ARグラス「XREAL」、自社チップ初搭載の新商品発表 「最大シェアの日本市場」に期待

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AR(拡張現実)グラスを手がける中国のスタートアップ企業「XREAL (エックスリアル)」は自社開発の半導体チップ「X1」を搭載した新商品の「XREAL One」を11日から予約を開始した。来年1月中旬から販売を開始する。同社の徐馳CEOが発売に先立ちインタビューに応じ「これまでで一番大きなブレークスルーだ」と強調した。X1の搭載で投影画像の遅延を大幅に削減することに成功したという。日本での価格は6万9980円に設定した。

独自チップの威力

XREALのARグラスはサングラスのような見た目だが、レンズの前に映像を投影するディスプレイが内蔵されており、接続したパソコンやスマートフォン、ゲーム機などの画面が目の前の空間に浮き上がるように見える仕組みとなっている。4メートル先に147センチ、10メートル先に367インチ相当の巨大スクリーンが目の前に投影されるため、場所を問わずに没入感のあるビジュアル体験を楽しめるという。

新商品のXREAL Oneは初めて、自社開発のチップを搭載したことで、従来商品の10分の1程度の3ミリ秒(1000分の1秒)にできたという。米アップルの「Visin Pro(ビジョン・プロ)」に搭載した「R1」チップの12ミリ秒よりも投影映像の遅延が出にくいと説明している。3軸自由度(3DoF)の動きの検出が可能になっており、空間上に投影した映像を固定し、頭部のぶれなどの動きを補正できる。また米音響機器メーカーのBOSE(ボーズ)と共同開発したスピーカーを搭載し、音声面でも体験の向上を実現した。

XREALが自社開発した半導体チップ「X1」

徐CEOは米国留学を経て、米半導体大手エヌビディアに入社し半導体についての深い知見に自信を示した。X1の製造は台湾積体電路製造(TSMC)が手がけ、回路線幅は12ナノメートル。トランプ次期米大統領が就任しても「ARグラスには、3ナノメートルなど最先端の半導体は必要ない」と述べ、現状では大きな問題は起きないとの見方を示唆した。

最大シェアの日本市場

日本市場は「米中に次ぐ3番目の市場で、売上高の2割を稼ぐ重要市場だ」とXREALは明らかにした。米調査会社のIDCによると、ER(Extended Reality)市場の合計で、XREALの日本市場でのシェアは2023年が71%で、2024年1~6月期もほぼ同じでダントツの1位を獲得。世界シェアは2023年が45%、24年1~6月期は44%で、スタートアップ企業でありながら影響力を誇っている。

徐CEOは日本市場の消費者について「『ハードコア』な人が多く、よりよい商品を選ぶ」と述べ、オフィスでの仕事やゲームなどに活用する人が多いと指摘した。今後は「企業向けビジネスでも可能性がある」と述べ、観光やエンターテインメントなどの分野における新たな活用に期待感を示した。

「日本にはほとんどAR企業はない。シェアの多い日本で、ARと言えばXREALと言われる企業になりたい」(徐CEO)。

供給網にソニーなど日本企業

XREALは日本を市場としてだけではなく、サプライチェーン(供給網)としても重視している。

ソニーからはディスプレイに使う小型の有機ELパネルの供給を受ける。今回も従来の製品より広い視野角を実現した。徐CEOは「ソニーとは深い関係を築いて、製品についてフィードバックしており、定期的な意見交換の場も設けている」と述べた。 

ゲーム機との連携に可能性を見いだしているため、日本のゲーム会社との提携を模索しながら、既存パートナー企業のKDDI(au)との協力も続けてきたという。また、空間コンピューティング技術を手がける「Mezon(メザン)」や「STYLY(スタイリー)」などとも協業を進めている。

XREALの徐CEO

アップル、メタの市場開拓に期待

似たような端末を巡っては、アップルが今年6月に日本で「Visin Pro」を発売したが、その後に生産の停止や、廉価版の発売などの動きが報じられている。米IT大手メタも低価格モデルの新機種「「Meta Quest 3S」を10月から売り出しているほか、 XREALの競合となることが想定される新しいARグラス「Orion」も発表している。徐CEOは「資本力を持つ大手企業の影響力は大きく、市場を作り出してくれる」と参入を歓迎した。

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「市場の育成が大事だ」とも指摘する。実際に日本で、ARグラスなどを利用している人に出会う機会はまだ少ない。こうしたIT大手が巨大な資本を投入し、認知を高める効果に期待するだろう。

「グラスはスマホに代わるものだ」とし、徐CEOはグラスを活用して3Dで見る時代が必ず来ると強調した。「アップルのスティーブ・ジョブズも、米テスラのイーロン・マスクCEOもマイノリティだったがマジョリティになった。未来に確立される技術は、自分自身で想像を膨らませながら突っ走っていくしかないのではないか」と決意を込めた。

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(36Kr Japan編集部)

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