチャを採用して、推論時間の短縮と演算量の削減を図り、コントローラーのコストを60%ほど減らすことに成功、装置全体にかかるコストを大きく引き下げた。
創業者の趙紫州氏は、紡績から製糸、織布、染色を手がける繊維工場を自ら経営している。創業チームはこれを試験場として、研究開発と生産を連動させながら、発生した問題をその都度修正しているという。
チームは研究開発担当が過半数を占める。趙氏は米カリフォルニア大学バークレー校を卒業、中国の「国家級重点人材プロジェクト」対象者に選ばれ、AI技術の研究開発に13年携わってきた。共同創業者の秦詩瑋氏は、香港城市大学(CityU)で電子通信の修士号を取得し、ドローン世界最大手・大疆創新(DJI)の無線エンジニアを務めていた。
趙氏は、従来型産業へのAI導入について「当社が目指しているのは、テクノロジーを使って従来型の産業を活性化することだが、過剰なスマート化は工場の負担にもなる。真の課題を見つけ出すことが必要で、そうすれば製品は最大限に活用される」との見解を示した。
*1元=約21円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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