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米アップルが2024年2月2日に空間コンピュータ「Apple Vison Pro」を発売した時、広東省深圳市にある中国最大級の電子街でコピー品の聖地として知られる「華強北」のメーカーはざわついた。
Apple Vison Proの発売前から、「億境虚擬(EmdoorVR)」という深圳の企業がそれによく似た仮想現実(VR)グラス「AX162」を、価格1000元(約2万1000円)余りで発表していたからだ。しかも、1月9日に開催された米テクノロジー見本市CES2024などの展示会にも出展しており、大きく注目されることになった。
では、この華強北版Vision Proはどのような製品なのか。Apple Vision Proに対し、どのようなポジショニングを目指しているのか。
億境虚擬の石慶CEOは取材に対し、自社の製品が「華強北版Vision Pro」や「海賊版Vision Pro」と言われることを意に介さず、逆にこうした呼び名で注目を集め、より多くの顧客を呼び込めるとの考えを示した。一方、Apple Vision Proの機能を模倣するのは、非常に難しいとも指摘している。
華強北版Vision Proの位置づけ
2015年に設立された億境虚擬は、低価格のタブレットやパソコンなどの家電製品を販売してきた。
Apple Vision Proの発表を受け、石氏は自社の技術力を駆使してAX162を開発し、シンプルで使いやすいグラス型デバイスと位置づけた。Apple Vision Proが料理のフルコースだとすれば、自社製品はそれに含まれる前菜だと説明している。
価格が2000元(約4万2000円)に満たないAX162は、コストバランスを取るために中核部品の取捨選択を迫られた。
Apple Vision Proはソニー製の1.42インチ・マイクロOLEDパネルを採用し、2300万画素以上で8K映像を楽しめる。また、カメラ12個、センサー5個、マイク6個が搭載されている。ディスプレイからチップ、センサー類に至るまで、究極とも言えるスペックを実現した。
対するAX162は、クアルコムのCPU「SXR1130」とGPU「Adreno 615」を採用し、800万画素のカメラを2つ搭載。ディスプレイはフレネルレンズを採用し、解像度が3664×1920、視野(FOV)が98度に上る。ソフトウエアはAndroidアーキテクチャをベースに「Vision SE」システムを構築した。複数のユーザーレビューによると、AX162は3DoFのみに対応するエントリーモデルのMRデバイスだ。
実際に使用すると、AX162の機能は少数の基本的なものにとどまっていることが分かる。この製品は大きなディスプレイでコンテンツを表示することに重きを置いており、簡単な動画再生や画像閲覧の機能があるものの、空間での動画再生には対応していない。今年のCESで紹介されたAX162のビデオシースルー(VST)機能も、画面表示は粗く、ぶれも生じた。
また、アップル製品にはハンドトラッキングがあるが、AX162は主にボタンとコントローラーで操作する。AX162はジェスチャートラッキングに対応可能とされているが、実際にはジェスチャートラッキングは使えないというレビューが多い。
AX162の前面は、MetaのVRヘッドセット「Quest 3」の一部とApple Vision Proを合わせたような見た目だ。これだけ形が似ていると盗作になるのではないか、との問いに対して石CEOは、正面から見るとApple Vision Proと似ているが、同じではないと説明する。特許専門の弁護士に確認済みで、自社でも特許を有しており、文書による裏付けもあるという。
同社は製品を1000~2000元(約2万1000~4万2000円)の価格帯に抑えてスペックを下げつつ、Apple Vision Proが持つ主要機能の一部を持たせて、より多くのユーザーにアップルが示す未来を感じてもらいたいと考えている。AX162は中国の一~二線都市ではなく、三~四線都市と海外市場の一部をターゲットにしているという。
作者:智東西(WeChat公式ID:zhidxcom)
*2024年2月29日のレート(1元=約21円)で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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